ハーフスクラッチ・フルスクラッチの違いとは？特徴や向いているケースを紹介

業務に最適なシステムを導入したいと思ったとき、避けて通れないのが「開発手法」の選択です。中でもよく検討されるのが、「ハーフスクラッチ」と「フルスクラッチ」。それぞれに特長やコスト構造、向いているケースが異なるため、導入効果を最大化するには事前の理解が欠かせません。

本記事では、ハーフスクラッチとフルスクラッチの違いや、それぞれのメリット・デメリット、向いている導入パターンまでを詳しく解説します。あわせて、ハーフスクラッチ開発をスムーズに進めるためのステップや、ICがご提供する支援内容もご紹介します。システム開発の選択肢に迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

ハーフスクラッチ・フルスクラッチの違いとは？

システム開発を検討する際に、「ハーフスクラッチ」や「フルスクラッチ」といった開発手法の違いを理解しておくことは、適切なシステム導入を実現するうえで非常に重要です。ここでは、それぞれの特徴を整理しながら、目的や予算、運用体制に合った開発手法を選ぶための判断材料をご紹介します。

ハーフスクラッチ（ローコード開発）とは

ハーフスクラッチ開発とは、すでに存在するパッケージシステムやプラットフォームをベースに、必要な部分だけをカスタマイズして開発を行う手法です。「ローコード開発」と呼ばれることもあり、スクラッチ開発とパッケージ導入の中間に位置します。

業務に必要な基本機能は標準で備わっており、個別の業務フローやデータ要件に合わせて部分的に開発や設定を加えることで、自社に最適なシステムを短期間かつ低コストで構築することができます。近年では、UIの自由度や連携機能の拡張性にも優れたローコードツールが増えており、IT人材が限られる現場でも柔軟に対応できる点が大きな魅力です。

フルスクラッチ開発とは

一方、フルスクラッチ開発は、既存のソフトウェアやテンプレートを使用せず、ゼロからシステムを設計・構築する開発手法です。業務要件や将来的な拡張性、セキュリティ要件などに応じて完全にオリジナルな設計ができるため、非常に高い自由度を誇ります。

ただし、設計から開発、テスト、運用に至るまで多くの工数と時間がかかり、コストも膨らみやすいため、プロジェクトマネジメントや綿密な要件定義が不可欠です。また、長期的な保守体制や担当技術者の確保も重要なポイントとなります。

ハーフスクラッチ開発の特徴と向いているケース

ハーフスクラッチ開発は、パッケージソフトの汎用性とフルスクラッチの柔軟性を両立した中間的なアプローチとして、さまざまな業種・業態で注目されています。ここでは、そのメリット・デメリットを整理し、どのようなケースに適しているかをご紹介します。

ハーフスクラッチ開発のメリット

ハーフスクラッチ開発の最大のメリットは、開発スピードとコスト効率のバランスに優れている点です。ベースとなるシステムやプラットフォームを活用することで、設計や実装の一部を共通化でき、ゼロから構築するフルスクラッチと比較して開発期間を短縮できます。また、必要な機能だけをカスタマイズするため、開発コストの抑制にもつながります。

さらに、UIや業務フローの柔軟な調整が可能であり、業務にフィットする操作性や画面構成を実現しやすいことも特長です。加えて、ベースとなるプラットフォームにアップデートや保守サポートがある場合、システム全体の安定運用や将来的な拡張にも対応しやすくなります。

ハーフスクラッチ開発のデメリット

一方で、ハーフスクラッチ開発にはいくつかの制約も存在します。ベースシステムに依存する構造であるため、カスタマイズの自由度には限界がある場合があります。特に、複雑な業務要件や独自仕様が多い場合、思うように機能が実装できなかったり、非効率な構成になってしまう可能性もあります。

また、ベースとなるプラットフォームの仕様変更やサポート範囲の見直しが、将来的な運用に影響を与えるケースもあるため、導入前の選定と設計が非常に重要になります。

ハーフスクラッチ開発が向いているケース

ハーフスクラッチ開発は、次のようなケースで特に効果を発揮します。

短期間で最低限の業務要件を満たすシステムを立ち上げたい場合

既存のパッケージでは一部機能が足りないが、フルスクラッチを行うほどではない場合

限られたITリソースの中で、運用効率と柔軟性の両立を目指したい場合

今後の業務変化に応じて段階的に機能拡張を検討している場合

特に、中堅企業や自治体、期間限定のプロジェクトにおいては、コストとスピード、業務適合性のバランスを取れる開発手法としてハーフスクラッチは有力な選択肢になります。

フルスクラッチ開発の特徴と向いているケース

フルスクラッチ開発は、既存のパッケージやテンプレートに依存せず、要件に合わせてゼロからシステムを設計・構築する開発手法です。柔軟性の高さが最大の魅力でありながら、その分だけ開発リソースやコスト、期間も大きくなります。ここでは、フルスクラッチ開発の利点と注意点、そして適しているケースについて整理します。

フルスクラッチ開発のメリット

フルスクラッチ開発の最大の強みは、自社固有の業務プロセスや要件に完全にフィットしたシステムを構築できる点です。業務フローに合わせて最適な設計ができ、ユーザーインターフェースや機能配置も一からカスタマイズ可能なため、現場にとって操作性の高いシステムを実現できます。

また、将来的なシステム連携や拡張も想定しながら開発できるため、長期的な視点での運用を前提とした戦略的なIT投資として位置付けることができます。さらに、ベンダーロックインのリスクが低く、自社の裁量でシステムの運用・保守をコントロールできるのも大きな利点です。

フルスクラッチ開発のデメリット

一方で、フルスクラッチ開発は初期費用や開発期間が大きくなりやすいという明確なデメリットがあります。設計・開発・テスト・保守まで一から行うため、プロジェクトマネジメントの難易度も高くなり、要件定義や社内調整に多くの時間と労力を要します。

また、開発ベンダーに依頼する場合、知見やスキルが不足していると品質や納期に影響が出る可能性もあります。さらに、長期的な保守・運用の体制づくりにも配慮が必要です。自社での技術的な支援体制が整っていない場合は、外部依存度が高まるリスクも考慮しなければなりません。

フルスクラッチ開発が向いているケース

フルスクラッチ開発は、次のようなケースに適しています。

業界特有の業務要件が多く、既存システムでは対応しきれない場合

既存システムの構造が複雑で、再構築を前提に見直したい場合

将来的な事業展開やデータ活用を見据えて、戦略的にIT基盤を整備したい場合

セキュリティ要件やガバナンス要件が高く、外部パッケージでは不安がある場合

大規模な企業や公共性の高い業種、または自社サービスとして独自のIT基盤を構築したい場合

上記の場合には、フルスクラッチ開発による自由度と柔軟性の高さが、大きなアドバンテージとなります。

ハーフスクラッチ開発の導入ステップ

企業がハーフスクラッチ開発を成功に導くには、全体の流れを整理し、段階的に進めることが不可欠です。以下の4ステップで準備から運用までを明確に進めましょう。

要件定義と既存資産の棚卸し

まずは「何が必要で、今手元にある資産（既存システムや運用ルール）は何か」を整理することから始まります。具体的には、業務プロセスのフロー図を洗い出し、既存システムの機能・データ構造を可視化します。これにより、ハーフスクラッチとして再利用可能なパーツと、新規開発が必要なポイントが明確になります。

カスタマイズ範囲の設定

次に「どこをカスタマイズし、どこは標準で使うか」のラインを決めます。UIの変更が必要か、業務ルールの自動化が必要かなど優先順位をつけながら、カスタマイズ領域を具体的に定義します。この段階で要件の粒度を揃えておくことで、後工程での手戻りや追加コストを抑えやすくなります。

開発・テスト・導入までの流れ

要件が固まったら、開発体制を組成し、デザイン設計／プログラミング／テスト／本番環境へのリリースという流れで進めます。ここでは特に「テスト計画」が重要で、単体テスト・結合テスト・業務テストの実施とフィードバックを繰り返すことで、品質と使い勝手を担保します。また、並行してユーザートレーニングやマニュアル整備も行います。

導入後の保守・運用体制の構築

システム導入後は、運用担当者による定期的なリリース管理、障害対応、ユーザーからの問い合わせ対応が発生します。運用フローや、障害が生じた際の報告・対応体制をあらかじめ設計し、SLA（サービスレベル合意）を共有しておくことで、稼働後のトラブルを最小化できます。また、さらに機能拡張が必要となった際の対応窓口や見積、スケジュール検討も含めた保守体制を整えておくことが重要です。

ICではハーフスクラッチをはじめとしたシステム開発を支援しています

引用元：システム開発のIC

ICでは、豊富な開発実績とノウハウを活かし、ハーフスクラッチを含む各種システム開発を総合的に支援しています。まず要件定義から既存資産の棚卸し、カスタマイズ領域の設計まで、上流工程を丁寧に設計し、貴社業務に最適な開発プランをご提案。開発・テストでは、品質管理基準を満たす設計と多層テストを実施し、ユーザーの使いやすさを担保します。さらに導入後も、運用体制の整備や将来的な拡張対応までフォローし、長期的な視点で安定稼働・成長を支える体制が整っています。

ベースシステムに対して必要最小限のカスタマイズを行うハーフスクラッチに加え、フルスクラッチやパッケージカスタマイズなど、プロジェクトに応じた最適な開発方式を柔軟に選択可能です。ICのエンジニア・プロジェクトマネージャーが連携し、効率的かつ高品質なシステム導入を実現します。

まとめ

ハーフスクラッチは、コスト・スピード・柔軟性のバランスを取りながら、業務要件に合ったシステムを構築する最適な選択肢です。既存資産の活用や段階的な機能拡張が可能で、フルスクラッチの自由度も部分的に取り入れられるため、限られたリソースでの導入に向いています。

一方、自由度の高さゆえに設計・選定の段階で要件の明確化とプラットフォーム選びが重要となります。ICでは、その設計支援から導入後の運用体制構築までワンストップでサポートし、自社の状況にふさわしい最終判断を支援します。これからのシステム導入を検討されている方は、ぜひ一度ICへご相談ください。