運送・物流業界では、人手不足や労働時間規制への対応、小口発送の増加などの課題を抱えています。
これらの課題を解決し、業務の効率化とサービス品質の向上を実現するため、IT化が注目されています。IT化の実現には、実績豊富なシステム開発会社への依頼がおすすめです。
本記事では、運送・物流業がIT化するメリットや実際に活用されているシステムについて解説します。
運送・物流業が抱える課題
運送・物流業が抱える課題は、下記のようなものが挙げられます。
- 慢性的な人手不足
- 労働時間の長さ
- 労働時間の規制への対応
- 小口発送増加・積載率の減少
慢性的な人手不足
運送・物流業では、慢性的な人手不足が深刻な課題の一つです。
政府が2022年に公表した「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」によると、道路貨物運送業の年齢構成は、全産業の平均と比べて中高年の比率が高く、若年層の比率が低い傾向にあることが明らかになっています。
特に40歳から55歳までの年齢層の割合が他の産業と比較して多く、この年齢層のベテラン社員が定年退職を迎えた後は、さらなる人手不足が懸念されています。
労働時間の長さ
政府が2022年に公表した「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」によると、運送・物流業の労働時間は、他の産業の平均と比べて2割ほど長いことが明らかになっています。
長時間労働が常態化することで、下記のような問題が生じる可能性があります。
影響
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内容
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健康への悪影響
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- 心身の健康を損なう恐れがある
- 疲労の蓄積により事故やミスのリスクが高まる
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ワークライフバランスの崩壊
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- 家族との時間や趣味に使える時間が減少する
- 仕事へのモチベーションや満足度の低下に
つながる
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人材確保の困難さ
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- 長時間労働のイメージが定着すると若い世代の就職希望者が減少する
- 人手不足がさらに深刻化する恐れがある
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労働時間の問題は、今後の運送・物流業が発展していく上で避けては通れない課題です。
労働時間の規制への対応
2024年4月からドライバーの労働環境をよくすることを目的として、トラックドライバーの時間外労働の上限が年間960時間に制限されました。
この制限により、運送・物流業界の業務が滞ってしまうなどの影響が懸念されており、「2024年問題」と呼ばれています。
国土交通省 東北運輸局が公表した「「2024年問題」解決に向けて」によると、具体的な対策を講じなければ、2024年に運輸能力がおよそ14%(4億t相当)不足する可能性があるとされています。
そのため、運送・物流業では、2024年問題への対応を早急に進めなければいけません。
小口発送増加・積載率の減少
経済産業省が公表した「令和3年度 電子商取引に関する市場調査報告書」によると、2021年のBtoC-EC市場規模は19.3兆円で、対前年比で10.3%増加しました。
この傾向は今後も続くと予想され、小口発送の増加に拍車がかかると考えられます。
小口発送の増加に伴い、貨物一件あたりの貨物量が減少し、貨物自動車の積載率が低水準で推移しています。積載率の低下は、運送効率の悪化を意味し、需要に供給が追いつかない可能性が懸念されています。
運送・物流業界は、これらの課題を克服し、将来の需要に対応するため、抜本的な改革が必要です。
運送・物流業がIT化するメリット
運送・物流業がIT化するメリットは、下記の通りです。
- 人材不足の解消が期待できる
- 業務の属人化を解消できる
- 輸送業務の最適化
人材不足の解消が期待できる
運送・物流業界では、慢性的な人手不足や労働人口の高齢化が深刻な課題となっています。この状況を打開するためには、IT活用による業務の自動化・効率化が効果的です。
例えば、倉庫内のピッキング作業や荷物の仕分け作業などをロボットやシステムに任せることで、人材不足の解消と業務効率の向上が期待できます。
また、輸配送管理システムを導入すれば、最適なルートや配送順序を自動で計画できるため、ドライバーの負担を軽減しつつ、効率的な配送が可能となるでしょう。
IT化によって業務を自動化・効率化することで、限られた人材でも高い生産性を維持できるようになり、人材不足の解消につながります。
業務の属人化を解消できる
ベテラン社員の経験と勘に頼る属人的な業務が多いと、担当者のスキルや経験に左右されやすく、業務の標準化や効率化が難しくなります。
IT化によって業務の標準化やシステム化が進めば、下記のような効果が期待できます。
- 作業ミスや品質のばらつきを防止できる
- だれでも同じ品質の業務遂行が可能になり、属人的なスキルに依存しなくなる
- 担当者の急な欠勤などの際にも、他の社員が代替対応できる
IT化は業務の属人化を解消し、業務の効率化と品質向上を実現できます。
顧客満足度が向上する
運送・物流業がIT化を進めることで、顧客満足度の向上が期待できます。
例えば、温度管理が必要な食品や医薬品などの輸送では、システムを導入することで、輸送中の温度変化を常時モニタリングし、リアルタイムで状況を把握できます。
万が一、温度の異変や過度な衝撃が発生した場合には、早期に検知して適切な対処ができ、品質の劣化を防げるでしょう。
また、トレーサビリティシステムを導入することで、荷物の位置情報や状態をリアルタイムで把握でき、顧客への正確な情報提供や問い合わせ対応がスムーズになります。
このように、IT化は顧客への情報提供の透明性を高め、顧客満足度の向上につながります。
運送・物流業のIT化に活用できるシステム
ここでは、運送・物流業のIT化に活用できるシステムをご紹介します。
今回ご紹介するシステムは、下記の通りです。
- ピッキングシステム
- 輸配送管理システム
- トレーサビリティシステム
- 荷物運搬ロボット
- 倉庫管理システム
- 倉庫制御システム
- ドローン配送
ピッキングシステム
ピッキングシステムは、倉庫内のピッキング作業を効率化し、正確性を高めるシステムです。
デジタル表示機やスマートデバイスを活用することで、出荷ミスや仕分けの間違いを大幅に削減できます。
例えば、リアルタイムでピッキングリストを更新し、作業者に最適な動線を指示することで、作業効率が向上します。また、バーコードやRFIDを用いて商品を管理することで、正確なピッキングが可能となり、出荷品質の向上にもつながるでしょう。
輸配送管理システム
輸配送管理システムは、物流センターや物流倉庫から出荷された後の輸配送を効率的に管理するためのシステムです。
主な機能としては、「配車管理」「貨物管理」「運行管理」などの支援機能があります。
機能
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内容
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配車管理機能
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- 輸送オーダーに基づく最適な車両や人員の割り当て
- 貨物情報を元に積載量の最大化と配送ルートの最適化
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貨物管理機能
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- 荷物の位置情報や状態のリアルタイム把握
- バーコードやRFIDタグを活用した荷物の追跡
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運行管理機能
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- GPSを活用したトラックの位置情報のリアルタイム取得
- 配送状況の可視化
- 運転手の運転時間や休憩時間の適切な管理
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輸配送管理システムを導入すれば、効率的な配送計画の立案や配送トラブルへの迅速な対応が可能となります。
トレーサビリティシステム
トレーサビリティシステムは、商品の生産から物流までの履歴を追跡できるシステムです。
このシステムは生産流通情報把握システムとも呼ばれ、製品の起源や移動経路、加工過程などを特定できます。
具体的には、いつ、どこで、だれによって製品が作られたのかを記録し、入庫、保管、出庫といった物流プロセスの履歴を管理します。これにより、問題が発生した際に迅速に原因を特定し、適切な対応が取れるでしょう。
また、トレーサビリティシステムを導入することで、顧客からの問い合わせに対して、正確な情報を提供できます。製品の現在地や到着予定日時など、リアルタイムな情報を顧客に伝えられるため、顧客満足度の向上につながるでしょう。
荷物運搬ロボット
荷物運搬ロボットとは、自律走行技術を活用して倉庫内を自走し、荷物の運搬作業を自動で行えるロボットです。
近年、物流倉庫などでの活用が急速に進んでおり、人手不足の解消策として注目を集めています。特に注目されているのが、AMR(自律移動ロボット)と呼ばれるタイプの荷物運搬ロボットです。
AMRは、搭載されたセンサーやカメラを使って周囲の環境を認識し、障害物を自動で回避しながら走行できます。
また、AI技術を活用して最適な運搬ルートを自動で判断し、効率的に荷物を運べるものも登場しています。荷物運搬ロボットは、単に人手不足を解消するだけでなく、24時間休みなく稼働できるため、大幅な生産性の向上も見込めます。
倉庫管理システム
倉庫管理システムは、倉庫における商品の入出荷から在庫管理までを一元的に管理するためのシステムです。
このシステムを導入することで、リアルタイムな在庫状況の把握、出荷時のピッキングリストの自動作成など、効率的な倉庫運営が可能です。
従来、これらの業務は人手に頼っていたため、数量の入力ミスや誤出荷などのヒューマンエラーが発生しやすい状況でした。しかし、倉庫管理システムを活用することで、スタッフの手作業を大幅に削減でき、ミスの発生を防止できます。
また、正確な在庫情報を常に把握できるため、適正な在庫量の維持や、欠品リスクの低減にもつながります。
倉庫制御システム
倉庫制御システムは、マテハン機器の制御に特化したシステムです。
マテハンとは「マテリアルハンドリング」の略称で、コンベアやソーターなど、物流業務の効率化・自動化に用いる機械の総称です。
倉庫制御システムは、コンベアやソーターなど各種マテハン機器やIoT機器をリアルタイムに統合制御し、倉庫の自動化・効率化に役立ちます。
例えば、入荷された商品を自動的に仕分けし、適切な保管場所に運ぶなどが考えられます。倉庫制御システムは、大規模な物流センターや高度に自動化された物流倉庫など、マテハン機器が多く導入されている現場に適したシステムです。
ドローン配送
ドローン配送とは、小型の無人飛行機を使って、倉庫にある商品を消費者まで配送するサービスです。2022年にはAmazonでドローン配送サービス「Prime Air」の提供が開始され、日本郵便などでも配送ドローンの開発が進められています。
ドローン配送を活用することで、交通渋滞の影響を受けずに短時間で配送できたり、人件費や車両コストを削減できたりします。しかし、安全性の確保やプライバシー保護、騒音問題など、克服すべき課題も残されています。
今後、ドローン技術のさらなる進化や関連法規の整備が進めば、物流・運送業の課題解決に大きく貢献すると期待されています。
運送・物流業のIT化にはシステム開発会社への依頼がおすすめ
運送・物流業のIT化を進める際は、自社だけで取り組むのではなく、システム開発会社への依頼がおすすめです。
運送・物流業は、会社規模や扱っている商品によって業務内容が大きく異なるため、IT化の方法も一様ではありません。
例えば、大手の運送会社であれば、全国にある拠点の輸配送業務を効率化するため、輸配送管理システムの導入が効果的でしょう。
一方、中小規模の企業では、倉庫内作業の効率化を目的としたピッキングシステムや、倉庫管理システムの導入が優先となるかもしれません。このように、自社にとって最適なIT化を進めるには、豊富な知識と経験が必要です。
そのため、経験豊富なITコンサルタントとエンジニアが在籍しているシステム開発会社への依頼がおすすめです。ITコンサルタントであれば、自社の業務内容や課題を的確に分析し、最適なIT化の方法を提案してくれるでしょう。
また、システム開発や導入、運用まで対応できる会社であれば、IT化をワンストップでサポートしてくれるため、安心して任せられます。
ITコンサルタントについては、下記の記事で詳しく解説しています。
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引用元:システム開発のIC
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まとめ
本記事では、運送・物流業がIT化するメリットや実際に活用されているシステムについて解説しました。
運送・物流業界では、人手不足や長時間労働など様々な課題を抱えています。これらの課題を解決するためには、IT化による業務の自動化や効率化が有効です。IT化が実現すれば、人材不足や業務の属人化の解消が期待できます。
ただし、自社に合ったIT化の方法を見極めるには専門知識が必要なため、経験豊富なシステム開発会社への依頼がおすすめです。
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