AzureとAWSのサービス比較!両者の強みやどちらを選ぶべきかをケース別に解説
パブリッククラウドの主要サービスといえば、マイクロソフトのAzureとAmazonのAWSが挙げられます。AzureとAWSのどちらを選ぶべきか、迷っている方もいらっしゃるでしょう。今回は、AzureとAWSの強みや弱みを解説し、どちらを選ぶべきかをケース別にご紹介します。
目次[非表示]
- 1.パブリッククラウド「Azure」と「AWS」はどちらを選ぶべき?
- 2.AzureとAWSの料金比較
- 3.Azureの強み
- 3.1.マイクロソフト社の製品と親和性が高い
- 3.2.セキュリティレベルが高い
- 3.3.オンプレミス環境と連携しやすい
- 4.AWSの強み
- 4.1.実行能力とビジョンの完全性において高く評価されている
- 4.2.より多くの国で利用できる
- 4.3.豊富な機能を備えている
- 5.AWS・Azureに共通する特徴
- 6.AWSと比べた際の「Azureの弱み」
- 6.1.AWSより仮想マシンの起動速度が遅い
- 6.2.情報量が多くない
- 7.Azureと比べた際の「AWSの弱み」
- 7.1.保守運用の自由度が低い
- 7.2.最適なサービス選択が難しい
- 8.AzureとAWSはどちらが最適?ケース別に紹介
- 8.1.Azureが適しているケース
- 8.2.AWSが適しているケース
- 9.AWSとAzureは併用も可能
- 10.まとめ
パブリッククラウド「Azure」と「AWS」はどちらを選ぶべき?
パブリッククラウドの中でも高いシェア率を誇るのが、「Amazon Web Services」(アマゾン ウェブ サービス)と「Microsoft Azure」(マイクロソフト・アジュール)です。どちらを選べばよいかで迷っている方もいらっしゃるでしょう。
Amazon Web Services(以下、AWS)は、Amazon Web Service社が提供するクラウドプラットフォームで、パブリッククラウドの先駆けのような存在です。Amazonが保有するITシステムの構築や、運営技術をもとに提供されています。
Microsoft Azure(以下、Azure)は、マイクロソフト社が提供するクラウドプラットフォームです。Office365と連携でき、Windowsを利用している方にとって非常に使いやすいという特徴があります。最近では、オープンソースソフトウェアとの連携にも注力しているのが特徴です。
双方にメリットとデメリットがあり、適しているケースが異なります。どちらを選ぶべきかを判断するためには、それぞれの特徴について詳しく理解しましょう。
AzureとAWSの料金比較
まずは、AzureとAWSの料金を比較してみましょう。AzureとAWSは、どちらも使用した分だけ料金が発生する従量課金制の料金体系です。
ここでは、以下のサービスについて、料金を比較します。
- 仮想マシン(VM)
- ネットワーク
- ストレージ
- 機械学習
- データベース
- ビッグデータ
|
Azure |
AWS
|
---|---|---|
仮想マシン(VM)
|
$181/月
|
$148/月
|
ネットワーク
|
$180/1TB
|
$114/1TB
|
ストレージ
|
$25.0/1TB
|
$25.0/1TB
|
機械学習
|
$25.8/100時間
|
$29.8/100時間
|
データベース
|
データ読み込み: |
データ読み込み: |
ビッグデータ |
$5/1TB |
$5/1TB |
※ 料金は全て東京リージョンで計算
両サービスとも、さまざまなサービスに無料枠を設けています。Azureは、200USドル分の無料クレジットを提供しているほか、毎月上限まで無料枠のサービスを利用できる仕組みです。
AWS も100以上のサービスについて無料枠を設けており、毎月の上限まで無料で利用できます。
※上記表に記載の料金は2023年2月時点のものです。
AzureとAWSの料金や無料枠について詳しくは、以下をご覧ください。
Azureの強み
Azureの強みは以下のとおりです。
- マイクロソフト社の製品と親和性が高い
- セキュリティレベルが高い
- オンプレミス環境と連携しやすい
特にマイクロソフト社の製品との親和性が高い点は、Windowsやそのほかマイクロソフト社の製品を使用している方にとって大きなメリットといえます。
そのほか、マイクロソフト社ならではのセキュリティレベルの高さや、オンプレミス環境と連携してハイブリッドクラウド環境を構築しやすい点が魅力です。
Azureの特徴やメリット、デメリットについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
ここでは、Azureの強みについて解説します。
マイクロソフト社の製品と親和性が高い
Azureは、OfficeやMicrosoft 365など、マイクロソフト社が提供する製品やサービスとの親和性が高いのが特徴です。マイクロソフト社の製品と簡単に連携でき、システムの導入や移行にかかる手間やコストを削減できます。Windowsやマイクロソフト社の各製品を使用している場合は、スムーズに使えて便利なのが魅力です。
マイクロソフト社は、圧倒的なシェアを誇る世界的なソフトウェア会社です。そのため、多くの企業にとってAzureは、使い勝手のよいパブリッククラウドといえるでしょう。
セキュリティレベルが高い
Azureは、セキュリティレベルの高さにも強みがあります。Azureのデータセンターやインフラ設備は、全世界で3,500名以上のサーバーセキュリティ専門家からなるチームによって常時監視されており、安心して使用可能です。「Azure Security Center」では、不正アクセスや不審な動きを監視・診断し、万が一サービスが攻撃を受けた場合でも、脅威を検出して保護してくれます。
さらに、政府機関や企業と連携してサイバー犯罪対策の研究拠点を世界に展開し、高いセキュリティレベルを担保しているなど、セキュリティレベルの高さがポイントです。
オンプレミス環境と連携しやすい
Azureは、オンプレミス環境と連携し、ハイブリッドクラウド環境を容易に構築できます。ハイブリッドクラウドは、クラウドとオンプレミス双方のメリットを活かせるものとして注目されている環境です。
たとえば、マイクロソフトのサーバーを使ってITシステムを構築し、重要なデータ資産を自社のオンプレミス環境で保有・運用して、ほかはAzureで運用するといった使い分けが容易に実現します。
AWSの強み
一方、AWSには以下のような強みがあります。
- 実行能力とビジョンの完全性において高く評価されている
- より多くの国で利用できる
- 豊富な機能を揃えている
AWSは、世界的なITアドバイザリ企業によって、主要ベンダーの中でも非常に高い評価を受けているサービスです。また、多くの国と地域に展開しており、ユーザーはさまざまな機能を利用できます。新機能を続々とリリースし、更新しているのも特徴です。
AWSを構築して運用するメリットやデメリットについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
ここでは、AWSならではの強みについて解説します。
実行能力とビジョンの完全性において高く評価されている
AWSは、アメリカの大手ITアドバイザリ企業であるGartnerが発表している「Gartner Magic Quadrant for Cloud Infrastructure and Platform Services」において、実行能力とビジョンの完全性が高いサービスとして評価されています。
これは、IaaS市場を対象にしたGartner独自の調査で、主要なパブリッククラウドが、リーダー・チャレンジャー・ニッチプレーヤー・ビジョナリーの4つのうちどれに該当するかを表したものです。なかでも、リーダーは「実行能力」と「ビジョンの完全性」がともに高いことを意味します。2022年の調査では、リーダーに該当するのはAWS、Microsoft、Googleの3つのベンダーです。そのなかでも、AWSは、「実行能力」と「ビジョンの完全性」がともに最高であるとの評価を獲得しました。
このようにさまざまな主要ベンダーの中でも、AWSはリーダーとして高く評価されているのです。
より多くの国で利用できる
AWSクラウドは、245の国と地域でサービスを提供しており、非常に多くの国で利用できるのが強みです。
AWSのデータセンターはリージョンと呼ばれており、複数のデータセンター群で構成されたアベイラビリティーゾーンが、各リージョンに複数個設置されています。全世界30の地域内に、96に及ぶアベイラビリティーゾーンが存在しているのです。そのため、多くの国でAWSを利用でき、アカウントを開設した時点で世界中のデータセンターにシステムを展開できます。通常、海外へのシステム展開には時間や手間がかかりますが、AWSならば数分で完了です。
豊富な機能を備えている
AWSは200を超えるサービスを提供しており、コンピューティングやストレージ、データベースから機械学習、AIまでといった豊富な機能を備えています。AWSが提供している機能のうち、 90%以上はユーザーからのリクエストを受けて実装したものです。顧客のニーズを反映した多彩な機能で、高い利便性を誇ります。
また、さまざまな新機能を次々とリリースしており、ユーザーはリリース時点で新しい機能をすぐに利用できるのも特徴です。
機能性の高さはもちろん、1ライセンスから利用できるため、ユーザーはニーズに合わせて機能を柔軟に使用できます
AWS・Azureに共通する特徴
AWSとAzureには、以下のような共通点があります。
- 主要な機能が共通している
- 従量課金制を採用している
- 世界中へ容易にサービス展開が可能である
AWSとAzureは、主にコンピューティングやストレージ、データベース、ネットワークから構築されているサービスです。また、ストレージや仮想ネットワークデバイスなどのリソースを整理できる「リソースグループ」という機能も双方に備わっています。
料金体系も、共通して「従量課金制」を採用しているのが特徴です。サービスを使った分だけ費用が発生するため、無駄なコストを抑えて利用できます。
さらにAWSとAzureならば、世界中へ容易にサービスを展開できるのもポイントです。たとえば世界中に拠点を持ち、それぞれの国や地域でサービスを展開している場合でも、各拠点に対して簡単に同じサービスを展開できます。
AWSと比べた際の「Azureの弱み」
AWSとAzureを比較するうえでは、それぞれの弱みについても理解する必要があります。AWSと比較した際のAzureの弱みは、以下のとおりです。
- AWSより仮想マシンの起動速度が遅い
- 情報量が多くない
AWSに比べると仮想マシンの起動に時間がかかる点は、積み重なると運用においてストレスになるリスクがあります。また、AWSに比べると情報が少なく、自力で構築するのが難しい点もデメリットです。
ここでは、Azureの弱みについて詳しく解説します。
AWSより仮想マシンの起動速度が遅い
Azureは、仮想マシンを起動する際に時間がかかるのが難点です。AWSは1分ほどで起動が完了するのに対し、Azureは2分30秒以上かかります。短時間ではありますが、起動完了までに時間がかかる分、開発やテスト、運用などの面においてストレスになってしまう可能性は否定できません。
なお、仮想マシンの起動やシャットダウンがあまりにも遅い場合は、Advanced Configuration and Power Interface C 状態(ディープ プロセッサ アイドル状態)を無効にすることが有効です。
情報量が多くない
Azureは、ヘルプトピックやオンラインフォーラムのコミュニティが充実しておらず、情報量があまり多くありません。マイクロソフトのプロフェッショナルサポートを受けることを前提としているため、という理由が考えられますが、自ら情報を集めて構築するのが難しい点はAzureの弱みです。
さらに、Azureを活用するためには専門知識が必要であり、その点も踏まえると情報量が少ない点は大きなデメリットといえます。
Azureと比べた際の「AWSの弱み」
一方、AWSには以下のような弱みがあります。
- 保守運用の自由度が低い
- 最適なサービス選択が難しい
AWSは、自社サーバーに比べるとカスタマイズ性が低く、定期的なメンテナンスも考慮して運用する必要があります。保守運用の自由度が低いのは、AWSの弱みです。
また、サービスが豊富であるからこそ、必要なサービスを適切に選択するのが難しいというポイントもあります。
ここでは、Azureと比較した際のAWSの弱みについて詳しく解説します。
保守運用の自由度が低い
AWSは、自社サーバーのように自由にカスタマイズすることは難しく、保守運用の自由度が低いという弱みがあります。あくまでもクラウドとして提供されているサービスを利用することが必要です。
メンテナンスもAWS側のスケジュールで行われるため、メンテナンスによるダウンタイムへの対応も求められます。数ヶ月に1回ほどメンテナンスが行われ、メンテナンス中はサービスを使えません。
さらに、天災やヒューマンエラーなどが原因で、大規模な障害が発生するリスクもゼロではありません。定期的なメンテナンスや、万が一の障害が発生することを前提に、サービスを使用する必要があります。
最適なサービス選択が難しい
前述のとおり、AWSにはコンピューティングやストレージ、機械学習などさまざまなサービスがあり、その数は200以上です。これはメリットでもある一方、自社に適したサービスを選択することが難しいという弱みでもあります。特に初めてAWSを利用する場合、数ある中から必要なサービスを選択することは至難の業です。
予算管理が難しいという点も見逃せません。AWSは従量課金制であり、新たなサービスを利用したり、想定以上のアクセスがあったりした場合は費用が高まります。毎月の利用コストが変動するため、予算管理が難しいのです。
AzureとAWSはどちらが最適?ケース別に紹介
これまでご紹介したとおり、AzureとAWSは双方にメリットとデメリットがあり、どちらが優れているとは一概にいえません。Azureが適している場合とAWSが適している場合とがあるため、状況に応じて適切なほうを選択しましょう。
ここでは、Azureが適しているケースとAWSが適しているケースについて、それぞれ詳しく解説します。AzureとAWSのどちらを選ぶべきかで迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
Azureが適しているケース
Azureが適しているのは、以下のようなケースです。
- マイクロソフト製のサービスをメインで利用している
- セキュリティ対策を重視している
- サービス選択や運用ができる専門的な人材がいる
Azureは、マイクロソフトの製品やサービスとの親和性が高いため、マイクロソフトの製品をメインで利用している場合はおすすめです。既存サービスとスムーズに連携できたり、WindowsServerの環境を簡単にクラウドに移行できたりします。
セキュリティ対策を重視している場合にも、Azureがおすすめです。Azureは、サーバーセキュリティ専門家によって常時監視されており、高いセキュリティレベルを誇ります。その安全性の高さから政府機関や医療機関、金融サービスなどでも多く利用されているほどです。
さらに、サービス選択や運用ができる専門的な人材がいる場合は、Azureが適しているといえます。Azureは、AWSと同様にさまざまなサービスを提供しており、ユーザーは多様な選択肢から必要なサービスを選んで使用できます。
しかし、本当に必要なサービスを選択するためには知識が必要です。さらにAzureは情報量が少ないため、自力で情報を集めて構築するのが難しいという難点があります。このようなAzureの特徴から、専門的な知識やスキルがあり、使いこなせる人材がいる場合はAzureがおすすめです。
AWSが適しているケース
一方、以下のようなケースでは、AWSが適しています。
- ほかの製品と連動させて利用したい
- 海外拠点がある・海外にサービスを展開したい
- 機能の豊富さを重視している
AWSは、マイクロソフト社以外のさまざまな製品と連動させて使用でき、汎用性が高いのが魅力です。そのため、マイクロソフトの製品をメインで使っているわけではなく、ほかの製品と連動させて利用したい場合にはAWSがおすすめです。
海外拠点がある、あるいは海外にもサービスを展開したいという場合は、多くの国や地域で利用できるAWSが適しています。前述のとおり、アカウントを開設した時点で、すぐに世界中のデータセンターにシステムを展開可能です。
機能の豊富さを特に重視している場合にも、AWSが適しています。200以上の多様なサービスの中から必要な機能を選択できるため、自社が求める機能が見つかる可能性が多分にあります。ユーザーのニーズを反映して定期的に新サービスを実装・反映している点も、充実した機能を求める方にAWSがおすすめな理由の1つです。
AWSとAzureは併用も可能
AWSとAzureは、併用して使うことも可能です。たとえば、プラットフォームにはマイクロソフト製品との親和性が高いAzureを使用し、さまざまな機能を実装したい部分では機能が豊富なAWSを使用する、といった使い分けができます。併用することで、両者の強みを活かしたシステム構築が可能です。また、リスクを分散できるというメリットもあります。障害に対するリスクや、将来のサービス変更・終了といったリスクに備えられるのです。
しかし、併用にはデメリットもあります。サービスが複雑化してわかりにくくなる点や、連携がスムーズにいかない可能性がある点、管理の手間が増えるといった点については注意しましょう。
AWSとAzureを上手に併用するためには、クラウドサービスの導入を支援してくれる、システムコンサルティングサービスを利用するのが効果的です。適切な運用支援を受けることでデメリットを解消できます。
まとめ
今回は、マイクロソフトのAzureとAmazonのAWSについて、それぞれの特徴やメリット、デメリット、ケースごとにどちらを選ぶべきかを解説しました。AzureとAWSには、それぞれ別の魅力があります。両者の特徴を理解し、状況やニーズに応じて適切なものを選択することが大切です。どちらの良さも活かしたいという場合は、システムコンサルティングサービスの運用支援を受けながら、AzureとAWSを併用してみてはいかがでしょうか。
※2023年2月時点の仕様です。現在は異なっている可能性があります。
Azure導入検討企業様向け!お役立ち資料ダウンロードはこちら
前の記事
プロジェクトマネージャーの役割とは?定義や向いている人の特徴5つを紹介
次の記事
SaaSとは?IaaS、PaaSとの違いやメリット・デメリットを解説