RPAの種類を比較。3つの種類の特徴やメリットを紹介

RPAの種類を比較。3つの種類の特徴やメリットを紹介

企業の業務効率化を進める手段として注目されているのがRPA(Robotic Process Automation)です。単純で繰り返しの多い作業を自動化できるため、事務処理やデータ入力など幅広い分野で導入が進んでいます。しかし、RPAと一口に言っても「デスクトップ型」「サーバー型」「クラウド型」と大きく3つに分けられ、それぞれ特徴や適した利用シーンが異なります。

本記事では、RPAの基本から3種類の特徴をわかりやすく整理し、導入によって得られるメリットや選定のポイントを解説します。自社に最適なRPAを検討するうえでの参考にしてください。

 

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RPAとは?

RPA(Robotic Process Automation)とは、人間がパソコン上で行っている定型的な業務をソフトウェアのロボットが自動で実行する仕組みです。たとえば、データの入力や転記、帳票の作成、Webサイトからの情報収集、メール送信など、ルールが決まっていて繰り返し行われる作業を代行できます。

従来は人が時間をかけて対応していた作業をRPAに任せることで、業務効率化やコスト削減だけでなく、人的ミスの防止にもつながります。近年では、バックオフィス業務の効率化や人材不足の解消、さらには働き方改革の推進策として、多くの企業がRPAの導入を進めています。

RPAの種類

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RPAは利用環境や目的に応じて「デスクトップ型」「サーバー型」「クラウド型」の3つに分類されます。同じRPAでも仕組みや導入規模が異なるため、それぞれの特徴を理解したうえで選択することが重要です。

デスクトップ型RPA

デスクトップ型は、各社員のパソコンに直接インストールして利用するタイプです。ユーザーが自分の業務に合わせてロボットを設定し、手元のPC上で動かすことができます。比較的低コストで導入でき、IT知識がなくても操作しやすいことから、RPAの入門として選ばれることが多いタイプです。

ただし、パソコン単位で稼働するため、大規模な業務の一括処理や全社的な自動化には向いていません。小規模な業務改善や部門単位での効率化に適しています。

サーバー型RPA

サーバー型は、社内サーバー上にRPAを構築し、複数の業務や部門を横断して管理するタイプです。ロボットの一元管理が可能で、複数のパソコンに分散することなく集中して自動化を進められます。

大量データの処理や24時間稼働といった高度な運用にも対応でき、セキュリティ要件が厳しい企業でも安心して導入できます。その一方で、導入コストや運用の負担は大きく、専任のIT部門や外部パートナーによるサポートが必要になる場合があります。

クラウド型RPA

クラウド型は、インターネット経由で利用できるRPAサービスです。自社でサーバーを構築する必要がなく、ブラウザ上から手軽に利用できる点が特徴です。更新や保守もサービス提供側が行うため、運用の手間を大幅に削減できます。

特にWebブラウザを使った業務(ECサイトでのデータ収集、Webフォーム入力、クラウドサービス間の連携など)に強く、リモートワークとの相性も良いタイプです。ただし、インターネット接続が前提となるため、セキュリティや通信環境に配慮する必要があります。

クラウド型RPAの例:Power Automate Desktop

Microsoftが提供するPower Platformの一部であるPower Automate Desktopは、デスクトップ業務を自動化できるRPAツールです。

ExcelやOutlookなどMicrosoft 365との親和性が高く、既存のOffice環境とスムーズに連携できるのが大きな強みです。また、クラウド版のPower Automateと組み合わせることで、オンプレ業務とクラウドサービスをつなぎ、より幅広い自動化が可能になります。

基本機能は無料で利用できるため、コストを抑えてRPAを導入したい企業にとっても有力な選択肢です。公式サイトで詳細な事例やチュートリアルが公開されているので、導入検討の際に参考にできます。

Power Automate Desktopを活用して業務を自動化した事例は以下で詳しく解説しています。

デスクトップ型RPAの特徴

デスクトップ型RPAは、個人のパソコンにインストールして利用するシンプルなタイプです。現場の担当者が自分の業務に合わせて導入しやすく、初めてRPAを試す企業にも向いています

IT知識がなくても運用できる

デスクトップ型RPAは、画面操作を記録して自動化フローを作成できるツールが多く、専門的なプログラミング知識がなくても扱えるのが特徴です。日常的に使っているExcelやWebブラウザの操作をそのまま自動化できるため、現場主導での導入が可能です。

パソコンごとで稼働できる

このタイプは各パソコン上で動作するため、個別の業務にすぐに適用できます。たとえば、経理担当が請求書データをまとめる作業や、人事担当が勤怠データを集計する作業など、担当者ごとに異なる業務を柔軟に自動化できます。サーバーや大規模システムに依存しないため、部署単位での小回りの利く運用が可能です。

低コストで始められる

デスクトップ型RPAは、初期費用が比較的安価で、サーバー環境を構築する必要もないため、小規模な業務効率化を低コストで始められるのも魅力です。試験的に導入して成果を検証し、その後サーバー型やクラウド型に拡大するといったステップアップにもつなげやすいタイプです。

サーバー型RPAの特徴

サーバー型RPAは、社内サーバーに構築して利用するタイプで、複数の部門や業務を一括して管理できるのが強みです。大規模な企業や基幹システムとの連携を想定した自動化に適しており、本格的にRPAを導入したい組織で選ばれるケースが多くあります。

社内環境に合わせて開発できる

サーバー型RPAは自社の基幹システムや業務フローに合わせて柔軟に開発できる点が強みです。たとえば、会計システムや顧客管理システム(CRM)、ERPなどと連携し、複雑な承認フローや独自のルールに沿った処理を自動化することが可能です。現場の要件に応じて細かいカスタマイズが行えるため、標準化されたパッケージでは対応しきれない業務も自動化対象にできます。

大量のデータを処理できる

サーバーに複数のロボットを稼働させ、並列処理を行えるのもサーバー型の大きな利点です。たとえば数万件単位の受注データや請求データの処理、在庫の一括照合といった膨大な業務も短時間で完了できます。さらに、24時間365日稼働が可能なため、夜間や休日に自動処理を行うことで、人手をかけずに業務を進められます。こうした特性から、金融・製造・物流など、大量データを扱う業界で特に重宝されています。

高いセキュリティを担保できる

サーバー型は社内ネットワーク内で運用されるため、情報が外部に出にくく、セキュリティリスクを最小限に抑えられます。アクセス権限を細かく設定でき、誰がどのロボットに触れるかを厳密に管理できるため、内部統制の観点からも優れています。また、ログの記録や監査対応もしやすく、金融機関や医療業界など高いセキュリティ基準が求められる分野でも安心して導入できます。

クラウド型RPAの特徴

クラウド型RPAは、インターネットを通じて利用できるサービス型のRPAです。自社にサーバーを構築する必要がなく、ブラウザ上からアクセスするだけで利用できるため、導入のハードルが低いのが特長です。特にWeb業務やリモートワークとの相性が良く、場所やデバイスを選ばず活用できる点から、中小企業から大企業まで幅広く採用が進んでいます。

他の業務を同時に実行できる

クラウド型RPAは、自社のPCやサーバーに依存せずに稼働するため、ロボットが動いている間でも担当者は別の業務を進めることが可能です。例えば、RPAがWeb上でデータ収集や帳票出力をしている間に、人は分析や企画などのコア業務に集中できます。人とロボットが並行して作業できることで、生産性が大きく向上します。

Webブラウザ上での作業を自動化できる

クラウド型RPAは、ECサイトの在庫確認や価格調査、Webフォームへの入力、クラウドサービス間のデータ転送など、Webブラウザを介した業務の自動化に強みを持ちます。オンプレミスのシステムや複雑な環境構築を必要とせず、インターネット環境さえあればすぐに利用できるため、スピーディーな業務改善が可能です。

更新作業がなく保守・運用ができる

サーバー型やデスクトップ型ではバージョンアップやセキュリティ更新を社内で対応する必要がありますが、クラウド型RPAでは提供ベンダー側が常に最新の環境を維持します。そのため、運用・保守に余計なリソースを割かずに済み、IT部門の負担を軽減できます。特に人員が限られる中小企業にとっては大きなメリットとなります。

RPAのメリット

RPAは単純作業をロボットに任せることで、企業に多くのメリットをもたらします。ここでは導入効果として特に注目される5つのポイントを解説します。

繰り返しのある作業を削減できる

請求書の処理や受注データの入力、顧客情報の更新など、毎日発生する定型業務は多くの社員を悩ませるものです。こうした「誰がやっても同じ結果になる単純作業」はRPAが最も得意とする領域であり、24時間365日休むことなく処理を続けられます。従来は数時間かかっていた作業も数分で完了するケースもあり、大幅な工数削減につながります。結果として、社員は手作業に追われることなく、本来注力すべき業務に集中できる環境を整えられます。

人的ミスを削減できる

人間が行う作業には、どうしても入力漏れや数字の打ち間違い、転記忘れといったヒューマンエラーが発生します。とくに大量のデータ処理や細かなチェックを伴う業務では、ミスを完全に防ぐことは困難です。RPAはあらかじめ設定されたルールに従って動くため、同じ処理を正確に繰り返すことが可能です。これにより業務品質が安定し、二重確認や修正作業といった無駄な工数を削減できます。正確性が求められる会計、人事、物流業務などで特に効果を発揮します。

浮いた時間でコア業務に取り組める

単純作業を自動化することで社員の時間に余裕が生まれ、その分を戦略的な業務に充てられるのもRPAの大きな魅力です。たとえば、営業部門ではデータ入力をRPAに任せることで、社員は顧客との関係構築や提案活動に時間を使えます。経理部門では入力作業を削減することで、分析や経営への提言といった高付加価値業務にシフトできます。浮いたリソースを本来注力すべき領域へ再配分することで、組織全体の生産性と競争力が高まります。

人材不足の解消ができる

日本社会全体で労働人口が減少するなか、限られた人材で多様な業務をこなさなければならない状況は今後ますます深刻化していきます。RPAは追加の人員を雇用することなく業務を自動化できるため、慢性的な人手不足の解決策となります。たとえば、繁忙期に必要なデータ処理や月末の請求処理をRPAに任せれば、増員なしでも安定した業務遂行が可能です。採用や教育にかかるコストも不要で、結果的に企業全体の運営コスト削減にも貢献します。

働き方改革につながる

RPAの導入は単なる効率化にとどまらず、社員の働き方そのものを改善します。定型作業を自動化することで残業時間が減り、長時間労働の是正に直結します。また、業務の負担が軽減されることで、社員は心身の余裕を持ち、プライベートの時間も確保しやすくなります。これは従業員満足度の向上や離職率の低下につながり、企業にとっても長期的な人材確保のメリットとなります。RPAは「業務効率化」と「働きやすい職場づくり」の両面から、働き方改革を後押しする存在です。

RPA選定のポイント

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RPAは種類によって特徴や導入効果が異なるため、目的に合った製品を選ぶことが成功の鍵です。ここでは選定時に押さえておきたい3つの視点を解説します。

自動化したい業務に合わせて選ぶ

まずは、自社で自動化したい業務がどの種類のRPAに適しているかを明確にする必要があります。例えば、日々のルーチン業務や個別のパソコンで完結する作業であれば「デスクトップ型」が向いています。一方、複数部門にまたがる処理や大量データを扱う業務には「サーバー型」、Webブラウザ上の業務が多い場合には「クラウド型」が適しています。自動化したい業務の範囲や規模に応じて適切な種類を選ぶことで、導入効果を最大限に発揮できます。

自社で運用ができるかで選ぶ

RPAは導入後の運用が成果を左右します。IT部門が十分に整備されていない企業では、管理やメンテナンスが複雑なサーバー型よりも、操作が容易なデスクトップ型やクラウド型の方が適している場合があります。逆に、専任担当者を配置できる企業であれば、全社的に展開できるサーバー型を選ぶことで大きな効果を得られるでしょう。自社の体制やスキルレベルを考慮し、「誰がどこまで運用できるか」を見極めて選定することが重要です。

予算に合わせて選ぶ

RPAは種類ごとに導入・運用コストが異なります。デスクトップ型は比較的安価で小規模導入に適していますが、大規模展開には限界があります。サーバー型は大規模自動化に強い反面、導入費用や運用負担が大きくなります。クラウド型は初期費用を抑えて利用できる一方で、利用料がランニングコストとして発生します。自社の予算や期待する効果に合わせ、長期的なコストパフォーマンスも考慮して選ぶことが求められます。

RPAの導入はICにお任せください

RPAは導入すればすぐに成果が出るものではなく、自社の業務内容や組織体制に合わせた設計と定着支援が欠かせません。ICでは、RPAの選定から導入、運用後の改善まで一貫してサポートしています。

「どの種類を選べばいいかわからない」「試験導入から全社展開までをスムーズに進めたい」といった課題をお持ちの企業様に対し、豊富な導入実績をもとに最適なプランをご提案します。効率化だけでなく、働き方改革や人材不足の解消につながるRPA導入をお考えの際は、ぜひICにご相談ください。

まとめ

RPAは「デスクトップ型」「サーバー型」「クラウド型」の3種類に大別され、それぞれに適した業務範囲や導入規模があります。いずれも繰り返し作業を自動化し、人的ミス削減や働き方改革の推進といった大きな効果をもたらしますが、自社の課題や予算に合った製品を選ぶことが成功の鍵です。

業務の効率化や人材不足の解決を目指すなら、まずは自動化したい業務を明確にし、RPAの特性を理解したうえで導入を検討することが重要です。最適な選定と運用を実現するためにも、専門的な知見を持つICにご相談いただくことで、確実に成果を引き出せるでしょう。


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