大手金融機関のIT基盤を変革し、コア業務への集中を可能にしたプライベートクラウド化構築

大手金融機関のIT基盤を変革し、コア業務への集中を可能にしたプライベートクラウド化構築

今日の企業ITインフラにおいて、効率化とコスト削減は避けて通れない課題です。今回、大手金融機関が直面していたのは、各サブシステム単位で仮想基盤を個別に構築・運用していたことによる、深刻なコスト問題でした。

この課題を解決すべく立ち上がったのが、既存の基盤を一つに集約する仮想化統合基盤の構築プロジェクトです。当初は「大規模仮想基盤のリリース」という計画でしたが、案件途中で「プライベートクラウドとしてのサービス化」という大規模な要件の変更があり、それに対応する技術力も求められた大きなプロジェクトとなりました。

この記事に含まれる内容
  1. #技術者インタビュー
  2. #仮想化統合基盤構築
  3. #VMware

    #ITインフラ

プロジェクト概要

  • 業種        : 金融業
  • 対象領域      : IT部門
  • ソリューション   :仮想化統合基盤構築
  • 活用したプロダクト:  VMware、Oracle Linux KVMなど
  • 実施期間      : 2023年4月~2024年11月  運用は現在も継続中
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課 題

各サブシステムごとに個別で仮想基盤を構築・運用していたため、サーバーやストレージの都度調達が必要となり、イニシャルコストの高騰と長期リードタイム、運用の煩雑化が深刻な課題となっていた。

解 決 策

既存の個別基盤を統合し、仮想化統合基盤を構築。途中でプライベートクラウド化の要件変更に対応し、ConfluenceやJIRAを活用したポータル構築、帯域・IOPS制御などの技術設計で効率的な運用を実現した。

効 果

プライベートクラウド化により、仮想基盤調達や設計・運用が不要となり、コストと時間を大幅削減。利用部門はOSやアプリ開発などコア業務に集中できるようになり、運用効率化と業務スピード向上を実現した。

Interview (1)

金融業における、仮想化総合基盤構築業務を行ったW氏に詳しいお話を伺いました。


プロジェクトの背景

コスト問題の大きな個別調達からの脱却と仮想化統合基盤構築への挑戦

増大する調達コストと長期化するリードタイム

​​本プロジェクトは、大手金融機関における仮想化統合基盤の構築を目的としていました。
以前、お客様内ではサブシステム単位やプロジェクト単位で個別に仮想基盤が構築・運用されており、その結果、プロジェクトごとにサーバーやストレージなどのハードウェアの調達を行わなくてはならず、その都度、見積もり、発注を行う必要があり、調達コスト(イニシャルコスト)が高騰していました。
さらに、ハードウェアの調達には、ベンダーから物が届くまで長期リードタイムが発生し、このリードタイムも課題でした。

統合化への必要性と専門家の招聘

​​これらの課題(調達コストの高騰、運用の煩雑さ、リードタイムの長期化)を解決するため、仮想化基盤への統合化が必須とされました。
ストレージや仮想化基盤の有識者が必須だったため、スペシャリストの参画が求められました。ICは、以前の基幹DB更改プロジェクトでのストレージ担当としての高い評価と、長年の維持保守業務によるお客様の環境・運用への熟知を評価いただき、テクニカルリーダーとしての参加を依頼されました。

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プロジェクトのポイント

要件変更への対応力で、限られたリソース内でのサービス化に成功

このプロジェクトにおける大きな挑戦と、それを乗り越えるための重要なポイントは以下の通りです。

予期せぬ要件変更:プライベートクラウド化への対応

当初の計画は「大規模仮想基盤のリリースのみ」でしたが、案件途中で要件が大幅に変更され、プライベートクラウドとしてサービス化が求められました。
このサービス化に伴い、通常では実施しない業務も多数発生しました。具体的には、サービス範囲の定義、役割と責任の定義、SLA(サービス品質に関する合意)の設定、ポータルサイトの作成、利用者向けガイドラインの作成、および社内アナウンスの実施などです。

遅延を防ぐための工夫と技術的な提案

要件変更によるプロジェクト遅延を防ぐため、ICでは以下の工夫と対策を実施しました。

  1. リソースの確保と体制整備
    維持保守メンバーを案件途中から参画させ、運用フローや運用手順書の整備にアサインしました。
  2. 既存資産の活用によるポータルサイト構築
    お客様の資産であったナレッジマネジメントツール(Confluence)を活用してポータルページを作成しました。
    サーバー払い出し依頼が来ると、プロジェクト管理ツール(JIRA)でチケットが発行され、運用者が受け取るという一連の運用スキームの構築に成功しました。
  3. サービス遅延リスク回避のための技術的制御
    基盤統合によりリソース負荷が集中しサービス遅延が発生するリスクを回避するため、ネットワークに帯域制御を定義しました。
    ストレージに対してIOPSの上限を定義することを提案・設計し、処理の集中を防ぐための「交通整理」を行いました。
    本番環境ではリソースのオーバーコミットをさせないよう、CPUやメモリを完全予約することを提案し、設計を進めました。

プロジェクトの効果

プライベートクラウド化で運用の効率化が顕著に

プライベートクラウド化されたことにより、お客様側では顕著な効果が現れました。

・業務の省略化: 今まで各案件で行っていた仮想基盤の調達、設計、運用が省略化されました。
・コア業務への集中: サブシステムの更改やリリースに必要なOS、ミドルウェア、アプリケーション開発などに集中できる状況となりました。
・コストと時間の削減: ハードウェア調達のリードタイムや、個別プロジェクトごとの初期投資(イニシャルコスト)が不要となりました。

評価と継続的な協力体制

今回のプロジェクトでICは、仮想化基盤の知識やサービス運用化の成功を高く評価いただきました。現在も引き続き、運用担当リーダーとしてプライベートクラウドの運用に従事しております。
お客様からは「途中で要件が変わったにも関わらず、期間内にプロジェクトを完了できて助かりました。ICさんのおかげです」という感謝の言葉をいただきました。
今回の成功を受け、リリースした基盤のハードウェアリソース増強を行う、次期リソース増強プロジェクトにもメインの立場で参画しております。

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プロジェクトを通して

私自身も、普段の案件では実施しないポータルサイトの作成や利用者向けガイドラインの作成、SLAや運用体制・フローの設計といった、粒度の細かい定義付けや文書作成の経験が得られ、非常に良い経験となりました。このプロジェクトでは、技術的な専門性はもちろんですが、サービス設計や調整能力が培われたと感じています。

今後も様々なご要望にお応えできるよう、引き続き技術力の向上に努めてまいります。

 

※記載されている会社名、製品名およびサービス名は、各社の登録商標または商標です。

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