近年、企業活動のデジタル化が進む中でランサムウェアによる被害が深刻化しています。ランサムウェアは複数の経路から侵入し、対策が不十分な場合には業務停止や情報資産の損失といった重大な影響を及ぼします。そのため、基本的な仕組みや感染経路を理解したうえで自社に適した対策を講じることが重要です。
本記事では、ランサムウェアの特徴や具体的な対策、対策を進めるうえでの課題などを解説します。
ランサムウェアとは
ランサムウェアとは、コンピュータやサーバーに保存されているデータを暗号化し、利用できない状態にしたうえでその復旧と引き換えに金銭を要求するサイバー攻撃の一種です。感染すると業務に必要なファイルやシステムが使用できなくなり、業務停止や対応コストの増加といった影響が発生します。
近年は企業規模や業種を問わず被害が広がっており、多くの企業にとって無視できない経営リスクの一つとなっています。
引用:ランサムウェア被害防止対策|警察庁Webサイト
近年の被害傾向
近年のランサムウェア被害は、企業を標的とした攻撃の増加とともに深刻化しています。その背景には、リモートワークやクラウドサービスの普及によって従来のように社内ネットワークを中心とした管理が難しくなり、セキュリティの前提そのものが変化したことが挙げられます。
また、社内外の境界が曖昧になったことで従来の対策だけでは対応しきれない状況も生まれています。こうした環境の変化に加えて攻撃手法も多様化しており、企業を取り巻くリスクは継続的に高まっているのが現状です。
ランサムウェアの主な感染経路
ランサムウェアは特定の手段に限定されるものではなく、複数の経路を通じて侵入するのが特徴です。
ランサムウェアの主な感染経路として、以下の5つが挙げられます。
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メールや添付ファイルからの感染
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ソフトウェアのダウンロードによる感染
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脆弱なVPN機器から侵入
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RDPからの侵入
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Webサイトへのアクセスによる感染
以下では、それぞれの感染経路を解説します。
メールや添付ファイルからの感染
ランサムウェアの代表的な感染経路として、メールや添付ファイルを利用した手口が挙げられます。業務連絡や請求書などを装ったメールに添付されたファイルや、本文に記載されたリンクを開くことでマルウェアが実行される仕組みです。
実在する企業や取引先を装うなど内容が巧妙化しているため、通常の業務メールと見分けがつきにくいケースも多く見られます。このようなメールをきっかけに、端末が感染する事例が継続的に確認されています。
ソフトウェアのダウンロードによる感染
インターネット上からダウンロードしたソフトウェアを通じて感染するケースもあります。正規のアプリケーションに見せかけた不正プログラムや改ざんされたファイルを実行することで、端末にランサムウェアが侵入します。
これらのファイルは一見すると正規のソフトウェアと区別がつきにくく、利用者が気づかないまま実行してしまうことも少なくありません。
脆弱なVPN機器から侵入
VPN機器の脆弱性を悪用した侵入も、近年多く確認されている感染経路です。外部からアクセス可能なネットワーク機器に未修正の脆弱性がある場合、攻撃者はそこを起点として内部ネットワークへ侵入します。
侵入後は社内のサーバーや端末にアクセスされ、ランサムウェアの実行につながるケースがあります。このような侵入は、ネットワーク機器そのものが攻撃の入り口として利用されるのが特徴です。
RDPからの侵入
RDP(リモートデスクトップ)を経由した侵入も、代表的な手口の一つです。外部から接続可能な状態のRDPに対して、不正なログインが行われることで侵入が発生します。
攻撃者は認証情報を不正に入手したり、推測によってログインを試みたりすることでアクセス権を取得します。その後、内部環境に入り込み、ランサムウェアを実行するといった流れが確認されています。
Webサイトへのアクセスによる感染
Webサイトの閲覧をきっかけに感染するケースもあります。正規サイトが改ざんされている場合や不正なコードが埋め込まれたページにアクセスすると、利用者の操作に気づかれないままマルウェアがダウンロードされることがあります。
このような手口は、特別な操作を行わなくても感染に至るのが特徴です。日常的なインターネット利用の中で発生するため、感染に気づきにくいケースも少なくありません。
企業が行うべきランサムウェア対策

ランサムウェアは複数の経路から侵入し、被害が広範囲に及ぶ可能性があるため、単一の対策だけで防ぐことはできません。企業としては、技術的な対策と運用面の対策を組み合わせ、継続的にセキュリティレベルを高めていく必要があります。
ここでは、企業が優先的に取り組むべき対策として以下の5つを解説します。
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セキュリティ対策ソフトの導入
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ソフトウェア更新と脆弱性対策
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定期的なバックアップと安全な保管
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アクセス制御・認証の強化
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従業員の教育・トレーニング
セキュリティ対策ソフトの導入
セキュリティ対策ソフトの導入は、ランサムウェア対策の基本となる取り組みです。マルウェアの検知や不審な挙動の監視を行うことで、感染の初期段階で異常を把握しやすくなります。
近年のランサムウェアは従来型のウイルス対策だけでは検知が難しいケースもあるため、振る舞い検知やリアルタイム保護といった機能を備えたソフトの活用が重要です。端末単体だけでなく、組織全体で統一した対策を行うことで被害の拡大を防ぐ効果が期待できます。
ソフトウェア更新と脆弱性対策
ソフトウェアやOSの更新を適切に行うことは、脆弱性を突いた攻撃を防ぐうえで重要な対策です。実際にランサムウェアの侵入では、VPN機器や各種ソフトウェアの未修正の脆弱性が悪用されるケースが多く確認されています。
更新プログラムを適用することでこうした既知の脆弱性が修正され、攻撃者に悪用されるリスクを抑えることができます。
定期的なバックアップと安全な保管
定期的なバックアップは、万が一ランサムウェアに感染した場合でも業務を復旧させるための重要な手段です。データが暗号化された場合でも、バックアップが確保されていれば復元が可能となり、事業への影響を最小限に抑えることにつながります。
ただし、バックアップデータ自体が攻撃の対象となるケースもあるため、ネットワークから切り離した環境に保管するなど、適切な管理が必要です。さらに、復旧手順をあらかじめ確認しておくことも重要なポイントです。
アクセス制御・認証の強化
アクセス制御や認証の強化は、不正ログインによる侵入を防ぐために欠かせない対策です。利用者ごとに適切な権限を設定し、必要最小限のアクセスに制限することで侵入後の被害拡大も抑えられます。
また、多要素認証を導入すれば認証情報が漏えいした場合でも不正アクセスを防ぐ効果が期待できます。認証基盤の見直しは、ランサムウェアの侵入リスクを抑えるうえで有効な対策の一つです。
従業員の教育・トレーニング
従業員への教育やトレーニングは、人的要因による感染リスクを低減するために重要です。ランサムウェアはメールやWebサイトなど日常業務の中で接触する機会が多く、利用者の判断が感染の有無を左右するケースも少なくありません。
不審なメールやリンクに対する適切な対応方法を理解しておくことで、被害の発生自体を防ぐことにつながります。さらに、定期的な研修や注意喚起を継続すれば組織全体のセキュリティ意識を維持でき、感染リスクの低減にも直結します。
ランサムウェア対策における課題
ランサムウェア対策はさまざまな手段を組み合わせて実施する必要がありますが、対策を講じたとしても新たな課題が生じるケースは少なくありません。攻撃手法の変化や組織内の運用体制など、複数の要因が絡み合うことで対策の実効性を維持することが難しくなる場面もあります。
ここでは、実際に企業が直面しやすい課題として以下の4つを解説します。
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高度化・巧妙化する攻撃への対応の難しさ
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社内全体でのセキュリティ意識のばらつき
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インシデント発生時の対応遅れ
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継続的な運用・監視体制の負担増大
高度化・巧妙化する攻撃への対応の難しさ
ランサムウェアの攻撃手法は年々高度化しており、従来の対策だけでは十分に対応しきれない状況が生まれています。攻撃者は複数の侵入経路を組み合わせたり、正規の通信や操作に見せかけたりすることで検知を回避する手口を用います。そのため、既存のセキュリティ対策を導入していても想定外の経路から侵入されるケースが発生します。
攻撃側の手法が継続的に変化することで防御側は常に対応を更新し続ける必要があり、対策の維持が難しくなる点が課題となります。
社内全体でのセキュリティ意識のばらつき
組織内でのセキュリティ意識にばらつきがあると、対策を講じていても十分な効果が発揮されない場合があります。特定の部門や担当者だけが対策を意識していても、別の部門で不適切な操作が行われればそこから感染が広がる可能性があります。
特にメールの取り扱いやファイルのダウンロードといった日常業務に関わる部分では、個々の判断が大きく影響します。このように、組織内での意識や理解度の差がセキュリティ対策の実効性を低下させる要因となります。
インシデント発生時の対応遅れ
ランサムウェアに感染した場合、初動対応の遅れが被害拡大につながるケースがあります。異常の検知や状況の把握に時間がかかると、その間に社内ネットワーク全体へ影響が広がる可能性があります。
また、対応手順が明確に整理されていないと誰がどのように対応すべきか判断できず、意思決定が遅れてしまうことも多いです。インシデント発生時の対応体制が不十分な状態だと被害を最小限に抑えることが難しくなるのは、ランサムウェア対策における課題の一つです。
継続的な運用・監視体制の負担増大
ランサムウェア対策は一度導入すれば完了するものではなく、継続的な運用と監視が必要です。しかし、セキュリティ対策の範囲が広がるほど、日々の運用負担は増大します。ログの確認やアラート対応、システムの更新管理など、多くの業務が発生し、担当者の負担が大きくなる傾向があります。
さらに、専門知識が求められる領域であるため、対応できる人材が限られる場合もあります。このように、継続的な運用を維持すること自体が負担となるのが課題として挙げられています。
ランサムウェア対策の強化にはシステム活用が重要
ランサムウェアの攻撃手法が高度化する中で、手作業や属人的な運用に依存すると対応の遅れや抜け漏れが発生しやすくなります。こうした課題を解消し、対策の実効性を高めるためには、システムを活用して検知・対応・管理を効率化することが重要です。
ここでは、システム活用によって得られる具体的なメリットを以下の内容に沿って解説します。
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侵入後の異常挙動を早期に検知できる
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被害範囲を特定し迅速に隔離できる
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バックアップを強化し安定して復旧できる
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セキュリティ対策を一元管理できる
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人的ミスを抑えて対策精度を高められる
侵入後の異常挙動を早期に検知できる
ランサムウェアは侵入後すぐに実行されるとは限らず、内部で活動を行ったうえで攻撃に至るケースがあります。
システムを活用することで、ファイルの不審な暗号化や通常とは異なる通信といった異常挙動を検知できるようになります。これにより、被害が拡大する前の段階で異常を把握でき、早期対応につなげることが可能です。
また、目視や手動での確認では見逃しやすい挙動も自動で監視できるため、検知精度を維持しやすいのが特徴です。
被害範囲を特定し迅速に隔離できる
ランサムウェアに感染した場合、被害がどの範囲に及んでいるかを迅速に把握することが重要です。
システムを活用することで感染した端末や影響を受けたサーバーを特定し、ネットワークから切り離す対応が行いやすくなります。これにより、他の端末への感染拡大を抑えることが可能となります。
また、手作業での調査や対応に比べてスピードが向上するため、初動対応の遅れによる被害拡大を防ぎやすくなるのがメリットです。
バックアップを強化し安定して復旧できる
システムを活用することで、バックアップの取得や管理を効率的に行えるようになります。定期的なバックアップを自動化することで取得漏れや更新忘れを防ぎ、常に最新のデータを保持しやすくなります。
また、復旧時の手順も標準化されるため、迅速かつ安定した復旧につながります。手動運用では発生しやすいミスやばらつきを抑えられる点も、システム活用で得られる効果の一つです。
セキュリティ対策を一元管理できる
複数のセキュリティ対策を個別に運用していると設定や管理が分散し、状況の把握が難しくなることがあります。
システムを活用すれば各種対策の状況やログを一元的に管理でき、全体のセキュリティ状態を把握しやすくなります。さらに、対応の優先順位を判断しやすくなり、効率的な運用につながります。
分散管理による見落としや対応漏れを防げるのは、システムを活用することで得られる大きなメリットです。
人的ミスを抑えて対策精度を高められる
ランサムウェア対策は多くの作業や判断を伴うため、人的ミスが発生するリスクがあります。システムを活用することで監視や対応の一部を自動化でき、作業のばらつきを抑えることが可能です。
また、設定や運用ルールを統一することで担当者による対応の差を減らし、安定した対策を維持しやすくなります。人手に依存しない仕組みを構築することで、全体の対策精度を底上げできるのが魅力です。
ランサムウェア対策ならICへ

引用元:システム開発のIC
ランサムウェア対策は個別の施策を導入するだけでは十分とはいえず、システム全体の構成や運用方法を踏まえて検討する必要があります。しかし、自社の環境に適した対策の全体像を整理できず、具体的な対応に踏み出せないケースも少なくありません。
ICは、ITソリューションやシステム開発を手がけており、企業の業務内容やシステム環境を踏まえた支援を行っています。既存の構成や運用状況を整理したうえで実際の業務に適した形でセキュリティ対策を検討し、無理のない形で導入を進めることを重視しています。
ランサムウェア対策の見直しやセキュリティ強化を検討している場合は、ぜひICにご相談ください。
まとめ
ランサムウェアは、企業の業務停止や情報資産の損失につながる重大なサイバー攻撃であり、感染経路や被害の傾向を正しく理解することが対策の第一歩となります。実際の侵入経路は多岐にわたり、メールやソフトウェア、ネットワーク機器など、日常業務の中にリスクが潜んでいます。そのため、セキュリティ対策ソフトの導入や脆弱性対策、バックアップの確保、認証強化、従業員教育といった複数の対策を組み合わせて実施することが重要です。
一方で、攻撃の高度化や運用負担の増大などにより、従来の対策だけでは十分に対応しきれない課題も顕在化しています。こうした状況に対応するためには、システムを活用して検知や対応、管理を効率化し、対策の精度と継続性を高めることが欠かせません。
自社の環境に合った対策を見直し、より実効性の高いセキュリティ体制の構築を進めたいと考えている場合は、ICを検討してみてはいかがでしょうか。