AWS(Amazon Web Services)とは、クラウド上でサーバーやストレージ、ソフトウェアを運用または利用できる「クラウドコンピューティングサービス」の総称です。本記事ではAWSを構築して運用するメリットやデメリット、構築に役立つサービスなどを解説します。
AWSはクラウドコンピューティングサービスのひとつ
AWSとは「アマゾンウェブサービス(Amazon Web Services)」の略称で、Amazonが提供しているクラウドコンピューティングサービスの総称です。
クラウドコンピューティングは、2006年当時にGoogleであったCEOエリック・シュミットによって提唱された言葉であり、クラウド環境でサーバーやストレージ、ネットワークなどを利用することを意味します。
従来のサーバーやストレージは、社内で設置して構築するオンプレミス環境が一般的でした。しかし近年、インターネットで利用できるクラウド上に、サーバーやシステムを構築できるクラウドサービスが普及してきています。
Amazonが自社のECサイトで抱える課題解決をするために考えて構築したITインフラの仕組みを、クラウドサービスとして提供しているのがAWSというわけです。
AWS構築による運用で得られる4つのメリット
AWSでサーバーやシステムなどを構築することを「AWS構築」といい、このAWS構築によってさまざまなメリットを得ることが可能です。具体的には以下のようなメリットが挙げられます。
- 初期費用ゼロでも利用できる
- 自由なサイジングができる
- 災害による物理的被害がなく復旧が容易
- セキュリティ面の安全性が高い
オンプレミス環境には真似できないメリットが多いため、AWS構築で運用することをぜひ検討してみてください。
1.初期費用ゼロでも利用できる
AWSは初期費用ゼロで利用でき、初心者でも始める敷居が低いのが魅力です。特にオンプレミス環境からクラウドに移行する際の費用を大幅に削減できるため、思い切って移行する判断がしやすいでしょう。
移行時は、ストレージの容量やサーバーの選定などを考慮する必要もありません。煩わしいことを考慮せず、スムーズに移行できることがAWSの強みです。
2.自由なサイジングができる
AWSは自由なサイジングができて、効率的にサーバーやストレージを運用できます。サイジングとは大きさや容量を調整するという意味で、IT分野ではサーバーやストレージの規模と容量を見積もり、状況に応じて拡張もしくは縮小することです。
AWSでは、サーバーやストレージを必要なときに必要な分だけ自由に用意できるため、わざわざサーバーやストレージを注文して社内に導入するような手間がなくなります。
3.災害による物理的被害がなく復旧が容易
社内にサーバーやストレージを設置するオンプレミス環境では、本体が身近にあるという安心感をもてる反面、保守業務が必要になります。災害などによって物理的な被害を受けるリスクが常にあるのです。
AWSはクラウド上でサーバーやストレージなどを運用できるため、災害が発生したとしても物理的な被害がほとんどありません。また、もしもトラブルが起きたとしても、復旧が容易という強みがあるのです。
4.セキュリティ面の安全性が高い
AWS構築による運用は、セキュリティ面の安全性が高いこともメリットです。事実、サーバーなどのシステムにおける脅威は、インターネット上からのウイルス感染やハッキングのみではなく、従業員による人為的なミスやサーバー本体の損壊なども考えられます。
オンプレミス環境におけるこれらのリスクは、クラウドへ移行することで回避できるものが多いため、近年はクラウド上で運用するほうが安全という意見もあるのです。
AWS構築による運用のデメリット3つ
AWS構築による運用のメリットは多いですが、以下のような3つのデメリットも存在します。
- ランニングコストが高い場合がある
- オンプレミス環境に比べると柔軟性や自由度が低い
- トラブルが起きても基本的に自己解決になる
クラウド上でサーバーやストレージなどを運用できるサービスは増えてきていますが、AWS以外のサービスも同様にオンプレミス環境よりも劣る部分があることを把握しておきましょう。
1.ランニングコストが高い場合がある
AWSは初期費用がゼロという魅力がある反面、従量課金制となっているため、ランニングコストが高くなる場合があります。長期的な視点でコストを比較すると、結果的にオンプレミスよりもクラウドのほうが運用する際のコストが大きくなりやすいです。
少しでもコストを抑えた運用を目指すのであれば、オプションなどを追加せずに必要最低限の機能にすることが望ましいでしょう。
クラウドで運用することによって、オンプレミスでは必須だった保守や点検業務が不要となります。それによって人件費の削減にはつながるものの、企業やシステムの規模によって、オンプレミスとクラウドのどちらが低コストで運用できるかが異なることには注意してください。
2.オンプレミス環境に比べると柔軟性や自由度が低い
AWSによる運用は、オンプレミス環境に比べるとカスタマイズの柔軟性や自由度が低いです。例えば、オンプレミス環境であれば本体にUSBコードなどを利用して拡張したり、独自の機能などをカスタマイズしたりできますが、クラウドではそれらができません。
それを考慮すると、サーバーやシステムに独自の改良を加え、カスタマイズを沢山していきたい場合にAWSは不向きといえます。
3.トラブルが起きても基本的に自己解決になる
AWS構築によるクラウドでの運用は、もしもトラブルが起きたとしても、基本的に自分で解決する必要があります。そのため、ある程度のIT知識や技術者でなければ、トラブルを解決するのが困難になるかもしれません。
オンプレミスのようなサーバーの保守点検や専門的な業務ができる人材がいなくても、AWSでは運用できます。しかし、トラブルが起きた際には早急に対処できるように、サーバーやクラウドに関するIT知識をもつ人材の確保や育成が必要でしょう。
AWS構築に役立つ3つのサービスとポイント
AWS構築をしてシステムなどをクラウドで運用する際、利用すると便利なサービスが以下の3つです。
- 基本的なサービス「Amazon EC2」
- ストレージサービス「Amazon S3」
- リレーショナル型のデータベース「Amazon RDS」
これらのサービスを活用することで、よりAWSによる運用が活かせるでしょう。AWS構築に初めて挑戦する際は、Amazonが用意してくれているチュートリアルを試してみてください。
1.基本的なサービス「Amazon EC2」
Amazon EC2は、AWSを運用する上で基本的なものであり、仮想サーバーの構築ができるクラウドサービスです。Amazon EC2は、OSを搭載させた仮想サーバーが簡単に構築できることや、導入から運用開始までの短さが優れています。従来のオンプレミス型サーバーは、導入してから運用開始できるまでに時間がかかりますが、Amazon EC2は当日に運用を開始できるのです。
2.ストレージサービス「Amazon S3」
Amazon S3はクラウド上のストレージサービスであり、Webサイトやアプリケーションなどのデータのバックアップ作成、バックアップデータの復元などを容量制限なく低コストで利用できます。
Amazon S3を利用して保存したデータは、各地のデータセンターに自動的に複製されるため、万が一トラブルが発生してもデータを完全に保護できるのです。また従量課金制になっているため、最低限の内容にしてコスト重視の運用もできます。
Amazon S3の活用により、ストレージを保管することや容量が足りなくなって新しいストレージをわざわざ準備する必要もなくなるため、業務の効率化を図れるばかりかデータの安全性も高められるでしょう。
3.リレーショナル型のデータベース「Amazon RDS」
Amazon RDSは、「リレーショナル型データベース」といわれるデータを複数の表で管理するサービスです。探したいデータを検索できて複雑なデータ処理もできるため、顧客リストや商品情報など、業務活動で必要になる情報の整理や管理が効率化できます。
シンプルなデータやバックアップデータにはAmazon S3を利用し、複雑なデータはAmazon RDSを利用するなどして、上手くデータを使い分ければコストを抑えつつ最大限にメリットを活かせるでしょう。
AWS初心者は10分間のチュートリアルを試す
AWSでは、初心者用として無料で見られる10分間のチュートリアルが用意されています。初めてAWSを利用しようとしている方は、お試しでチュートリアルを活用すれば理解も早まるでしょう。
チュートリアルではストレージや開発ツール、コンピューティングなどの種類に応じてそれぞれ簡単なゴールを達成していきます。画像も使って丁寧に解説されているため、初心者でも迷うことなく進められるでしょう。
まとめ
AWSは、Amazonが提供するクラウドコンピューティングサービスです。AWSでサーバーを構築して運用することにより、サーバーの保守や点検業務がなくなることに加え、ストレージなどのサイジングが自由にできます。
クラウド上でサーバーやデータを管理しているため、災害による被害も基本的にありません。従量課金制でこれらのメリットを享受できるため、使い方を工夫すればコストを抑えながら運用することが可能です。
またAWSは初期費用がゼロで始められるため、オンプレミス環境からの移行もしやすいというメリットがあります。ぜひAWS構築によるクラウド上での運用を始め、人件費の削減やデータの管理を効率化することを検討してみてください。
※2022年5月時点の仕様です。現在は異なっている可能性があります。