近年、多くの企業や自治体が、ペーパーレス化によって業務効率化やコスト削減を実現しています。しかし、「具体的にどのような方法で進めているのか」「ペーパーレス化による効果がどの程度あるのか」について疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ペーパーレス化の成功事例を通して、具体的な進め方やその効果を詳しく解説します。自社のペーパーレス化を検討する際の参考にしてください。
企業のペーパーレス化が必要な理由
ペーパーレス化は、業務効率化やコスト削減だけでなく、環境保護やセキュリティ向上にもつながる重要な取り組みです。紙の利用を減らすことで、多くの企業が課題として抱える無駄な作業やコストの削減が期待できます。本章では、ペーパーレス化がなぜ必要なのか、その理由について詳しく解説します。
また、ペーパーレス化の具体的なメリットや背景について、詳しくは以下のページをご覧ください。
業務効率の向上
ペーパーレス化を進めることで、業務効率が大幅に向上します。なぜなら、
デジタル化された書類は、ファイル名やキーワードで瞬時に検索できるため、従来の紙の書類を探す手間が大幅に削減される
からです。紙の資料であれば数時間かかる探し物も、デジタル書類ならわずか数秒で見つけることが可能です。
また、デジタル化により情報の共有や伝達もスムーズに行うことができます。特にリモートワークの環境では、ペーパーレス化が大きな効果を発揮するでしょう。必要な情報にどこからでもアクセスできるため、オフィスにいない状況でも作業が滞ることがなくなります。こうした利便性は、作業スピードの向上だけでなく、チーム全体の連携強化にもつながるでしょう。
コスト削減
ペーパーレス化を進めることで、印刷用紙やインク、プリンターのメンテナンス、郵送費といった直接的な経費を大幅に削減できます。特に、 契約書や請求書など紙ベースで処理されていた業務をデジタル化することで、年間で数百万円から数千万円のコスト削減を実現した事例もあります。
さらに、紙の管理にかかる作業時間も削減できるため、人件費の節約にもつながります。資料のファイリングや整理に使っていた時間を他の業務に充てることで、社員の生産性向上も期待できるでしょう。ペーパーレス化は、単なる経費削減にとどまらず、業務全体の効率化とリソースの有効活用を可能にします。
セキュリティの向上
ペーパーレス化は、企業のセキュリティ強化にも大きく貢献します。紙の書類は盗難や紛失のリスクが常につきまとい、情報漏えいの原因の一つです。一方で、デジタル文書はアクセス制限や暗号化といったセキュリティ対策を施すことで、外部からの不正アクセスや情報漏えいを防ぐことが可能です。
また、デジタル化されたデータは、サーバーやクラウド上にバックアップを取ることで、災害や不慮の事故が発生した場合でも迅速に復旧できます。そのため、重要な情報の喪失リスクを最小限に抑えられます。ペーパーレス化は、情報を安全に管理し、企業データを守るための有効な手段と言えるでしょう。
企業や自治体のペーパーレス化成功事例6選
ペーパーレス化を成功させた企業や自治体は、どのような取り組みを行い、どんな効果を得たのでしょうか?具体的な事例を知ることで、自社や組織のペーパーレス化に向けた参考にすることができます。本章では、ペーパーレス化によって業務効率化やコスト削減を実現した成功事例を6つご紹介します。これらの事例を通じて、ペーパーレス化の可能性や導入のヒントを見つけてみてください。
コニカミノルタビズコム株式会社のペーパーレス化事例
コニカミノルタビズコム株式会社は、情報管理やITシステムソリューションを提供する企業として、自社でもペーパーレス化を積極的に推進しました。
新しい働き方の提案に向けた社内調査の結果、見えてきたいくつかの課題を解決するため、フリーアドレスの導入とペーパーストックレスに取り組むことを決定しています。
同社では、コンプライアンスや内部統制の観点から、業務文書の保存規定が整備されていたため、それに伴って保存する紙文書の量が増加していました。この問題に対処するため、保存期間が定められている文書のうち、電子データで保存可能なものをすべてデジタル化する施策を実施しています。
デジタル化により、106名が勤務する1フロアの紙文書を電子化し、結果的に東京タワー1本分に相当する高さの書類を削減することに成功しました。
ペーパーレス化によって確保されたスペースは、フリーアドレスエリアや会議スペースとして活用されており、社員間のコミュニケーションが活発化し、新たなアイデアの創出が促進されるといった効果も得られました。同社の取り組みは、業務効率化と働きやすい職場環境の両立を実現した好例と言えるでしょう。
参考:(巻末)「10のワークプレイス改革の取組」(詳細版)
有限会社青空のペーパーレス化事例
有限会社青空は、神奈川県横浜市で訪問介護や居宅介護を展開する企業です。同社では、月末に紙ベースの報告書を集めてサービス提供実績をチェックし、介護保険請求や給与計算を行っていました。しかし、この作業に多くの時間がかかり、担当者はお正月やゴールデンウィークでも月初の数日間は休めない状況が続いていたことから、負担を軽減するため、ペーパーレス化への取り組みを決定しています。
同社が導入したのは、訪問介護業務に特化した介護保険業務システムです。このシステムにより、利用者宅に設置したICタグをスマートフォンでタッチするだけで、出退勤時刻を自動で登録できるようになりました。さらに、サービス内容をスマートフォン画面から入力して送信すれば、紙の報告書は不要になります。また、介護保険業務システムとのデータ連携により、計画の取り込みや実績のアップロードが簡単に行えるようになりました。
日々のデータ確認が容易になったことで、月末の作業が大幅に削減され、記録用紙の分類や保管業務も不要となりました。
その結果、事務処理の負担が軽減されただけでなく、現場業務やスタッフ指導に注力する時間が増え、休暇も取りやすくなったのです。この取り組みは、介護業界におけるペーパーレス化の成功例として注目されています。
参考:有限会社 青空のペーパーレス化事例
合同会社イネイト保育会あすか保育園のペーパーレス化事例
合同会社イネイト保育会あすか保育園は、京都で認可小規模保育事業を運営する企業です。保育園の開園準備を進める中で、運営方法や費用面で効率的な仕組み作りが必要だと考えていました。保育業務では従来、保護者との連絡ノートや登園降園記録、午睡チェックなどを紙で管理するのが一般的でしたが、同社はITツールを活用してペーパーレス化し、業務効率化と子どもと向き合う時間の確保を目指しました。
導入したITツールには、以下のような特徴があります。
-
保護者との連絡や健康記録、日誌作成をシステム上で完結
-
登園降園の打刻や保育料計算などの事務処理をデジタル化
-
園児ごとのマイページを作成し、保護者がスマートフォンから遅刻・欠席連絡やお知らせ確認、登園降園記録の確認、写真購入などを行える
このシステム導入により、園児の登園・降園時間をタブレットで正確に記録できるようになり、従来の紙作業から解放されています。
また、保護者とのコミュニケーションもアプリ上で迅速かつ簡単に行えるようになり、連絡事項や給食写真の共有といったサービスの質も向上した成功事例です。
参考:合同会社イネイト保育会 あすか保育園のペーパーレス化事例
長野県長野市のペーパーレス化事例
長野県長野市では、会議資料の準備に多大な手間とコストがかかっていることが課題でした。紙の資料を印刷して配付するために多くの時間を要し、会議が終了すると資料はほとんど再利用されず、最終的には廃棄されてしまいます。さらに、保管スペースの確保が必要で、デスク周辺に資料が散乱し、執務環境が悪化していました。
この状況を改善するため、市ではペーパーレス会議システムを試行的に導入しました。このシステムでは、発言者のパソコン画面を操作すると同じ画面が各出席者の席に設置されたパソコンに表示される仕組みを採用しています。紙資料を配付する必要がなくなり、会議準備が大幅に効率化されました。
この取り組みにより、年間約14万枚の紙と約300万円の印刷費用を削減することに成功し、1回の会議準備時間は、ペーパーレス化以前の約2時間から、平均20分以内に短縮されました。
長野市の事例は、自治体におけるペーパーレス化の成功例として注目され、他の自治体でも参考にされています。
参考:(巻末)「10のワークプレイス改革の取組」(詳細版)
茨城県庁のペーパーレス化事例
茨城県庁では、決算事務において電子決裁システムを導入していたものの、紙による決裁が一部で残っている状況が課題でした。一部の書類では、紙の原本確認が必要とされていたり、紙ベースでの決裁が認められていたりしていたため、完全なペーパーレス化には至っていなかったのです。
この状況を改善し、行政文書の改ざん防止や効率的な管理を実現するため、茨城県庁は平成30年4月に「電子決裁率100%」を目標にペーパーレス化の取り組みを本格的にスタートしました。
各部局で業務内容に応じた電子決裁のルールを整備し、電子化を徹底的に推進した結果、わずか4ヶ月で電子決裁率は99.1%に達し、目標である100%にほぼ到達したのです。
この取り組みにより、業務効率が大幅に向上し、行政運営の透明性と信頼性も高まりました。
茨城県庁の事例は、自治体における電子化の成功例として注目されており、他の自治体がペーパーレス化を進める上での参考となる取り組みです。
参考:電子決裁率ほぼ100%を4ヶ月で達成/茨城県
神奈川県庁のペーパーレス化事例
神奈川県庁では、多様な働き方への対応を進めるため、平成30年4月に電子決裁機能を備えた文書システムを導入し、全庁的なペーパーレス化を推進しました。
特に、知事を含む幹部職員が率先して電子決裁を活用することで、庁内全体の電子化が加速しています。具体的には、月に20~30件ほど発生する知事決裁のほぼすべてを電子決裁に変更するなど、積極的に取り組んできました。
しかし、許認可事務では、紙資料を含む大量の申請書類をすべてスキャンしてデータ化するのが困難な状況もありました。この課題に対応するため、紙資料と電子決裁を組み合わせた「併用決裁」という方式を採用し、一部の書類に紙媒体が含まれていても電子決裁を可能にする仕組みを導入することで、ペーパーレス化の範囲を広げています。
この取り組みの結果、2022年(令和4年)度には電子決裁率が94%に達し、本庁所属に限れば99%を超える高い割合を実現しました。神奈川県庁の事例は、行政機関が現実的な方法でペーパーレス化を進め、効率化と業務のデジタル化を両立させた成功事例です。
参考:自治体事例集
企業のペーパーレス化を進める方法
成功事例を参考に、自社でもペーパーレス化を進めたいと考える企業担当者の方も多いのではないでしょうか。ただし、ペーパーレス化を効果的に進めるためには、適切な手順や計画が欠かせません。本章では、企業がスムーズにペーパーレス化を実現するための具体的な方法について解説します。
1.どの業務にどれだけの紙を使っているのか洗い出す
ペーパーレス化を進めるための第一歩は、自社の業務でどれだけの紙が使用されているのかを具体的に把握することです。意識していなかった場面でも、実は紙が多く使われているケースは少なくありません。
会議資料や報告書、稟議書などの社内文書から、契約書や請求書といった対外的な文書まで、紙が使用される用途や分量を詳細に洗い出してみましょう。このプロセスにより、どの業務が紙の削減に向いているか、どの部分にデジタル化が必要かを明確にすることができます。
紙の使用状況を可視化することで、無駄な業務プロセスの削減や、ペーパーレス化による効果を具体的に見積もることが可能になり、計画の優先順位をつけやすくなります。
2.ペーパーレス化ができそうなものを仕分ける
紙の使用状況を洗い出したあとは、ペーパーレス化が可能な文書と困難な文書を仕分けていきます。この作業を通じて、デジタル化を優先的に進めるべき対象が明確になります。ただし、文書の種類によっては保存期間や保存方法が法律で定められている場合があるため、ペーパーレス化が法律の要件を満たさないリスクを避けるための確認が必要です。
また、現場でペーパーレス化に反対の声が上がった場合、その理由を慎重に見極めることも大切です。「現在の業務の進め方が変わることへの抵抗感」から来る意見なのか、それとも「業務遂行が根本的に困難になる」といった実務上の問題から来る意見なのかを正確に判断しましょう。このプロセスを通じて、
適切な対応や説得が可能になり、よりスムーズにペーパーレス化を進めることができます。
3.文書に適したシステム・ツールを導入する
ペーパーレス化を成功させるためには、対象となる文書に適したツールやシステムを選んで導入することが重要です。それぞれの文書の特性や用途に応じて最適なシステムを選ぶことで、業務の効率化と管理の簡便化が実現します。
たとえば、名刺管理には名刺をスキャンしてオンラインで一元管理できる名刺管理ソフトが便利です。
顧客情報や面談記録を管理するには、CRM(顧客管理システム)が有効で、営業活動の効率化に役立ちます。
契約書や請求書などの契約業務には、電子契約システムを導入することで、オンラインで手続きを完結させることが可能になります。また、大量の文書を効率的に管理するには、オンライン文書管理サービスを利用し、文書をクラウド上で安全に保存・共有する方法が適しています。
このように、適切なツールを活用することで業務の流れがスムーズになり、ペーパーレス化が定着しやすくなります。
目的に合ったシステムを選ぶ際には、現場の意見も参考にしながら導入を進めましょう。
ペーパーレス化の推進ならシステム開発会社への依頼がおすすめ
ペーパーレス化を成功させるためには、自社の課題やニーズをしっかりと理解し、それに合った最適なツールを導入することが重要です。しかし、どのツールやシステムが適しているのかを判断するのは容易ではありません。
このような場合、優秀なITコンサルタントやエンジニアが在籍するシステム開発会社に依頼するのがおすすめです。システム開発会社は現場の課題を丁寧にヒアリング・分析し、それに基づいて最適なツールやシステムを提案してくれます。
また、システム導入後には、利用者がスムーズに新しいシステムを活用できるよう、トレーニングや運用サポートも欠かせません。
システム開発会社であれば、導入支援から運用コンサルティング、トラブル対応、保守サービスに至るまで、一貫したサポートを受けることが可能です。
自社のペーパーレス化を効率的に進めたい場合は、ぜひシステム開発会社のサポートを検討してみてください。
ITコンサルタントについて、詳しくは以下のページもご覧ください。
ペーパーレス化の依頼ならICにお任せください
引用元:システム開発のIC
ペーパーレス化を進める際は、ICにぜひご相談ください。株式会社ICは、ITソリューション事業で40年以上の実績を誇る企業です。
経験豊富なITコンサルタントが在籍しており、お客様の企業規模や業務内容に合わせたIT化のご提案をさせていただきます。
ICでは、企業の現場で抱える課題やニーズを丁寧にヒアリングし、最適なソリューションを提案します。システム導入の計画から運用後のトレーニングや保守サポートまで、一貫したサービスを提供しております。
以下のページからお問い合わせください。
コンサルティング|システム開発のIC
まとめ
ペーパーレス化は、業務効率化やコスト削減、セキュリティ向上など、多くのメリットをもたらす取り組みです。企業や自治体での成功事例からも、その有効性が十分に示されています。一方で、紙に依存する業務フローや現場の抵抗感といった課題があるため、現状の洗い出しや適切なシステムの導入が重要です。
自社のペーパーレス化を成功させるためには、小さなステップから始め、徐々に取り組みを広げていくことがポイントです。また、システム開発会社やコンサルティングサービスを活用することで、効率的かつスムーズに進めることが可能になります。
ペーパーレス化の推進を検討している方は、ぜひ下記のIC公式ページをご覧ください。ICが業務効率化とデジタル化を実現する最適なソリューションを提供します。
コンサルティング|システム開発のIC