企業のサーバーや社内ネットワークなどのシステムの運用を管理する業務を、システム運用管理といいます。ITシステムを導入する企業が増えている現在、非常に重要な役割を持つ業務です。そんなシステム運用管理の業務内容や求められている人材などを解説します。
システム運用管理の定義とその内容
システム運用管理とは、社内のネットワークやサーバーなどのITシステムが正常に運用できているかどうかといった管理を行う仕事のことです。
例えば、不正アクセスやサイバー攻撃によって顧客の個人情報が流出してしまったり、ウイルスによってサーバーがダウンしたりしてしまうと、大きな被害を受けることになります。このようなことを防ぐために、セキュリティの確保やトラブル対策を行い、システムを安定して稼働させるのがシステム運用管理です。
これまではサーバーなどのコンピューターを自社に設置し、社内ネットワークのみでシステムを運用できる「オンプレミス」が一般的でした。オンプレミスは、カスタマイズ性やセキュリティなどに優れています。しかし、導入コストが高いことに加えて保守業務が必要で、人件費がかかりやすいことが難点です。
そこで最近では、インターネット上でシステムを構築できる「クラウド」型が増えています。サーバーを設置するスペースが不要でコストも安価に抑えやすいため、小規模の会社でも導入しやすいのが特徴です。
それでは、システム運用管理の内容を詳しく解説していきます。
システム運用管理は3種類に大別される
システム運用管理はネットワーク運用の管理、システム管理、業務運用管理の3種類に大別されます。
ネットワーク運用の管理とシステム管理は一見似たものですが、社内ネットワーク全般の管理をするのか、それぞれのシステムごとに正常に稼働していることを確認して管理するのかといった点で違いがあるものです。それぞれの内容を詳しく解説していきます。
ネットワーク運用の管理
システム運用管理の一つに、ネットワーク運用の管理があります。これは、社内に構築されているシステムなどのネットワークを運用するための管理です。
企業では、各システムやソフトウェアなどのアクセス権限、パスワード、そして個人情報などを含む膨大なデータを管理しています。ネットワーク運用管理はそのデータが流出しないように、またはネットワーク障害による業務への悪影響を防ぐために必要な管理の一つです。
システムを正常に稼働させて運用するための管理
2つ目は、システム管理です。システム管理においては、サーバーが正常に稼働しているかを確認したりメンテナンスしたりします。また、ストレージ容量が十分にあるかなど、コンピューターの周辺機器を含めた設備環境の管理をするものです。
さらに、万が一のトラブルに備えてデータのバックアップ作成やデータを分散して保管するといったトラブル対策も同時に行います。
業務運用のための全般的な管理
3つ目は、業務運用管理です。これは、システム運用管理の業務そのものを行う上で必要になる全般的な管理といえるでしょう。
業務運用管理では、システムのパフォーマンスチェックやほかの部署との連絡、他社との取引、スケジュール調整なども行います。システムを運用管理する上で、会議を行って改善点を共有したり、カスタマイズしたりする場合も考えられるでしょう。
システム運用管理における主な4つの業務
システム運用管理の業務は、パフォーマンスの監視業務、バックアップの管理業務、セキュリティを確保する業務、設備や備品の管理業務の4つに分類されます。全てシステム運用管理をする上で欠かせない業務です。
もしも外部からのサイバー攻撃やウイルスによって情報が漏れてしまうと、会社に甚大な被害を及ぼします。したがって、特にセキュリティ確保などは非常に重要な役割を持つことを覚えておきましょう。
正常稼働しているかの確認やパフォーマンスなどの監視業務
パフォーマンス監視業務とは、サーバーやシステムなどが正常に稼働しているかどうかを確認したり、パフォーマンスやログの履歴などを監視したりする業務です。システムのエラーが起きてしまうと社内の業務に影響が出てしまうため、常に動作やパフォーマンスを監視する必要があります。
また、システムの改善点を見つけたり、カスタマイズした際に確認したりといったこともパフォーマンス監視の業務です。
トラブルに備えたバックアップ作成などの管理業務
2つ目は、トラブルに備えてバックアップを作成し、管理する業務です。この業務ではサーバーやシステムのデータを収集したり管理したり、あるいはバックアップ作成のスケジュールを調整したりといったバックアップ関連の全般的な業務を行います。
ただバックアップを作成して一括管理するのではなく、バックアップのデータを複数に分散することで、リスクを可能な限り抑える工夫をするのです。
セキュリティチェックをして監視する管理業務
これは社内ネットワークを安全に活用できるように、社内コンピューターのウイルス対策やファイアフォールの設定、各通信の暗号化などを行う業務です。さらに社内に導入しているツールやシステムなどのパスワード、管理者権限なども設定します。
定期的にパスワードを変更し、常にセキュリティを確保する業務と考えるといいでしょう。
設備や備品確認、外部ストレージなどの管理業務
システム運用管理の業務には、サーバーのようなコンピューター設備の管理に加え、USBやコードなどの備品管理も含まれます。また、バックアップ用の外部ストレージに十分な容量が残っているか、予備のストレージがあるかといった確認も業務の一つです。
もしも必要な部品や備品などが不足している場合には、発注してシステム運用管理の業務を問題なくできるように調整します。
運用において重要な「システム運用管理項目」とは
システムの運用管理を行う際には、運用管理の対象をどのように監視して管理するのかをまとめた「システム運用管理項目」というものを定めます。
この項目は独自に決めるものであるため、会社によっても内容がそれぞれ異なりますが、一般的には運用コミュニケーション管理、体制管理、稼働・作業管理、リスク管理、セキュリティ管理などが挙げられるでしょう。
例えば運用コミュニケーション管理では、システムの運用状況などを報告するために話し合う場を作り、会議の頻度や参加者を誰にするかなどを定義します。他方、リスク管理ではシステムの運用管理を行う上で起こり得るトラブルや障害などを想定し、その対策や実際にトラブルが発生した際の対応などの方針を明確化するのです。
このように、あらかじめ方針やルールなどを明確化しておくことで、多くのメリットが得られます。業務の効率化が図れるだけではなく、トラブルが発生したとしても冷静かつ適切な対応をとれるでしょう。そのため、運用管理する環境や設備などに応じ、項目ごとに明確化することが重要です。
システム運用管理に求められるスキルや資格
システム運用管理に求められるスキルとは、職場や顧客と円滑なコミュニケーションができることやヒアリングする能力です。
また、業務において資格は必須ではありませんが、IT関連の基礎知識は必要でしょう。そこでおすすめの資格が「基本情報技術者」や「応用情報技術者」などです。これらの資格を取得しておくと、客観的に「基礎は理解できている」という判断ができるため、仕事や転職などに活かせます。
ヒアリング能力やコミュニケーション能力が重要
システム運用管理では、自社システムを利用するユーザーのサポートや運用管理を行うために、他社とのやり取りがあります。そのため、ユーザーからの評価や要望などをもらうためのコミュニケーション能力はもちろん、現状を把握したり改善点を見つけたりするヒアリング能力が重要です。
今後も継続して取引してもらうために、信頼を得るための工夫をすることも求められます。
システム運用におすすめの資格
システム運用管理では、仕事をするのに資格が必要というわけではありません。しかしIT関連の資格を持っていると、転職などの面接で好印象を持たれて有利になりやすいでしょう。
そこでシステム運用に関わっている方、またそのような仕事を目指している方には、「基本情報技術者」や「応用情報技術者」という資格がおすすめです。この二つは国家資格であるため、これらの資格を持っていると仕事や転職時に活かせます。
ほかには、「マイクロソフト認定資格プログラム(MCP)」や「Linux技術者認定試験(LPIC)」などの試験に合格しておくことも有用です。自分のレベルチェックをしたい、あるいはIT技術者としての資格が欲しいといった方は、受験することを検討しましょう。
まとめ
システム運用管理は、社内サーバーやシステムなどを正常に稼働させてITインフラを構築し、運用管理をすることで会社を支えます。
ITシステムを導入する企業が増えている現在、システム運用管理は需要の高い仕事です。最近ではクラウドで社内ネットワークを構築する企業も多く、リモートワークでも効率的に業務を進められます。
IT業界で仕事がしたい、コンピューターやシステムに関わる仕事がしたいという方は、ぜひシステム運用管理を検討してみてください。