脆弱性診断はWebサイトやアプリ、サーバーをはじめとするシステムやネットワークに、セキュリティの脆弱性がないかどうかを診断する作業のことです。今回は脆弱性診断に関する種類やメリットなどを解説。セキュリティに危機感を持ち、被害を防止しましょう。
脆弱性診断はセキュリティに脆弱性がないか診断すること
脆弱性診断ではWebサイトやアプリのようなシステム、あるいはネットワーク上のセキュリティに脆弱性があるかどうかを診断します。システムやネットワークを提供する企業や組織は、ユーザーが安心して利用できる環境を整える必要があるため、サイバー攻撃や不正アクセスなどの脅威に備えなければなりません。
そのような脅威に対してセキュリティの観点から、自分たちが提供するシステムやサーバーなどのサービスが安全であるか、またどのような脆弱性があるかなどを診断するのです。そしてセキュリティの診断結果をもとにして、プログラマーをはじめとするエンジニアやIT技術者がセキュリティをより強固にするための作業をします。
例えば不正アクセスやハッキングなどのサイバー攻撃を受け、顧客の個人情報が漏洩してしまうと、企業や組織は大きな被害を受けるかもしれません。脆弱性診断は、そのような被害を防ぐためにシステムやネットワークにおけるセキュリティの脆弱性を見つけ、早急に対策を講じるための重要な作業といえます。
脆弱性診断には2種類の方法がある
脆弱性診断の方法は、ツールを用いて機械的に行う「ツール診断」と、人間が手動で行う「手動診断」に大別されます。どちらにもメリットとデメリットがありますが、低コストを重視する場合はツール診断、診断精度を重視する場合は手動診断が良いでしょう。
ほかにも機械と人間ならではの特徴がそれぞれあるため、詳しく解説していきます。脆弱性診断をしようと検討している方は、両者の特徴をしっかり理解した上でどちらの方法を選ぶかを判断してください。
1.ツール診断の特徴
ツール診断では診断する項目があらかじめ設定されている専用ツールを用いて、自動で脆弱性を診断します。機械的に診断を行うため、短時間かつ低コストという点が魅力的です。ツールを導入して診断を開始するだけで良いため、誰でも簡単にできることや、誰がやっても同様の結果を得られるというメリットもあります。
しかし、ツール診断は金額や性能によって診断精度が異なるため、より診断精度を高くしたい場合は高額なツールを導入するか、人間による手動診断を行いましょう。
2.手動診断の特徴
手動診断ではシステムやネットワークのセキュリティを、人間が一つひとつ診断していきます。ツール診断に比べて時間がかかりますが、診断項目を自由に設定できることやより広範囲かつ細かい部分まで診断できるといった柔軟性に加えて、診断精度が高いのが特徴です。
小規模なネットワークや単純なシステムであれば問題ありませんが、大規模かつ複雑なシステムやネットワークになるほど、診断に時間がかかることを理解しておきましょう。また手動診断は、ツール診断よりも費用が高い傾向にあります。
このように、ツール診断と手動診断にはそれぞれメリットとデメリットが存在するため、それらの特徴を理解した上で、診断したいシステムやネットワークに対して適した診断方法がどちらかを選んでみてください。もし金銭的に余裕がある企業であれば、ツール診断と手動診断の両方を行うことも検討しましょう。
脆弱性診断サービスの種類3つと各特徴
脆弱性診断サービスは、Web上で簡単に診断できるクラウド型の脆弱性診断ツール、コンピュータにインストールが必要なソフトウェア型の脆弱性診断ツール、主に企業や組織によって提供される手動の脆弱性診断サービスの3種類に分けられます。
費用や診断精度、診断が簡単に行えるかはそれぞれ違うため、各サービスの特徴を把握しておきましょう。
1.Web上で診断できるクラウド型の脆弱性診断ツール
1つ目の脆弱性診断サービスは、Web上で診断することが可能なクラウド型の脆弱性診断ツールです。Web上で気軽に診断できるという強みがあり、誰でも短時間で簡単に診断できます。短時間で脆弱性の診断ができるのはメリットであるものの、診断精度については不安視する必要があるでしょう。
JPCERT/CCが発表している脆弱性診断の頻度は、診断する内容(Webサイトやシステム)によって異なります。例えばアプリケーションの場合は基本的に1年に1回程度、あるいは機能変更が行われたときに実施すると良いです。
もしも機能変更やアップデートが頻繁に行われるコンピュータやシステムなどを利用する場合には、このクラウド型の脆弱性診断ツールが迅速かつ高頻度に診断しやすいでしょう。
2.インストールするソフトウェア型の脆弱性診断ツール
2つ目の脆弱性診断サービスは、インストールが必要なソフトウェア型の脆弱性診断ツールです。まずはコンピュータに脆弱性診断ツールをダウンロードしてインストールしなければならないため、クラウド型に比べると手軽さが劣ります。しかし、クラウド型の脆弱性診断ツールに比べてより詳細な診断項目がある場合が多く、診断精度も高いです。
個人でシステムやネットワークを運用している方が手動診断を外注するのは、主に金銭面で厳しいケースが多いため、個人で行える脆弱性診断としては実質ソフトウェア型とクラウド型の脆弱性診断ツールがメインとなるでしょう。
3.手動の脆弱性診断サービス
3つ目は、企業や組織が提供している手動の脆弱性診断サービスです。これは手動診断のサービスで、ツール診断に比べると費用が高くなりやすく、診断に時間がかかるという特徴があります。
診断精度は脆弱性診断を行うIT技術者によっても左右されるため、脆弱性診断の実績がある企業を選ぶか、または評価やレビューなどをしっかり比較検討した上で選ぶようにしてください。
たとえ大規模かつ複雑なシステムであっても、金銭的に余裕がある場合は可能な限り企業が提供する脆弱性診断サービスを利用し、技術者に手動診断を依頼することを検討しましょう。
脆弱性診断が必要な3つの理由
脆弱性診断が必要な理由は、脆弱性診断をもとに脆弱性対策を講じてセキュリティ被害を未然に防ぐこと、サービスの安全性を高めて信頼性の低下を防ぐことです。
不正アクセスをはじめとしたサイバー的な攻撃を受けてしまうと、情報漏洩やサービス停止などの被害を被るでしょう。そのようなことが一度でも起きてしまうと、企業の信頼性を回復させるのは非常に困難になるため、未然に防ぐことが重要といえます。
また、脆弱性診断を行うことはコスト削減にもつながるのです。システムやネットワークを運用している企業や組織は、人件費やセキュリティ対策費を抑えられるため、ぜひ脆弱性診断を行いましょう。
1.脆弱性対策によってセキュリティ被害を未然に防ぐ
システムやネットワークの脆弱性を利用した攻撃に備えて、セキュリティ被害を未然に防ぐために脆弱性診断は必要です。診断結果をもとに脆弱性を把握し、その脆弱性を対策することで、仮に不正アクセスや攻撃を受けたとしても被害を最小限に抑えられます。
インターネットの発展とともにセキュリティへの脅威が増え続けている現在、システムやネットワークにおけるセキュリティのリスク対策として脆弱性診断は欠かせないのです。
2.サービスの安全性を高めて信頼性の低下を防ぐ
脆弱性診断をもとにセキュリティ対策を行うのは、システムやサービスの安全を高めてユーザーが安心できる環境を構築するためです。不正アクセスやハッキングによって情報が漏洩してしまい、信頼性が低下することを間接的に防ぎます。
サービスを発展させて企業の売上を増やしていくためにも、常にセキュリティに危機感を持ち、脆弱性診断を行うことが大切です。
3.セキュリティ対策のコスト削減につなげられる
脆弱性診断によってシステムやネットワークの脆弱性を見つけられれば、最優先で脆弱性の対策を講じることが可能になり、コスト削減にもつなげられます。
もしも脆弱性診断を行っていない場合、システムやネットワークのどんな部分に脆弱性があるのか、危険度がどれくらいなのかを把握できず、対策すべき箇所のセキュリティ対策が遅れてしまうでしょう。
診断を行うとこのような状況を避けられることに加え、より早くセキュリティ対策ができ、人件費やセキュリティ対策費を最小限に抑えることが可能となるわけです。
脆弱性診断をしていない場合のリスクや注意点
脆弱性診断をしていない場合には、さまざまなリスクや注意点があります。具体的には、攻撃者からすると不正アクセスや悪用しやすい状態であること、不正アクセスや情報漏洩に気付けない可能性があることなどです。
また、脆弱性診断を行っていれば必要のなかった人件費やセキュリティ対策費などのコストが発生しやすいというリスクや注意点を把握しておきましょう。
攻撃者からすると不正アクセスや悪用がしやすい
脆弱性診断をしていないことは、運用しているシステムやネットワークにどのような脆弱性があるのかを把握できていないということです。これはつまり、そのままでは不正アクセスや悪用されやすい状態である可能性が高いといえます。
もちろんセキュリティ対策がしっかりと行われていれば問題はありませんが、脆弱性診断を行わずに強固なセキュリティを構築するのは困難だからです。セキュリティ対策が疎かになって、攻撃の的にならないように注意しなければなりません。
不正アクセスや情報漏洩に気づけない可能性がある
脆弱性診断を行って常にセキュリティについて危機感を持っていなければ、そもそも不正アクセスや情報漏洩に気づけない、または気づくのが遅れてしまう可能性があります。最近は、Webサイトのページを閲覧しただけでウイルスに感染してしまうようなケースをはじめ、攻撃の手口が多様化していて非常に気づきにくいのです。
このような脅威に対しては、定期的に脆弱性診断を行ってセキュリティ対策を施しましょう。万が一にも不正アクセスされていた場合は、早急に発見して対処するためにも、日頃から脆弱性診断を行う必要があるのです。
無駄なセキュリティ対策コストが発生しやすい
脆弱性診断を行わなければ、優先的にセキュリティ対策を講ずるべき箇所の対応が遅くなり、あまり必要性のない部分のセキュリティ対策に時間をかけてしまう可能性があります。それによって人件費やセキュリティ対策費といった余計なコストが発生しやすいのです。
本来サービス向上を図るために利用されるべき資金が、セキュリティ対策費に必要以上に回されてしまうと、サービスを成長させることも難しくなります。そのような事態を避けるためにも、脆弱性診断を行って効率的なセキュリティ対策を講じるべきでしょう。
被害想定を確認できるペネトレーションテストとは
脆弱性診断は攻撃されるリスクを発見し、セキュリティ対策について考慮するものです。セキュリティをより強固にするのであれば、脆弱性診断と同時にペネトレーションテストを行うことをおすすめします。
ペネトレーションテストでは、システムやネットワークへの侵入を実際に試し、どのような侵入手口があるのか、どのような情報が漏れてしまうかなどの被害想定を確認できます。より効率的かつ有効なセキュリティ対策を講じるためには、脆弱性診断とペネトレーションテストの結果をもとにシステムの再構築などを行うと良いでしょう。
ペネトレーションテストの主な2つの特徴
ペネトレーションテストは、自分たちが運用しているシステムやネットワークなどへの侵入可否を安全に調査でき、客観的なセキュリティ強度の把握に有効的です。ただし、大規模なシステムではコストが膨大になりやすいこと、テスト結果が実施者のスキルや技術力に左右されるという特徴があります。
脆弱性診断と一緒にペネトレーションテストを実施するのは大変かもしれません。とはいえペネトレーションテストの特徴も把握しておき、ぜひ一緒に実施することを検討してみてください。
大規模なシステムの場合はコストが膨大になりやすい
ペネトレーションテストは大規模や複雑なシステムなどの場合、テストの手間が増えてコストが膨大になりやすいという特徴があります。もしもシステムやネットワークの全てを調査するのが困難な場合、範囲を絞ってテストすることも良いでしょう。そうすることでテスト費用が抑えられ、セキュリティ対策をする際もその部分を集中的に対処することが可能です。
テスト結果が実施者のスキルや技術によって左右される
ペネトレーションテストは、依頼する企業や技術者によって結果が大きく変わる可能性があります。より完璧を目指すのであれば、複数の企業や技術者に依頼してテスト結果を照らし合わせてみることも検討してください。
また、ペネトレーションテストは一度だけ実施すれば良いものではなく、システムのメンテナンスやソフトウェアのアップデート、バージョンアップなどで構造や環境が変化した際に、脆弱性診断と一緒に実施することをおすすめします。
まとめ
Webサイトやアプリ、ソフトウェアなどのシステムやネットワークを運用する場合は、脆弱性診断を実施することで、より効率的かつ有効的なセキュリティ対策ができます。技術の発展とともに不正アクセスやウイルス、ハッキングなどの脅威が増え続けているため、セキュリティに危機感を持ち、脆弱性診断を定期的に行うことが大切です。
脆弱性診断は手動診断とツール診断に大別され、ツール診断にはクラウド型やソフトウェア型などの種類があります。それぞれのメリットとデメリット、特徴を把握して自分たちにどちらが適しているかを判断しましょう。
また、脆弱性診断に合わせてペネトレーションテストを実施すると、進入手口や被害想定を確認でき、セキュリティ対策に役立てることが可能です。セキュリティ対策を疎かにせずに、システムやネットワークを安全に利用できるようにしていきましょう。