従来のWebサイト構築や運用には、専門的なプログラミングスキルが必要でした。しかし、Microsoft社が提供するPower Pagesを活用することで、プログラミングの知識がそれほど高くない人でも、高品質なWebサイトが作成できます。本記事では、Power Pagesのできること、活用ポイントを解説します。
Power Pagesとは
Power Pagesは、Microsoftが提供するPower Platformの1つであるWebサイト作成ツールです。コーディングの知識や経験がさほど高くなくても、ドラッグアンドドロップやテンプレートを使ってWebサイトを作成できます。また、Power Pagesは、MicrosoftのクラウドサービスであるAzureやDynamics 365などのデータソースと連携が可能です。これにより、作成したWebサイトをビジネスやコミュニケーションのツールとして活用できます。
Power Platformについては、下記の記事で詳しく解説しています。
Power PagesとPower Appsの違い
Power Pagesは、Power Appsポータルの進化版であり、2022年10月12日からPower Appsから独立して提供が開始されました。
Power Pagesの進化ポイントは、下記の通りです。
機能
|
説明
|
豊富なテンプレートの提供
|
- シーンやニーズに合わせた多様なWebページのテンプレートが用意されている
- テンプレートを活用することで、デザインや機能の実装に要する時間を大幅に短縮できる
|
編集領域ごとのワークスペースの実装
|
- 編集領域ごとに特化したワークスペースが用意されている
- サイトの構築・設計、Webページのデザイン設定
Dataverseテーブルビューの作成・変更など
|
Power PagesはPower Appsポータルの機能を継承しつつ、テンプレートの充実と編集領域ごとのワークスペースの実装により、より使いやすく進化したWebサイト作成ツールになりました。
Power Appsについては、下記の記事で詳しく解説しています。
Power PagesとSharePointの違い
Power PagesとSharePointはどちらもMicrosoftが提供するWebサイト構築ツールです。
SharePointは、主に社内でのファイル共有や情報共有を目的としたサービスです。チームメンバー間でのドキュメント管理、タスク管理、スケジュール管理などに活用できます。
両者の違いは、下記の通りです。
項目
|
Power Pages
|
SharePoint
|
UIの自由度
|
- ドラッグ&ドロップ操作でデザイン編集可能
- テンプレートを活用しつつ、自由にレイアウトやデザインを変更可能
- オリジナリティのあるWebサイト作成が可能
|
- 用意された決まったUIを利用しWebサイトを編集
- テンプレートは豊富
- デザインの自由度はPower Pagesと比べると限定的
|
利用場面
|
- コーディングの知識がなくてもWebサイトの作成や公開をしたい場合に最適
- 外部ユーザーとのコミュニケーションやサービス提供を目的としたWebサイト構築に最適
|
- 社内でのWebサイトやポータルサイトの作成をしたい場合に最適
- 部署間の情報共有や社内手続きの効率化など、主に内部ユーザー向けの用途で活用されることが多い
|
Power PagesとSharePointは、Webサイト構築ツールという点では共通していますが、UIの自由度と主な利用場面が異なります。用途や目的に応じて適切なツールを選択することが重要です。
Power Pagesができること・特徴
Power Pagesができること・特徴は、下記の通りです。
- 直感的なデザイン環境の提供
- データの統合
- 高いセキュリティ機能
- カスタムコード機能
- 分析・レポート
直感的なデザイン環境の提供
Power Pagesは、ユーザーが直感的に扱えるデザイン環境を提供してくれます。
コーディングの知識や経験がなくても、ドラッグ&ドロップの簡単な操作で、テキストボックスやボタン、画像などの各種コンポーネントを自由に配置し、見栄えの良いレイアウトを実現できます。また、Power Pagesには多くのテンプレートが用意されており、目的に応じたデザインを選ぶだけで、Webページが作成可能です。例えば、企業サイトやECサイトなど、様々なシーンに対応したテンプレートが揃っています。テンプレートをベースに作成することで、デザインの設計から着手する手間が省け、短時間でプロフェッショナルなサイトを立ち上げられます。
データの統合
Power Pagesには、Microsoft Dataverseというデータベース機能が組み込まれています。Dataverseを活用することで、データの取り込みや管理、共有が容易にできます。
例えば、顧客情報や在庫情報などのデータをDataverseに格納し、Power Pagesで作成したWebサイトやアプリケーションと連携させるなどが考えられるでしょう。また、Power Pagesは外部データソースとの連携にも対応しています。具体的には、SQL Server、SharePoint、OneDrive、Excelなどからデータを取り込み、Power Pagesでの活用が可能です。
高いセキュリティ機能
Power Pagesは、Webサイトの安全を守るセキュリティ機能が充実しています。
Power Pagesは、Azure Active Directoryと統合されているので、ユーザー認証や権限管理を簡単に行うことが可能です。また、ページやデータごとに細かいアクセス権限を設定できるため、特定のユーザーやグループだけに限定した情報共有もできます。
Power Pagesを活用すれば機密データの漏えいリスクを最小限に抑え、Webサイトの運用ができるでしょう。
カスタムコード機能
Power Pagesにはカスタムコード機能があり、HTMLやCSS、JavaScriptの言語を使用してページの外観や機能を高度にカスタマイズできます。
例えば、特殊なレイアウトやデザインを適用したり、独自の機能を追加したりすることが可能です。テンプレートだけでは実現が難しい要件があっても、カスタムコードを記述することで、理想通りのWebサイトを構築できます。ただし、カスタムコードを活用するには、HTML、CSS、JavaScriptについての一定の知識と経験が必要です。
分析・レポート
Power Pagesには分析機能が搭載されており、ページビュー数や訪問者数、滞在時間などのデータを収集し、ユーザーの行動やアクションを可視化できます。収集したデータを多角的に分析すれば、Webサイトの問題点や改善点を発見できるでしょう。
また、分析結果に基づいてサイトの最適化を図ることで、ユーザビリティの向上やコンバージョン率の改善にもつながります。
Power Pagesのライセンス・料金
Power Pagesを利用するためには、職場用のMicrosoftアカウントが必要です。
料金プランは、サブスクリプション形式で提供されています。
料金は、ユーザーのタイプによって2つに分かれています。
ユーザータイプ
|
月額料金
|
適したサイト
|
認証済みユーザー
|
29,985円
|
サインインして利用するサイト
|
匿名ユーザー
|
11,244円
|
サインインが不要なサイト
|
利用するサイトの性質に応じて、適切なプランを選択することが重要です。認証済みユーザーは、セキュリティ面で優れており、機密性の高い情報を扱うサイトに適しています。一方、匿名ユーザーの場合は、サインインが不要な情報提供サイトなどに適しています。
詳しくは、下記の公式ページでご確認ください。
Power Pages:料金プラン | Microsoft Power Platform
Power Pagesの活用事例
Power Pagesの活用事例は、下記の通りです。
習い事教室サイト
出典:プログラムの登録テンプレート | Microsoft Learn
習い事教室サイトを作成する際、Power Pagesの「プログラムの登録テンプレート」を活用することで、登録サイトに必要な機能を簡単に実装できます。このテンプレートは、習い事教室のようなプログラム登録サイトを想定して設計されており、子供の習い事に通わせたい保護者の方をターゲットとしています。
Power Pagesの「プログラムの登録テンプレート」を使えば、下記のような機能をサイトに設定可能です。
- アカウントの新規作成
- 習い事への登録
- スケジュールの修正や確認
- 習い事に関する情報をメールで受け取る
- 習い事一覧の管理、編集、追加、削除
このテンプレートを活用することで、保護者の方が簡単に習い事教室へ登録でき、スケジュールの確認や変更も簡単にできるサイトが構築できるでしょう。
スケジュール管理サイト
出典:会議のスケジュールと管理テンプレート | Microsoft Learn
会議のスケジュール管理は、企業の生産性向上に直結する重要なタスクです。Power Pagesの「会議のスケジュールと管理テンプレート」を活用すれば、会議等のスケジュール管理サイトを簡単に作成できます。
具体的には、下記のような機能がテンプレートに含まれています。
- カレンダービューでの予約状況の確認
- 予約フォームでの日時、場所、人の選択
- 予約の確認、キャンセル、変更機能
- 管理者による予約不可日時の設定
- 予約に関するメール通知
これらの機能により、利用者は希望する日時・場所での会議を簡単に予約でき、管理者は予約状況を一元管理できます。メール通知機能によって、予約の変更や追加にも迅速に対応可能です。
Power Pagesを効果的に活用するポイント
Power Pagesを効果的に活用するポイントは、下記の通りです。
- 明確な目的と目標を設定する
- ユーザビリティの向上を意識する
- データを有効活用する
- 効果的な運用を目指すなら外注を検討する
明確な目的と目標を設定する
Power Pagesを活用する際、まずは明確な目的と目標を設定することが重要です。情報提供サイト、顧客サポートサイト、ECサイトなど、サイトの役割を明確化し、月間訪問者数やコンバージョン率などの具体的な数値目標を立てましょう。定期的に達成状況を確認し、必要に応じて軌道修正を行うことで、効果的なサイト運営につながります。
ユーザビリティの向上を意識する
Power Pagesでウェブサイトを作成する際は、ユーザビリティの向上を常に意識することが重要です。ユーザーが目的の情報に迅速にアクセスできるよう、サイト構成を最適化し、わかりやすいナビゲーションメニューを設置しましょう。
具体的には、ユーザーの目的や関心に合わせてカテゴリを分類し、階層構造を適切に設計します。メインメニューは5〜7項目程度に絞り込み、重要度の高いページへのリンクを目立つ位置に配置します。また、検索ボックスを設けることで、ユーザーが求める情報へのダイレクトアクセスができるでしょう。
データを有効活用する
Power Pagesで作成したウェブサイトのデータを最大限に活用するには、Power BIとの連携が効果的です。Power BIは、データの可視化と分析に優れたMicrosoftのBIツールです。Power PagesとPower BIを組み合わせることで、ウェブサイトのパフォーマンスやユーザー行動を多角的に分析できます。例えば、ページごとの訪問者数の推移やユーザーの属性別の行動分析など、様々な切り口でデータを可視化できるでしょう。
Power BIについては、下記の記事で詳しく解説しています。
『Power BIとは?できることやライセンス価格、活用事例を詳しく解説』
効果的な運用を目指すなら外注を検討する
Power Pagesの導入や運用は自社の人的リソースだけでは難しく、ITに関する知識やスキルが必要です。
自社だけでPower Pagesの運用が難しい場合は、システム開発会社への外注がおすすめです。システム開発会社には豊富な経験とスキルが蓄積されており、自社に最適なソリューションを提供してくれます。
人的リソース不足を補い、スムーズな導入と運用を目指したい場合は、システム開発会社への外注を検討してみましょう。
システム開発はICにお任せください
引用元:システム開発のIC
株式会社ICでは、経験豊富なエンジニアが多数在籍しており、お客様の要件に合わせてシステム開発から運用・保守までをトータルでサポートいたします。Power Pagesをはじめとしたローコード開発にも強みを持ち、各種システムの開発や設計なども支援いたします。
また、セキュリティ対策や運用保守体制の構築など、開発だけでなく様々な側面からお客様をサポートいたします。
自社でPower Pagesを活用したいと考える企業様は、ぜひICにご相談ください。
システム開発のIC
まとめ
本記事では、Power Pagesのできること、活用ポイントを解説しました。
Power Pagesは、直感的な操作でWebサイトを作成できるローコード開発ツールです。
ドラッグアンドドロップやテンプレートを活用し、データ統合や高いセキュリティ機能を備えたサイトが構築できます。Power Pagesを効果的に活用するためには、明確な目的と目標の設定、ユーザビリティの向上、データの有効活用が重要です。Power Pagesを活用し、業務効率化とユーザー満足度の向上を実現しましょう。
Power Pagesの導入を検討している場合は、システム開発のICをご検討ください。
※2024年7月時点の仕様です。現在は異なっている可能性があります。