基幹システムの統合とは、企業において基幹とされるシステムを統合することであり、業務効率化やデータベースの一元管理などが可能です。本記事では、基幹システム統合がもたらすメリットやデメリット、統合する際に検討するべきポイントなどを解説します。
基幹システムの統合とは
基幹システムの統合とは企業が運用、管理している複数の基幹的なシステムをひとつのシステムとして統合させることです。
一般的に基幹システムには、生産管理システムや販売管理システム、購買管理システム、人事管理システム、勤怠管理システムなどが存在します。これらの基幹システムは、業務の自動化や効率化を図るために導入されているのです。
最近は、これらの基幹システムを一つに統合させる企業も増えています。基幹システムを統合させて一つのパッケージにしたものは、「ERP(Enterprise Resource Planning)」と呼ばれることもあるため、覚えておくと良いでしょう。
基幹システムを統合すると、システム同士の情報共有や連携ができるようになります。
中小企業では基幹システムがまだ導入されていない場合もありますが、企業を成長させていくためには欠かせない投資になることを把握しておきましょう。基幹システムの目的や種類に関する詳細は、以下の記事も参考にしてください。
基幹システムの統合による3つのメリット
複数の基幹システムを統合するメリットは、主に3つあります。
- あらゆる情報を一元管理できる
- 業務や情報共有が効率化できる
- メンテナンスやアップデートが容易になる
業務効率化などのメリットは売上を増加させることにつながり、企業を成長させる上で欠かせません。基幹システム統合による具体的なメリットについて、ぜひ理解しておきましょう。
1.あらゆる情報を一元管理できる
基幹システムを統合することで、企業が保有するあらゆる情報の一元管理が可能になります。商品の販売数や在庫、生産状況などの経営状況を経営者本人がリアルタイムに確認できるようになるため、迅速な経営の意思決定に役立つでしょう。
流行や変化の激しい世の中に合わせた経営をするためには、このようなメリットが欠かせないのです。
2.業務や情報共有が効率化できる
従来の基幹システムでは、システムごとにデータを2重入力しなければならないケースがあり、業務において非効率な作業が必要な場合もありました。このような問題は、基幹システムを統合することによって解消でき、業務や情報の共有が効率化できるのです。
ほかにも何か気になる情報を調べたり、分析したりする場合、統合されたシステムのみを確認するだけで良くなります。求めているデータをシステムごとに確認する手間や時間が不要になるのです。
3.メンテナンスやアップデートが容易になる
基幹システムを統合すると、管理するシステム自体が一つにまとめられてメンテナンス性が向上します。それによってシステムのメンテナンスやアップデート作業が従来よりも容易になるのです。
今後ほかのシステムに移行する際や、大幅な改良を加えるメンテナンスを実施する場合、従来よりも必要な人員や作業時間を減らせるでしょう。
基幹システムの統合による3つのデメリット
基幹システムの統合には、デメリットも存在します。主なデメリットは以下の3つです。
- システム統合に費用が発生する
- トラブル発生時の被害が大きくなる可能性がある
- セキュリティ対策がより重要になる
基幹システムを統合するかどうかを検討している場合には、このようなデメリットも把握した上で決断しましょう。ただし、リスクを最小限に抑えることもできるため、前向きに考えてみてください。
1.システム統合に費用が発生する
基幹システムの統合を社内の従業員のみで実施できる場合は良いですが、外部に依頼しなければならない企業も多いでしょう。外部に依頼するとなると、システム統合の外注費などが発生します。
資金繰りの厳しい企業は、すぐにシステム統合の外注をすることが難しいかもしれません。まずはシステム開発の専門や基幹システムの開発などに強い会社に、見積もりをしてもらいましょう。
2.トラブル発生時の被害が大きくなる可能性がある
システムを統合することにより、トラブル発生時の被害が集中しやすいというデメリットがあります。システムを統合していない場合は、トラブルが発生したとしても、被害が一部のシステムだけで済む可能性があるのです。
システムを統合したのちに大きなトラブルが発生すると、業務への影響も大きくなるリスクがあることを理解しておきましょう。
3.セキュリティ対策がより重要になる
システム統合によってあらゆる情報を一元管理できるのは便利な一方で、もしも不正アクセスなどの被害を被ると、全てのデータが流出してしまう可能性があります。
このような被害を未然に防ぐためには、従来よりも高度かつ強固なセキュリティ対策を講じる必要があるのです。したがって、セキュリティ対策費用などが増加しやすいことに注意しましょう。
セキュリティ対策を講じる際は、脆弱性のある箇所を優先的に対策するための診断を実施してください。脆弱性診断の詳しい内容は、以下の記事にまとめています。
基幹システムを統合する際に検討すべき3つのポイント
基幹システムを統合する際に検討すべきポイントが3つあります。
- システムの要件定義は、社内設備や環境を考慮して行う
- 既存システムの一部を利用してシステムを統合させる
- システムをクラウド運用するかを検討する
社内に初めて基幹システムを導入した当時と現在では、事業の規模や市場などが異なる場合があります。システムの統合によるメリットを十分に活かせるように、上記3つのポイントをおさえ、現状に適したシステムの統合や再構築をしていきましょう。
1.システムの要件定義は、社内設備や環境を考慮して行う
システム統合後に運用する環境と、過去の基幹システム構築時の環境が異なる可能性があります。そのため、社内設備などの環境を改めて考慮した上で、システムの要件定義を行いましょう。
基幹システムを統合するといっても、システムの不便な部分や不要な機能までも統合させる必要はありません。無駄な機能などを省き、本当に必要な機能のみで再構築するようにしましょう。
2.既存システムの一部を利用してシステムを統合させる
基幹システムを統合する際は、既存システムの一部を利用して統合や再構築を行うことを検討してください。なぜなら、システムをゼロから再構築するよりも、既存システムの一部を土台にほかのシステムを肉付けするほうが効率的であるためです。
できるだけ低コストかつスムーズにシステム統合をするのならば、ぜひ既存システムの一部を利用することを検討してください。ただしシステムを統合することにより、コンピュータへの負荷は大きくなります。実際にシステムを稼働させるための条件や、必要スペックがどのくらいになるのかなどに気をつけておきましょう。
3.システムをクラウド運用するかを検討する
従来は、実際にコンピュータやサーバを社内に設置するオンプレミス型がメインでしたが、最近ではクラウドで運用する企業も増えています。これはシステムをクラウド運用することで、場所を取らずにシステムを利用できること、システムの保守業務が不要になるなどのメリットがあるためです。
コロナ禍において企業の働き方が大きく変化し、リモートワークやテレワークが急速に普及しました。リモートワークやテレワークが普及した裏には、システムなどのクラウド運用も非常に関係しているでしょう。
システムのクラウド運用は、地震や大雨などの災害による物理的リスクを抑えられます。クラウド運用をすることで、安定した企業経営にもつながるのです。また、クラウド運用は初期費用が比較的安いという特徴もあります。ぜひ検討してみてください。
まとめ
基幹システムを導入している企業は、各システムを統合させることによって業務や情報共有をよりスムーズにできるでしょう。システム統合による効率化は、従業員のスキルによらず一定の効果が期待できるのも大きなメリットといえます。
ただし、システム統合にはメリットだけではなく、デメリットがあることも忘れないでください。具体的には、システムを統合すると被害が集中しやすく、トラブル時の影響が大きくなることを考慮する必要があるのです。社内でシステム統合ができない場合は、外部に依頼するための費用を忘れないでください。
基幹システムの統合を検討している場合はクラウド運用も検討し、現在の環境に適切なシステムができるように統合あるいは再構築していきましょう。