SANとは？NASとの違いやメリットや導入がおすすめできるケースを紹介

企業のITインフラにおいて、データ管理の効率化とセキュリティ強化は重要な課題です。特に、業務のデジタル化が進む中で、大量のデータを安全かつ迅速に処理する環境が求められています。そこで注目されているのが、SAN（ストレージエリアネットワーク）です。SANは、複数のサーバー間でストレージを共有し、高速なデータアクセスとスムーズな拡張性を提供します。

本記事では、SANの基本的な仕組みや導入メリット、NASやDASとの違いを分かりやすく解説し、導入を検討する企業に役立つ情報を提供します。SANの導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

SAN（サン）とは？

SAN（ストレージエリアネットワーク）とは、データをしまっておく「箱」となるストレージ（NASなど）とコンピュータをつなぐための専用のネットワークのことです。

通常、パソコンのデータはローカルのハードディスクやUSBメモリなどに保存しますが、SANを利用すると、ネットワークを通じて複数のコンピュータがストレージを共同で利用できるようになります。

SANが注目されている理由

近年、デジタルデータの爆発的な増加やクラウド環境の普及に伴い、企業のデータ管理がますます重要になっています。特に、以下のような課題を解決するために、SANの導入が注目されています。

• データの一元管理と拡張性の確保
  SANを導入することで、ストレージを一元的に管理でき、ビジネスの成長に応じてストレージ容量を柔軟に拡張することが可能です。
• 高いパフォーマンスと信頼性
  高速なファイバーチャネルやiSCSI接続により、大規模データの処理速度が向上し、ミッションクリティカルな業務を安定して運用できます。
• 仮想化環境との親和性
  多くの企業が導入している仮想化環境では、効率的なストレージ管理が求められます。SANを活用することで、複数の仮想サーバーからのデータアクセスがスムーズに行えます。
• データのバックアップや災害対策の強化
  SANでは複数のストレージデバイスを接続できるため、冗長性の確保や遠隔地バックアップの構築も容易です。

このように、ビジネスの成長に対応できるスケーラビリティや、安定したパフォーマンスの提供により、SANは多くの企業で採用が進められています。

SANの仕組み

SANの基本的な仕組みは、専用のストレージネットワークを構築し、複数のサーバーが共有ストレージに直接接続できる環境を提供することです。通常、以下の主要コンポーネントで構成されます。

1. ストレージデバイス（ディスクアレイなど）

大量のデータを保存し、高速な読み書きを可能にします。

1. ホスト（サーバー）

アプリケーションを実行し、ストレージにアクセスする役割を担います。

1. SANスイッチ

サーバーとストレージを接続し、データ転送の管理を行います。

1. 接続インターフェース（ファイバーチャネルやiSCSI）

高速データ転送を実現し、低遅延でのストレージアクセスを可能にします。

SANの動作は、ストレージのデータをブロック単位で処理するため、ファイルベースのストレージであるNASとは異なり、より高い処理能力を発揮します。そのため、業務アプリケーションやデータベースのパフォーマンス向上に寄与するのです。

たとえば、大企業のデータセンターや、たくさんのデータを扱うシステム（例えば、オンラインショップや動画配信サービスなど）では、データの安全性・効率性を確保するためにSANがよく活用されています。

SANのメリット

ストレージエリアネットワーク（SAN）は、企業のデータ管理をより効率的かつ安全に行うための高度なストレージソリューションです。従来のストレージ環境と比較して、SANを導入することで得られる多くの利点があります。特に、データの一元管理や高速アクセス、大規模なシステムにおける拡張性などが魅力です。ここでは、SANの主なメリットについて詳しく解説します。

ストレージ容量を柔軟に拡張できる

SANを導入する最大のメリットの一つが、ストレージのスケーラビリティ（拡張性）です。SANでは、ストレージデバイスをネットワーク上に配置し、必要に応じて新しいストレージを追加するだけで、シームレスに容量を拡張できます。例えば、ビジネスの成長に伴いデータ量が増加しても、既存のシステムを止めることなくストレージの追加が可能です。また、RAID構成などを活用することで、データの分散管理を行い、効率的にストレージを活用できます。これにより、企業は急なデータ増加にも柔軟に対応し、スムーズな業務運営を維持できるのです。

高速で安定したデータアクセスを実現

SANは、ファイバーチャネル（FC）やiSCSIなどの高速な通信プロトコルを採用しており、従来のストレージシステムよりも圧倒的に高速なデータ転送が可能です。これにより、リアルタイムのデータ処理が求められるシステム（例えば、金融業務や医療データの処理）においても、高いパフォーマンスを発揮します。さらに、SANは専用のネットワークを使用するため、一般のネットワークトラフィックから独立し、トラフィックの混雑を避けることができ、安定したデータ転送速度を維持できるのが特徴です。

複数のサーバー間でのストレージ共有が可能

SANを導入することで、複数のサーバーが一つのストレージを共有できる環境が構築できます。これにより、データの分散管理が不要になり、どのサーバーからでも必要なデータにアクセスすることが可能になります。例えば、企業の各部門が異なるサーバーを使用していても、SANを利用すればすべての部門が共通のストレージを利用できるため、データの一元管理が可能となります。さらに、各サーバーが個別にストレージを持つ必要がなくなり、管理の手間やコストの削減にもつながります。

データの冗長性を確保し、障害に強い

SANは、RAID構成やバックアップ機能を活用することで、高いデータ保護性能を提供します。RAID5やRAID6などの技術を用いることで、ストレージ障害が発生してもデータを迅速に復旧でき、業務の継続性を確保できます。また、複数のストレージ間でデータのレプリケーション（複製）を行うことで、障害発生時に自動的に別のストレージへ切り替わるフェイルオーバー機能を備えています。これにより、ビジネスの中断を最小限に抑えることが可能です。

仮想化環境との相性が良い

仮想化技術の普及により、多くの企業がサーバーやストレージの統合を進めています。SANは、VMwareやHyper-Vといった仮想化プラットフォームと高い親和性を持ち、仮想マシン（VM）のストレージ管理を効率化します。仮想環境では、複数の仮想マシンが同一のストレージを共有する必要があるため、高速なデータアクセスと安定したパフォーマンスを提供するSANの導入が有効です。また、クラウド環境と連携することで、ハイブリッドクラウドの構築にも対応できるため、柔軟なデータ管理を実現できます。

SANと他のストレージシステムの比較

ストレージシステムには、SAN（ストレージエリアネットワーク）のほかに、NAS（ネットワークアタッチドストレージ）やDAS（ダイレクトアタッチドストレージ）などがあります。これらのシステムはそれぞれ異なる特性を持ち、用途やニーズに応じて適切なものを選ぶことが重要です。以下では、各ストレージシステムの特徴を比較し、SANのメリット・デメリットを明確にします。

SANとNASの違い

SAN（ストレージエリアネットワーク）とNAS（ネットワークアタッチドストレージ）は、どちらもデータの保存・共有を目的とするストレージソリューションですが、その構造や用途には以下のように大きな違いがあります。

SANは、大規模かつ高パフォーマンスな環境に適しており、データベース運用や仮想化に最適です。一方、NASは手軽に導入・管理ができ、部門単位でのファイル共有やバックアップに向いています。

SANとDASの違い

DAS（ダイレクトアタッチドストレージ）は、サーバーやコンピュータに直接接続して使用するシンプルなストレージ方式で、SANとは用途や柔軟性に以下のように大きな違いがあります。

DASはシンプルな構成で低コストな小規模向けのストレージ手段として適していますが、複数のサーバーに対する共有やスケーラビリティの観点では限界があります。対照的に、SANは高度なストレージ管理と柔軟な拡張が可能で、大規模なエンタープライズ環境に最適です。

これらの表を参考に、各ストレージシステムの違いを理解し、自社に最適な選択を行いましょう。

SANの導入がおすすめのケース

ビジネスにおいて扱うデータ量が増加し、より効率的かつ安全に管理したいと考えている企業にとって、SAN（ストレージエリアネットワーク）は最適な選択肢です。特に、複数のサーバーを使用して業務を行う場合や、大規模なデータ処理が必要な環境では、SANの高度なストレージ管理機能が大きなメリットを発揮します。ここでは、SANの導入が特に有効なケースについて詳しく解説します。

データ量が急増している大規模オフィス

近年、企業のデータ量は急速に増加しており、従来のストレージでは管理が困難になるケースが増えています。特に、社員数が多く、日々の業務で大量のデータを扱う大規模オフィスでは、SANの導入が効果的です。SANを導入することで、複数のサーバー間でストレージを効率的に共有でき、データの一元管理が可能になります。また、ストレージの拡張が容易なため、将来的なデータ増加にも柔軟に対応できる点も魅力です。

仮想化やクラウド環境を活用している企業

仮想サーバーやクラウドサービスを積極的に導入している企業では、ストレージの効率的な管理が求められます。SANは、仮想環境と高い親和性を持ち、複数の仮想マシンに対して高速かつ安定したデータアクセスを提供します。仮想化環境では、ワークロードの負荷が急増することがあるため、SANの高いパフォーマンスと拡張性を活用することで、スムーズな運用が可能となります。加えて、クラウドストレージと連携することで、ハイブリッド環境にも対応できます。

24時間稼働のシステムが必要な現場

医療機関や金融機関、製造業など、24時間365日稼働が求められる環境では、ストレージの高可用性とデータの安全性が重要です。SANは、冗長化構成により障害発生時でもデータを確実に保護し、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。また、迅速なデータバックアップやリカバリーが可能なため、業務の継続性を確保しやすくなります。これにより、トラブル発生時の影響を最小限に抑え、安定した運用が可能です。

SANの導入ならICにお任せください

引用元：システム開発のIC

SAN（ストレージエリアネットワーク）の導入は、データ管理の効率化や業務の安定運用に不可欠ですが、適切な設計や運用には高度な専門知識が求められます。ICでは、企業のニーズに合わせた最適なSANソリューションを提供し、導入から運用までをトータルサポートいたします。

ICの強みは、豊富な経験と専門知識を活かし、企業の規模や業務内容に応じたカスタマイズが可能なことです。設計段階では、現状のITインフラを詳細に分析し、最適なストレージ環境を構築します。また、導入後も24時間365日の監視体制やトラブルシューティングを提供し、安定した運用を実現します。

さらに、コスト最適化の提案や最新のセキュリティ対策も提供し、企業が抱える課題を解決。データの増加や運用負荷の軽減を目指す企業にとって、ICのサポートは強力な助けとなるでしょう。

SANの導入を検討されている方は、ぜひICにご相談ください。

システム開発のIC

まとめ

SAN（ストレージエリアネットワーク）は、大量のデータを効率的に管理し、安定した運用を実現するストレージソリューションとして、多くの企業で導入が進んでいます。特に、大規模オフィスや24時間稼働のシステムを必要とする現場、仮想化やクラウド環境を活用する企業にとって、SANの高いパフォーマンスや柔軟な拡張性は大きなメリットとなります。

また、SANとNAS、DASとの違いを理解し、自社の運用に最適なシステムを選定することが重要です。導入にあたっては、コストや運用管理の負担、将来のスケールアップを考慮し、慎重な計画が求められます。

SANの導入を検討する際には、専門的な知識や経験が必要となるため、信頼できるパートナーのサポートが不可欠です。ICでは、企業のニーズに合わせた最適なSANソリューションの提案から、導入・運用サポートまでをトータルで支援しています。データ管理の最適化を目指す企業は、ぜひICにご相談ください。

SANの導入を成功させるために、この記事を参考に最適なストレージ環境を構築しましょう。

システム開発のIC