ITにおけるインフラ構築で失敗しないためには、各種インフラの特徴を理解し、手順をきちんと守りながら一つひとつの工程を丁寧に完了させていくことが必要不可欠です。
本記事では、ITのインフラ構築について具体的な手順や何をすべきかについて具体的に解説します。
また、インフラ構築を外注する際のメリットや、外注先の選定ポイントについても紹介するので参考にしてください。
目次
インフラ構築を行うには、手順を守る必要があります。それぞれの手順と内容は以下のとおりです。
手順 |
決定・実施内容 |
要件定義 |
情報システムの目的や規模 |
情報システムの性能 |
|
情報システムのセキュリティ |
|
設計 |
インフラの種類 |
インフラ構成 |
|
インフラの仕様 |
|
導入 |
インフラの調達 |
インフラの設定やインストール |
以下では、インフラ構築の手順についてそれぞれ詳しく解説します。
インフラ構築の流れ・順番には意味があるため、失敗しないためには必ずこの手順で作業する必要があります。
また、一つひとつの工程をしっかり完了させてから次の工程へ進まないと、構築すべき内容が盛り込めず、完成までたどり着けなくなるため、注意しましょう。
ITにおけるインフラ構築に関しては、以下のページで詳しく解説しております。
初めに、インフラ構築の目的など一つひとつの項目について要件を明確かつ具体的に設定します。
設定すべき項目は以下のとおりです。
以下では、上記の3項目について詳しく説明します。
要件定義は、インフラ構築の要となる工程です。
ここで要件を明確かつ具体的に設定しておかないと、後の工程に影響が出てしまいます。
曖昧にせず、しっかり設定するよう心がけましょう。
まず、情報システムをなんのために構築するのかについて明確にします。
たとえば「給与計算フローを効率化する」「新サービスのECサイトを通じて顧客を獲得する」など、自社の業務で達成したいゴールから逆算して目的を決めるとスムーズです。
目的が明確になったら、システムの規模を設定しましょう。システム構築の目的をふまえた上で、対象とするユーザー数やアクセス数、データ量などを決めます。
システムの目的と規模が決まったら、求める性能を明確化しましょう。
たとえば、システムに求める処理速度や応答時間、可用性などを決めます。
ハードウェアでは、導入するハードウェアのスペック、数、セキュリティ、ネットワークについて検討します。
ソフトウェアでは、OSもしくはミドルウェアの種類やスペックを決めましょう。
また、構築後の保守運用、監視・管理や、トラブル発生時のマニュアル、情報セキュリティについても明確にしておくことも大切です。
情報システムのセキュリティについても、要件定義の段階で対策法を決めておきましょう。
保護すべきデータの優先順位や想定されるリスクをもとに、適切なセキュリティ対策法を検討します。
対策法の例としては、データの暗号化、認証の要求などが挙げられます。
セキュリティがしっかりしていないと、構築後の運用段階でハッキングや情報漏えいなどのトラブルが発生するリスクが高まります。
一方、あまりセキュリティを強化しすぎると、リモートワークなど外部からのアクセスが不便になり、かえって業務効率化の妨げになりかねません。
したがって、セキュリティ対策に関しては何についてどこまで強化するかを話し合う必要があります。
要件定義が定まったら、各要件に合わせて、インフラの種類や構成、仕様などを設計していきます。
具体的には、以下の項目を設定します。
設計は、インフラ構築において中核的な工程です。初めから細かい設定をしようとすると上手くいかないことも多いため、あらかじめ全体を設計してから詳細部分に移るとスムーズです。
詳細設計の段階でも、構築後の運用に備えて要件どおりのセキュリティ対策をしっかり行いましょう。
構築できるインフラには種類があります。主なものは以下のとおりです。
クラウドサービスは、インターネット上に存在する空間を利用できるサービスです。
初期費用や運用費が比較的安く、柔軟性や拡張性が高いため、コストをできるだけ安く抑えたい時に向いています。
オンプレミスサーバーは、自社で所有、管理するインフラです。自社の中で保管するのでセキュリティが高い点がメリットです。
また、自社で使いやすいようにカスタマイズしやすいというメリットもあります。
それぞれのメリットをふまえた上で、要件定義に沿ったインフラを選択しましょう。
インフラの構成には、ネットワークやストレージなどの要素があるので、こうした要素をどのように組み合わせるかを決定します。
ネットワークでは、LANやWANなどの種類やトポロジーを決め、同じ建物や敷地内または遠隔地のコンピュータをつないで情報通信できるようにします。
ストレージでは、HDDやSSDなどの種類やRAIDなどの方式を決め、大容量のデータを保存しておくための場所や方法を決めましょう。
HDDなどのハードウェアに内蔵されているものやUSBメモリなど外付けのもの、Googleドライブ、OneDrive、iCloudなどオンラインでデータを保管できるものもストレージの一種です。
インフラには、コンピュータの機器本体となる「ハードウェア」と、コンピュータを動かすシステムである「ソフトウェア」があります。
ハードウェアにはCPUやネットワーク、ソフトウェアにはOSやミドルウェアなどがあります。インフラの仕様設計では、これらの性能や容量、バージョンなどを決定しましょう。
たとえば、CPUではコア数やクロック周波数など、OSではWindowsやLinuxなどの種類やバージョンを決定します。
こうした仕様は、要件定義に沿うのはもちろんのこと、予算とのバランスをとることも重要です。
設計が完了したら、インフラの導入に移ります。
具体的には、以下の手順で導入を行います。
導入は、インフラ構築における実践的な工程です。
インフラに必要なソフトウェアもインストールしましょう。
実際にインフラを購入・契約することになるため、あまり適切でない導入をしてしまうと希望どおりのインフラ構築にはつながりません。
よって、前段階である要件定義や設計をしっかりと完了させておく必要があるのです。
要件に沿って設計したインフラの種類や仕様に合わせて、インフラを提供するベンダーやプロバイダーと契約し、購入まで行います。
プラットフォームやサービスを選択したら、設計や仕様に沿って契約内容や料金プランを決定しましょう。
実際に使ってから決めたい場合は、無料プランを用意しているサービスもあるため、一度試してから決定することをおすすめします。
また、メーカーからサーバーを購入し、納品や設置を行うのもこの段階です。
インフラを調達したら、IPアドレスやDNS、ストレージなどの設定を行います。
インフラに必要なソフトウェアやミドルウェアなどのインストールも忘れずに行いましょう。
導入では、ベンダーやサービスプロバイダーとしっかりコミュニケーションをとり、要件および設計に沿った内容の契約を締結することが重要です。
また、各種設定やインストールは、正確かつ慎重に行うことが大切です。
設定やインストールが誤っていたり不適切だったりすると、性能やセキュリティに問題が生じる危険性があるので注意しましょう。
テストは、構築したインフラが設計書どおりに稼働するか、および、構築の目的は達成できているかを確認する作業です。
テストは、以下の手順で実施します。
以下では、上記4つのテストについて詳しく説明します。機器単体でテストしたり、別個の機器を組み合わせてテストしたりするのが基本です。テストで問題が生じた場合は、その都度修正が必要です。
テストでは、最初に個々のハードウェアやソフトウェアの動作や設定を単独で検証する作業を実施します。
機器を単体で起動させ、正常に動作するかどうかを確認していきます。
主な確認項目は「OSは正常に起動するか」「LEDが正常に点灯するか」「ソフトウェアは正常に起動するか」「設計書どおりにシステムが設定されているか」などです。
少しでも問題点が見つかれば、その都度修正します。
全ての確認項目が正常であれば、次のステップに移ります。
結合テストでは、複数の機器を連携させ、一連の動作に不具合がないかどうか確認します。
たとえば、ネットワーク機器とサーバを接続し、それぞれが正常に動作・機能するかを確認するのが結合テストです。
主な確認項目は「接続速度は設計書どおりか」「正常に通信できるか」「設計したサービスは正常に動作してるか」などです。
設計した動作にならない場合、設計書の値は守られているかを細かく確認していきます。
確認項目に異常がないことが確認できれば、次のステップに進めます。
システムテストは、予測されるトラブルを実際に発生させることで、本番と同条件下での動作を確認するテストです。
設計書で設定した冗長構成や、通信停止が発生するかなどを細かく確認していきます。
動作が設計どおりにいかない場合は、再度設計書の内容を確認し、必要であれば設計の修正も行います。
単体テストや結合テストは機器が設計どおりに動作するかを確認するのに対し、システムテストでは処理速度や耐久性などの確認に重点が置かれているのです。
各種テストで不具合や障害など何らかの問題が見つかった場合は、改善策を検討し、修正・改善しなければなりません。
改善の方法としては、ハードウェアやソフトウェアの設定や調整の変更、アップデートなどが挙げられます。不具合が多いとそれだけ改善に時間を取られてしまいます。
したがって、テストでは、検証や評価に適切なツールや方法を選択することが重要です。
テストが不十分な場合、本番の運用でトラブルが発生する危険性が高くなるので気をつけましょう。
テストが全て終了し、動作に問題がないことが確認できたら、実際の運用に移行します。
運用では、以下の業務を24時間365日継続することが大切です。
インフラは決して「構築したら終わり」ではありません。構築後の運用段階でも、不具合やトラブルが生じないよう予防したり、万一に備えて保守点検を怠らないことが大切です。
インフラの運用中は、サーバやネットワークを常時監視し、安定した状態で正常に動作するかをチェックし続けることが大切です。
企業によっては、インフラ構築の担当者と運用担当者が異なる場合があります。その場合は、運用をスムーズに開始できるよう、運用担当者をインフラ構築の段階から参加させたり、要件や設計などの重要事項を共有したりするなどの工夫が必要です。
インフラの性能やセキュリティを維持し、日々安全に使用するために、定期的なメンテナンスが必要不可欠です。
たとえば、ソフトウェアやミドルウェアのアップデートやバックアップ作成などを行います。大切なデータを消失しないよう、しっかり管理することも重要です。
また、メンテナンスは適切なツールや方法を選択して行いましょう。
さらに、情報システムの変化や要件の変更が生じた場合は、柔軟に対応する必要があります。インフラは構築すれば終わりではなく、運用開始後もしっかり保守・管理を続けることが必要です。
ITインフラ構築の手順は要件定義から運用で一巡しますが、運用を開始すれば終わりではありません。
初めは正常に動作していたインフラも、いつどのようなトラブルが生じるかわかりません。
トラブルが発生した場合、それがどのようなものであれすぐに解消する必要があるのです。
どれほどしっかり設計、構築、テストしても、想定外の事態が起こることは十分あり得ます。
そのため、トラブル対応の方法や再発防止策などをマニュアル化し、いつ何が起きても慌てず対応できるよう準備しておきましょう。
インフラ構築では、はじめに要件定義および設計をしっかりと行うことが大切です。
また、以下のポイントにも気を配りましょう。
以下では、上記4つのポイントについて詳しく解説します。
もし、自社のみでインフラ構築をすることが難しい場合は、外注も検討しましょう。
ITインフラを構築するにあたっては、構築によってどのような目的を達成したいのか、何を実現したいのかを明確に洗い出すことが大切です。なぜなら、実現すべき目標が明確に定まっている方が、要件定義の設定や設計書の作成がスムーズになるからです。
また、目的やニーズを明確にすることはシンプルなシステム設計につながります。
シンプルな方が、運用開始後も不具合や障害に見舞われにくいでしょう。
目的とニーズを洗い出す際は、プロジェクトのトップだけで決めるのではなく、従業員に幅広くヒアリングを行うと効果的です。
ここでいう「運用範囲」とは、構築したITインフラの運用を社内のみに制限するのか、それとも社外でも使用可能にするのかを指します。
運用範囲はサーバのスペックやストレージサイズの大小に影響するため、最初の段階で決めておく必要があります。
運用範囲を限定するとセキュリティ面では安全性が高まりますが、利便性が落ちる点はデメリットです。
一方、運用範囲を広げると利便性は向上しますが、セキュリティ面で不安要素が大きくなります。
したがって、運用範囲は自社の企業風土や環境に合わせ、適切な範囲を設定しましょう。
構築したITインフラを安全に使い続けるためには、セキュリティ対策を万全に行うことが必要不可欠です。
外部からのハッキングやウイルス感染を防ぐため、ウイルス対策ソフトウェアの導入やデータの暗号化、常時監視システムの構築などの対策をしましょう。
また、情報漏えいにより企業の機密事項や個人情報などの流出も防がなければなりません。
そのためには、アクセス制限や利用制限を設定する必要があります。
インフラの運用範囲によってセキュリティ対策の内容も変わるので、自社が決めた運用範囲に沿ったセキュリティ対策を怠らないようにしましょう。
インフラ構築を成功させるためには、高度な専門性とスキルを持った人材が必要です。
企業によっては、こうした高度な専門性を持つ人材がいなかったり、インフラ構築に割けるだけの人数がいないこともあるでしょう。
その場合は、外注に頼るのも有益な手段の一つです。
インフラ構築を外注すると、外注先はインフラ構築に精通し、経験豊富な人材を用意してくれます。
自社での構築と外注での構築、双方のメリット・デメリットを比較検討し、自社にとって適切な方法を選択しましょう。
インフラ構築を外注するメリットは、主に以下のとおりです。
以下では、上記3つのメリットについて詳しく解説します。
もし、自社でインフラ構築を成功させる自信がないという場合は、メリットをふまえた上で外注も検討してみて下さい。
また、外注する場合は、複数の委託先から相見積りをとることをおすすめします。
インフラ構築を外注すれば、社内のリソース確保につながる点は大きなメリットです。
外注スタッフに構築を任せれば、自社のスタッフを回す必要がなくなります。
その分、自社のスタッフにはプロパーの業務に専念してもらえるでしょう。
したがって、インフラ構築に割けるだけのスタッフ数がいない、自社の業務だけで手一杯という場合は、外注を利用するのがおすすめです。
外注先のスタッフは、インフラ構築に関する高度に専門的な知識とスキルを有し、経験も豊富です。
したがって、一定の品質をクリアしたインフラ構築を実践してくれます。
また、外注先企業は、自社がどのようなインフラ構築を求め、何を解決したいかについてしっかりヒアリングしてくれるため、自社の要望どおりの要件定義や設計書を作成してくれるのもメリットです。
自社では構築の品質を確保する自信がない場合は、外注を利用するとよいでしょう。
インフラ構築を外注すると、運用後の保守・管理や監視までサポートしてくれるケースが多いです。
インフラ構築では、運用後の日常的な保守や点検が大切です。
また、万が一トラブルが発生した場合はすぐに対応することも求められます。
インフラ構築の外注先では、こうした運用後のフォローも契約に含めてくれるケースが多いので、あらかじめ確認しておきましょう。
予算との兼ね合いもありますが、できれば運用後のフォローまでしてくれる外注先を選ぶのが望ましいです。
ITインフラの構築を外部委託・外注する場合は、依頼先選びに失敗しないことが非常に重要です。委託先の選定に失敗しないためのポイントは、以下のとおりです。
以下では、上記3つのポイントについて解説します。
外部に委託するとなると費用の安さで選びがちですが、その分実績やスキルが伴わない業者を選んでしまっては本末転倒です。
そうならないためにも、上記3つの観点からしっかりと見極めるようにしましょう。
まず、ITインフラ構築の経験や実績が豊富かどうかを確認しましょう。
なぜなら、経験や実績が豊富であればあるほど、自社の希望に沿った形でインフラ構築を実現してくれる可能性が高まるからです。
確認方法としては、まず、公式サイトに過去の実績が載っているかどうかチェックしましょう。企業によっては、実際にその開発会社に依頼したユーザーの体験談が掲載されているので参考にしましょう。
気になる開発会社が見つかったら、過去の実績について問い合わせたり、資料を送ってもらうよう依頼したりして、自社に合うかどうか検討することをおすすめします。
過去の経験や実績が豊富であることが確認できたら、その実績の中から自社と同業種を扱った成功事例はあるか、自社の課題に似た事例を担当したことはあるかを確認しましょう。
たとえば、自社が小売業を運営しておりインフラ構築を外注する場合、委託先がいくら経験や実績が豊富でも、小売業との取引実績はなく全く違う業種の事例しかないと、自社の課題を上手く解決してくれないおそれが生じます。
したがって、過去の経験や実績を見る際は、自社と同業種の事例があるか、自社と似た課題に対する成功事例はあるかをチェックしましょう。
運用・保守まで行ってくれるなどITインフラ構築後も保守・運用などのアフターフォローが充実してくれるかどうか確認しましょう。
インフラ構築自体を外注した場合、委託先は自社のために運用中のトラブル対策マニュアルを用意してくれるのが基本です。
しかし、自社では上手く対応できないケースもあります。また、運用中に予期せぬトラブルが生じるおそれもあります。
そのような場合に、すぐに対応してくれるなどのフォローがしっかりしている開発会社を選びましょう。
また、普段から構築後のインフラに不具合が生じないよう保守・管理してくれるかどうかも重要な見極めポイントです。
株式会社ICでは、各種ITインフラ構築や運用、保守管理、受託開発などIT分野で幅広いサポートを行っています。
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自社の要望に沿い、業務効率化や収益向上を叶えるインフラ構築のためには、手順の一つひとつをしっかり完了させることが必要です。
そのためにはインフラ構築について専門的な知識とスキルを持った人材が必須と言えます。
しかし、企業によっては、IT人材やノウハウの不足から、インフラ構築が思うように行かない場合もあるでしょう。
もし、ITに精通したスタッフがいない、あるいは不足しているとお悩みの場合は、株式会社ICにご相談下さい。
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