近年、中小企業においてもIT化やデジタル化の重要性が高まっています。しかし、経営層のITリテラシー不足やIT化の優先順位が低いなどの課題があり、十分に進められていないのが現状です。こうした課題を放置しておくと、ビジネスチャンスを逃すだけではなく、競合他社に大きく差をつけられる恐れがあります。本記事では、中小企業のIT課題や解決するメリットや方法を解説します。
中小企業のIT化の現状
中小企業のIT化やデジタル化の遅れは、日本にとって大きな課題の一つです。
中小企業庁の調査「2023年版中小企業白書・小規模企業白書概要」によると、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、IT化やデジタル化に取り組む中小企業は増え続けています。
しかし、2022年時点でIT化やデジタル化を達成できている企業は3割程度にとどまっています。また、中小企業基盤整備機構の「中小企業のDX推進に関する調査」によると、DXに取り組んでいる企業は、14.6%と少ないことが明らかになりました。
さらに、「必要だと思うが取り組めていない企業」と「取り組む予定がない企業」を合わせると、68.6%にも上ることから、中小企業におけるIT化やデジタル化はまだ十分とはいえない状況です。
中小企業のIT課題
中小企業のIT課題は、下記の通りです。
- 経営層のITリテラシーの不足
- IT人材の不足
- システム開発や導入に必要な予算の不足
- IT化やデジタル化の優先順位が低い
経営層のITリテラシーの不足
経営層のITリテラシーが低いと、IT化やデジタル化の必要性や効果を十分に理解できず、ITシステムの導入がスムーズに進まない傾向にあります。
具体的には下記のような状況が見受けられます。
- ITの知識や理解が乏しく、自社にどのようなIT活用が必要かわからない
- IT投資の重要性を理解していない
- デジタル化のメリットやデメリットを把握していない
- IT人材の育成や確保の必要性を感じていない
こうしたITリテラシー不足により、システムの導入や運用に必要な投資判断を下せず、IT化やデジタルへの対応が遅れてしまうことがあります。
IT人材の不足
中小企業に限らず、IT人材の不足は慢性的な課題となっています。
ITエンジニアをはじめとするIT人材は需要が高く、大手企業やIT企業が好条件で採用しているため、中小企業では採用が難しい状況が続いています。
自社でIT人材を採用し育成することも一つの方法ですが、育成ノウハウやリソースの不足から、思うように進められないことが多いです。
例えば、OJTを実施したくても、先輩エンジニアが業務に追われて十分な指導時間を確保できないなどが考えられます。
このようにIT人材の確保と育成は容易ではありませんが、中小企業がIT化やデジタル化を進める上で避けては通れない重要な課題といえるでしょう。
システム開発や導入に必要な予算の不足
中小企業では予算が限られていることが多く、システム開発や導入に多額の費用が必要になることがネックとなっています。
例えば、業務効率化のために活用されるRPAツールの導入には、初期費用だけで数十万円から数百万円以上かかることがあります。
また、業務システムを開発する場合も、規模によっては数十万円から数百万円の費用が必要となる場合があるでしょう。さらに、開発や導入後も、システムの運用・保守にランニングコストが継続的に発生します。中小企業では、これらの費用を捻出することが難しいケースが多く、ITシステムの導入や開発が進まない一因となっています。
IT化やデジタル化の優先順位が低い
中小企業では、目の前の業務や売上げなどを優先し、IT化やデジタル化への取り組みが後回しになることがあります。IT化やデジタル化は、長期的にみれば企業の利益や業務の効率化につながるでしょう。しかし、導入から効果が出るまでには一定の時間を要するため、優先順位が低くなってしまう傾向にあります。
導入後も一定期間は、運用方法の習得やデータ移行などに時間を要するため、効果が表れるまでにタイムラグがあります。そのため、短期的な利益や業務効率化を重視する中小企業では、IT化やデジタル化への投資を先送りしてしまうケースがあります。
中小企業のIT課題を放置する危険性
中小企業がIT課題を放置すると、下記のような危険性があります。
リスク
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内容
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セキュリティリスクの増大
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- システムの老朽化やソフトウェアの更新不足によりセキュリティリスクが高まる
- セキュリティ対策不十分だとデータ漏洩や不正アクセスの危険性が増加する
- 企業の信頼性や顧客の信頼を損ねる可能性がある
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競争力の低下
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- 競合他社との差が開き、市場での優位性を失ってしまう危険性がある
- 旧態依然としたやり方を続けていては競争に勝ち残ることが難しくなる
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これらの問題は、企業の存続にも関わる重大な経営課題といえるでしょう。中小企業は、自社のIT課題を正しく認識し、解決に向けた取り組みを始める必要があります。
中小企業が自社のIT課題を解決するメリット
中小企業が自社のIT課題を解決するメリットは、下記の通りです。
- ビジネスチャンスの拡大が期待できる
- 業務効率の向上が期待できる
- 働き方改革が促進できる
ビジネスチャンスの拡大が期待できる
中小企業が自社のIT課題を解決することで、ビジネスチャンスの拡大が期待できます。
例えば、CRMシステムを導入することで、顧客の購買履歴や行動パターンを分析し、パーソナライズされたサービスや製品を提供できます。
これにより、顧客一人ひとりのニーズや好みに合わせたアプローチが可能となるため、顧客満足度が向上し、リピート購入や口コミによる新規顧客の獲得が期待できるでしょう。
業務効率の向上が期待できる
中小企業が自社のIT課題を解決することで、業務効率の向上が期待できます。
例えば、RPAツールを導入することで、データ入力や請求書作成・送付などの定型業務を自動化できます。これにより人的ミスが減り、業務効率を大幅に向上できるでしょう。
また、RPAの導入によって浮いた時間を、企画立案や商品開発、営業活動など、より付加価値の高い業務に充てられます。社員一人ひとりが付加価値の高い業務に注力できるようになれば、企業全体の競争力強化につながります。
働き方改革が促進できる
中小企業がIT課題を解決することで、働き方改革を大きく促進できます。
例えば、下記のような効果が期待できるでしょう。
取り組み例
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効果
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クラウドサービスの活用
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テレワークなど柔軟な働き方ができる
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ペーパーレス化
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書類管理の手間やコスト削減につながる
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Web会議システムの導入
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移動時間の削減による生産性向上が期待できる
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働き方改革が促進できれば、ワークライフバランスに配慮した働き方ができるため、社員のモチベーションアップや定着率向上につながるでしょう。
中小企業がIT課題を解決する方法
中小企業がIT課題を解決する方法は、下記の通りです。
- 自社のIT課題やビジョンを明確にする
- スモールスタートできる課題から解決する
- 補助金・助成金を活用する
- システム開発会社へ依頼する
自社のIT課題やビジョンを明確にする
中小企業がIT課題を解決するためには、自社の具体的な課題を洗い出し、解決後のビジョンを明確にすることが重要です。
具体的には、社内の業務を見直し、時間がかかっている業務やルーティン業務など、IT化やデジタル化によって効率化できる業務を特定します。
例えば、紙ベースの書類作成や手作業でのデータ入力などが挙げられます。また、同業他社がどのようなITツールを導入し、業務効率化を図っているのかを調査し、自社との差を明らかにすることも大切です。
これにより、自社のIT化やデジタル化の遅れを認識し、優先的に解決すべき課題を特定できます。さらに、IT課題を解決して何を実現したいのかというビジョンを明確にすることも重要です。現場の意見を踏まえてビジョンを設定することで、社員の理解や協力を得やすくなり、IT化やデジタル化の取り組みがスムーズに進むでしょう。
スモールスタートできる課題から解決する
中小企業がIT課題を解決する際は、費用や社内のITリテラシーを考慮し、スモールスタートできる課題から解決することが重要です。
IT課題の解決には、システム開発や導入、運用などにコストがかかります。予算が限られている中小企業では、いきなり全社的なIT化やデジタル化を進めるのは難しい場合があるでしょう。そのため、特定の業務や部門から小さく始めることがおすすめです。導入対象を絞ることで、初期コストを抑えられるだけでなく、関係者への教育もしやすくなります。
補助金・助成金を活用する
中小企業がIT課題を解決する際は、補助金・助成金を活用することで、費用面の負担を軽減できます。
例えば、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」は、中小企業のIT化やデジタル化を支援する代表的な補助金です。この補助金は、中小企業・小規模事業者などが取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するものです。
ものづくり補助金の対象となる経費は、類型によって異なりますが、主に下記のようなものが挙げられます。
- 機械装置の購入費用
- システム構築費
- 技術導入に関わる費用
- 広告宣伝費
- 専門家のコンサルティング費用
これらの経費を補助金で賄うことで、自社の資金負担を抑えながら、IT化やデジタル化に必要な投資を行えます。
システム開発会社へ依頼する
中小企業がIT課題を解決する際は、専門知識やノウハウを持つシステム開発会社への依頼がおすすめです。
自社だけでIT課題を解決しようとしても、具体的な課題の特定や解決までのプロセスがわからず、思ったように進められないことがあります。また、システムを導入できたとしても人的リソースが不足していれば、十分に活用できない場合もあるでしょう。
そのため、自社のIT課題を効率的に解決するには、ITコンサルティングとシステム開発の実績が豊富なシステム開発会社への依頼がおすすめです。専門知識を持つITコンサルタントであれば、自社のIT課題を的確に分析し、最適な解決方法を提案してくれるでしょう。
さらに、コンサルティングだけでなくシステム開発も行える会社であれば、課題分析から開発、導入、運用までをワンストップで依頼できるため、自社だけでは解決が難しいIT課題も、スムーズに解決できます。
ITコンサルタントについては、下記の記事で詳しく解説しています。
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引用元:システム開発のIC
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まとめ
本記事では、中小企業のIT課題や解決するメリットや方法を詳しく解説しました。
中小企業のIT課題を放置すると、セキュリティリスクの増大や業務効率の低下、競争力の低下などの危険性があります。IT課題を解決することで、ビジネスチャンスの拡大や業務効率の向上、働き方改革の促進などが期待できます。
中小企業がIT課題を解決するには、自社の課題やビジョンを明確にし、スモールスタートできる課題から着手することが大切です。本記事を参考に、IT課題を解決し企業競争力を高めていきましょう。
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