インフラ診断とは?目的・内容・流れ・料金相場までわかりやすく解説

インフラ診断とは?目的・内容・流れ・料金相場までわかりやすく解説

システムの動作が不安定になったり、通信の遅延やサーバ障害が発生したりすると、業務全体に大きな影響を及ぼします。さらに近年では、不正アクセスや情報漏えいといったセキュリティリスクも増加しており、企業のITインフラにはこれまで以上に「安全性」と「安定性」が求められています。

こうした中で注目されているのが「インフラ診断」です。インフラ診断とは、ネットワークやサーバ環境などの基盤全体を定期的に点検・分析し、潜在的な問題を早期に発見・改善する取り組みのことです。

本記事では、インフラ診断の基本的な内容から目的、実施の流れ、費用の目安までを解説します。自社システムの不調やセキュリティ面に不安を感じている情シス担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

 

 

インフラ診断とは

インフラ診断とは、企業のIT基盤を構成するネットワーク・サーバ・ストレージ・セキュリティ設定などを総合的に分析し、問題点や改善点を明らかにする取り組みです。システム全体の健全性を客観的に把握し、将来的なトラブルを未然に防ぐことを目的としています。

たとえば、ネットワークの遅延やサーバのリソース不足といった性能面の課題だけでなく、セキュリティ設定の不備や運用フローの属人化といった運用上のリスクも診断対象に含まれます。診断結果を基に、最適な構成や運用体制を再構築することで、安定したIT環境を維持できる点が大きな特徴です。

インフラ点検・脆弱性診断との違い

インフラ診断と混同されやすいのが「インフラ点検」や「脆弱性診断」です。これらは似た言葉ですが、目的や範囲に明確な違いがあります。

インフラ点検は、ハードウェアやネットワーク機器の状態確認など、主に“現状把握”を目的とした作業です。一方、脆弱性診断はシステムやアプリケーションのセキュリティ面に特化し、外部からの攻撃や不正アクセスのリスクを検出することを目的としています。

それに対し、インフラ診断はこれらを包括的に行うアプローチです。セキュリティ面だけでなく、パフォーマンスや運用体制、バックアップの仕組みまでを総合的に評価し、最適なIT基盤づくりにつなげる点でより広範な概念といえます。

インフラ診断が注目される背景

企業のIT環境はここ数年で大きく変化しており、業務のデジタル化が進む一方で、システム運用に関する課題も増えています。特にセキュリティリスクの拡大や、システム構成の複雑化、そして運用負担の増大といった問題が深刻化しており、これらを解決する手段として「インフラ診断」が注目されています。

不正アクセスやサイバー攻撃の増加

近年、標的型攻撃やランサムウェアなど、企業の情報資産を狙ったサイバー攻撃は年々高度化・巧妙化しています。攻撃の対象は大企業に限らず、中小企業や自治体などにも広がっており、ネットワーク経由での不正侵入や、クラウドサービスを経由した情報漏えいも後を絶ちません。

こうした背景から、セキュリティ対策を講じるだけでなく、自社のインフラ環境に潜む脆弱性を定期的に可視化し、リスクを未然に防ぐ「予防型のセキュリティ運用」が求められています。インフラ診断は、こうした脅威への早期対応を可能にする重要な取り組みといえます。

クラウド・IoT活用によるシステムの複雑化

クラウドサービスの普及やIoTデバイスの導入により、企業のシステム構成はかつてないほど多層的かつ複雑になっています。オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッド環境や、社外拠点・リモートワーク環境との接続が当たり前になったことで、通信経路の管理やデータのセキュリティ確保が難しくなっています。

このような環境では、特定の機器や設定に問題があった場合でも原因の特定が難しく、障害発生時の対応が遅れるリスクがあります。インフラ診断を実施することで、構成の全体像を整理し、問題箇所を的確に把握できるようになります。

老朽化・運用負担の可視化ニーズの高まり

ITインフラは長期間にわたり運用されることが多く、気づかないうちにハードウェアの老朽化や設定の陳腐化が進行しているケースも少なくありません。さらに、担当者の異動や属人化によって運用ルールが曖昧になり、「誰も全体を把握できていない」状態に陥ることもあります。

こうしたリスクを防ぐために、定期的なインフラ診断でシステムの稼働状況や設定内容、運用体制を可視化する取り組みが求められています。診断結果をもとに改善を重ねることで、運用負担を軽減し、長期的な安定稼働を実現することができます。

インフラ診断の目的

インフラ診断の実施目的は、単に現状を点検することではなく、将来のトラブルやリスクを未然に防ぎ、より安定したシステム運用を実現することにあります。セキュリティ・パフォーマンス・運用体制といった多角的な視点から現状を分析し、企業のIT基盤を継続的に改善していくことが主な狙いです。

セキュリティリスクの早期発見

インフラ診断の最大の目的の一つが、潜在的なセキュリティリスクを早期に発見することです。

ファイアウォールやルーターなどの設定ミス、不要なポートの開放、古いOSやミドルウェアの放置などは、サイバー攻撃の標的になりやすいポイントです。定期的に診断を行うことで、こうした脆弱性を洗い出し、適切な修正を加えることができます。

また、ゼロデイ攻撃や内部不正など、日々変化する脅威に対応するためには「一度の対策」ではなく「継続的な診断と改善」が不可欠です。

障害や性能低下の原因を特定

ネットワークの遅延やサーバの負荷増大、通信断など、業務を妨げる障害の多くは、設定の不整合やリソース不足など、インフラ内部に起因するものです。インフラ診断では、ログや通信経路の分析を通して、問題の発生源を特定できます。

これにより、単なる「応急処置」にとどまらず、根本原因からの解決が可能になります。たとえば、ボトルネックとなる機器の交換やネットワーク設計の見直しなど、再発防止策を講じることで、システム全体のパフォーマンスを安定化させられます。

最適な運用・保守計画の立案

診断結果をもとに、企業の環境に合った運用・保守体制を整えることも重要な目的です。

ハードウェアの更新時期やライセンスの有効期限、バックアップの頻度などを整理することで、将来的なリスクを予測しやすくなります。さらに、属人化していた運用ルールや手順を標準化することで、担当者が変わっても安定した運用を継続できます。

インフラ診断は、単なる点検ではなく、「持続的な改善サイクル」を構築するための出発点といえるでしょう。

インフラ診断の主な内容

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インフラ診断では、企業のIT基盤を構成する各要素を多角的に分析します。単一のサーバやネットワーク機器だけでなく、全体の構成や運用フローを含めてチェックすることで、潜在的なリスクやボトルネックを明らかにします。ここでは、主な診断項目を紹介します。

ネットワーク構成・通信経路の確認

ネットワーク構成や通信経路の診断では、各拠点・サーバ・クラウド間の接続状況を確認し、適切なルーティングや負荷分散が行われているかをチェックします。通信の遅延やパケットロスの発生状況、ファイアウォールやルーターの設定内容なども確認対象です。

こうした分析により、帯域の不足や設定の不整合、冗長化構成の不備といった問題を早期に把握できます。結果として、ネットワーク障害や通信トラブルの予防につながります。

サーバ・ストレージ環境の稼働状況診断

サーバやストレージの診断では、CPU・メモリ・ディスク容量などの使用率を分析し、リソースの過不足や処理能力の限界を可視化します。加えて、仮想環境やクラウドサーバを利用している場合は、リソース割り当てやスケール設定の適正も確認します。

稼働率が高すぎるサーバは故障やパフォーマンス低下を招くリスクがあり、逆に余剰リソースが多い場合はコストの無駄が発生します。インフラ診断によって最適なリソースバランスを見直すことが可能です。

セキュリティ設定・脆弱性診断

セキュリティ設定や脆弱性の確認は、インフラ診断の中でも特に重要な項目です。OSやミドルウェアのバージョン管理、パッチ適用状況、アクセス権限の設定、不要ポートの開放有無などを細かく点検します。

加えて、ネットワークの外部公開範囲や通信暗号化の有無、認証方式などを確認することで、不正アクセスや情報漏えいのリスクを最小限に抑えられます。診断後には、具体的なセキュリティ強化策の提案が行われるのが一般的です。

運用手順・バックアップ体制の確認

システムトラブルが発生した際の対応フローや、バックアップ・リストアの体制を確認することも欠かせません。障害発生時に迅速に復旧できる仕組みが整っているか、定期的なバックアップが実施されているかを点検します。

また、運用マニュアルや引き継ぎ体制が整備されていない場合、担当者の異動や退職によって業務が滞るリスクがあります。インフラ診断では、こうした属人化リスクも洗い出し、より標準化された運用体制の構築を支援します。

インフラ診断の流れ

インフラ診断は、システム全体の課題を明確にするために、計画から分析・提案までの一連のプロセスを体系的に進めていきます。ここでは、一般的な診断の流れを4つのステップに分けて紹介します。

ヒアリング・目的の明確化

まず最初に行うのが、現状把握と目的の明確化です。システム運用担当者や情シス部門へのヒアリングを通じて、「通信が遅い」「障害が頻発している」「セキュリティに不安がある」などの課題を整理します。

この段階で診断の目的を明確にしておくことで、後の分析方針がぶれず、優先順位をつけた改善提案につなげることができます。また、将来的な運用方針(クラウド移行、拠点増設など)がある場合も、あらかじめ共有しておくとより実践的な診断が可能です。

対象範囲の設定

次に、診断対象となるシステムや機器の範囲を定めます。ネットワーク機器、サーバ、クラウド環境、VPN、セキュリティ機器など、どこまでを対象とするかを明確にすることが重要です。

企業によっては全社ネットワークを対象とする場合もあれば、特定拠点や業務システムのみに絞って実施するケースもあります。範囲を適切に設定することで、限られた期間やコストの中でも効果的な診断を行うことができます。

ツール・手動による調査・分析

診断の中心となる工程では、専用ツールやスクリプトを活用して通信ログやリソース使用状況を収集・分析します。ネットワーク監視ツールや脆弱性スキャナを用いて可視化を行い、設定不備や性能低下の要因を洗い出します。

また、ツールによる自動検出だけでなく、エンジニアが手動で設定ファイルやログを確認することもあります。自動化では検出しにくい構成ミスや運用上の問題を見逃さないための重要な工程です。

報告書・改善提案の提出

最後に、診断結果をもとに報告書を作成し、課題と改善策をまとめて提示します。報告書には、発見された問題点の内容、影響範囲、推奨される改善方針、優先度などが具体的に記載されます。

単なる結果報告にとどまらず、実行可能な改善提案や再発防止策を含めることで、運用チームがすぐにアクションを取れるよう支援します。多くの企業では、この改善提案をもとに中長期的なIT戦略や保守計画を見直し、持続的なインフラ改善へとつなげています。

インフラ診断にかかる費用の目安

インフラ診断の費用は、診断の目的や対象範囲、環境の規模によって大きく異なります。一般的には、小規模なネットワーク環境の簡易診断で数十万円程度、大規模システム全体を対象とした詳細診断では100万円〜300万円程度が目安です。

たとえば、ルーターやスイッチなど限られた機器構成を対象とする場合は、20〜50万円程度で実施できるケースもあります。一方で、クラウド・オンプレミスを併用したハイブリッド環境や、複数拠点を含むネットワーク全体の診断となると、調査項目が増えるため費用も高くなります。

費用を抑えるポイントとしては、まず自社の課題や目的を明確にし、必要な範囲に絞って依頼することが挙げられます。たとえば「セキュリティ対策の現状を知りたい」「クラウド移行を見据えて構成を見直したい」など、目的に応じた診断プランを選定することで、コストを最適化できます。

なお、初回診断を無料で提供するベンダーや、定期的な診断を年間契約で割安に提供するサービスもあります。自社の環境規模とリスクに合わせて、複数社の見積もりを比較検討することが重要です。

インフラ診断チェックシートで自社の課題を可視化しよう

インフラ診断の重要性を理解したら、まずは自社環境の現状を把握することが大切です。ICでは、ネットワーク・サーバ・セキュリティなどの観点から、現状のリスクや改善ポイントを簡単に確認できる「インフラ診断チェックシート」をご用意しています。

数分のチェックで、自社のどこに課題が潜んでいるのかが明確になります。今後の安定運用やセキュリティ強化のためにも、ぜひ一度お試しください。

情シス・Web担当者のためのインフラ診断ページ

まとめ

ICでは、ネットワーク・サーバ・セキュリティなど、企業のITインフラ全体を総合的に診断し、最適な改善策をご提案しています。

現状の課題を可視化するだけでなく、将来のシステム拡張やクラウド移行を見据えた運用設計までトータルに支援。経験豊富なエンジニアが、御社のシステムを“安全で止まらない”環境へ導きます。