SAPの老朽化システムを刷新 アドオン削減と業務標準化に成功

SAP R/3システム(SAP ECC 6.0)のサポート終了に伴い、SAP S/4HANAへの移行を軸にした開発支援事例。
今回ご紹介させていただくのは、SAP S/4HANAへの移行を軸に、膨大なアドオンの削減と標準機能への移行を進め、業務の効率化と保守性の向上を実現した事例をご紹介します。ICでは、SAPの導入・バージョンアップで必要になる上流工程(要件定義・基本設計)から開発工程(体制整備・推進)まで支援しています。リリース後も安心して活用いただけるよう保守運用やサポートにも力をいれています、
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プロジェクト概要
- 業種 : 製造業
- 対象領域 : 情報システム部門
- ソリューション : バージョンアップ、業務プロセス標準化、アドオン削減
- 活用したプロダクト: SAP S/4HANA、各種SAPモジュール、社内既存アドオン資産
- 実施期間 : 2017年~2020年(複数プロジェクト)

課 題 |
SAP R/3 6.0が2027年にサポート終了を迎えることをきっかけに、システムの全面的な刷新が急務に。しかし多数のアドオンプログラムが組み込まれ、ドキュメントもないことが多いことが判明する。 |
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解 決 策 |
まずは、SAP S/4HANAへの移行を軸に見直しを行う。標準機能に置き換えることで保守性と将来的な拡張性の確保しました。技術者不足についてはオフショア開発やCOBOL技術者からのコ |
効 果 |
スムーズな移行を実現し、システムの保守性と拡張性は大きく向上。属人化していた業務プロセスを標準化・ドキュメント化することで、運用や教育体制も構築しました。 |
今回は、それぞれのプロジェクトに関わった3名(H氏/N氏/S氏)に詳しいお話を伺いました。
- TOPICS -
> プロジェクトの背景 「サポート終了となるシステムと、属人化・複雑化した業務の再構築が課題」
プロジェクトの背景
サポート終了となるシステムと、属人化・複雑化した業務の再構築が課題
長年にわたり使用されてきたSAP R/3 6.0がサポート終了を迎える中、複数の企業で基幹システム全体の刷新が求められていました。業務面でも、利益センタの管理方法の変更や、蓄積されたアドオンの多さ、ドキュメントの未整備といった課題が顕在化。属人化した運用体制も合わせて見直し、効率的かつ持続可能な業務基盤への転換が併せて必要とされていました。
プロジェクト概要
本プロジェクトでは、SAP S/4HANAへの移行を軸に、システム刷新と業務標準化を推進しました。複数存在するアドオン機能の削減を目指すと同時に、ドキュメント整備や保守フェーズに向けた体制の再構築も実施。上流工程から参画し、技術支援とプロジェクト推進をサポートしました。SAP専門人材の不足に対しては、オフショア開発やCOBOL技術者をコンバートするなど工夫を取
・早急なバージョンアップ
・アドオン機能や改修のドキュメント不足
・SAP専門人材の不足と予算
プロジェクトにおける役割
・プロジェクトマネジメント業務支援・上流工程(要件、基本設計)支援
・開発工程支援(チームの立ち上げと推進)
・稼働後の保守全般(障害対応、保守開発)
プロジェクトのポイント
顧客の立場に立った検討や提案と細やかな標準機能への切替と整備、上流支援や開発体制の工夫にてスムーズな移行を実現
問題を改善するために、ITコンサルタントとして参画したH氏/N氏/S氏は、それぞれの企業ごとで複雑化・属人化した基幹業務を見直すとともに、システム刷新後の安定稼働に向けて、業務プロセス・開発体制の両面で整備を進めました。特に、上流工程からの設計品質の担保と、オフショア開発における認識齟齬の解消が、成功の鍵となりました。
ドキュメントルールの整備と体制構築で属人化を解消
旧来のシステムでは、多数のアドオン機能が導入されていたものの、どのような設計意図で実装されたのか、誰がどこをどう変更したのかといった履歴が残されておらず、開発や改修のたびに多くの時間と工数がかかっていました。特定の担当者しか把握していない業務やシステムが点在しており、引き継ぎや体制変更に大きなリスクを抱えているのではと考えました。
こうした状況を打開するため、今回のプロジェクトではドキュメント作成のルールやテンプレートを再整備し、開発プロセス全体の「見える化」を実施。オフショアチームとも共有可能な形式でドキュメントを管理し、認識のずれによる手戻りや開発ミスを大幅に減らすことに成功しました。並行して、業務プロセスの標準化も実施し、属人化していた作業を整理。誰が対応しても同じ結果が得られる仕組みを作ることで、持続的で安定した運用体制が構築されました。
上流工程から参画し、品質と推進力を両立
プロジェクト全体の構想策定から関与する上流工程から支援しました。特に、要件定義や基本設計といった上流工程では、社内に蓄積された知見や業務背景を丁寧に整理し、技術的な解決策に落とし込む役割を担いました。これにより、実際にシステムを作る開発フェーズでの手戻りが減り、プロジェクト全体の効率が大きく向上しました。
また、単に技術的なアドバイスを行うだけでなく、社内メンバーと開発ベンダー、さらには海外オフショア拠点との間に立ち、コミュニケーションの橋渡し役も担いました。対話を通じて各関係者の意図をくみ取り、調整・合意形成をリードすることで、プロジェクト全体の推進力を高めるとともに、品質面でも妥協のない進行を可能にしました。技術とビジネス、現場と経営をつなぐICの存在が、今回のプロジェクトの成否を分ける重要な要素だったと言えます。
プロジェクトの効果
保守性と拡張性が向上、ドキュメント整備と業務標準化で持続可能な体制に
プロジェクトの完了により、SAP R/3からS/4HANAへの円滑な移行が実現し、システムの老朽化や業務の属人化といった長年の課題を解消する大きな成果が得られました。単なるシステム刷新にとどまらず、業務の標準化・ドキュメント整備・体制再構築といった多角的な取り組みにより、業務全体の生産性と柔軟性が飛躍的に向上。さらに、社内外の連携が強化され、今後の運用や拡張にも対応可能な「持続可能な仕組み」が構築することもできました。
システムの安定稼働と業務効率の大幅な向上を実現
S/4HANAへの移行によって、最新のSAP環境が整備され、これまで課題となっていた画面の処理スピードや使い勝手が改善されました。加えて、ドキュメント整備が進んだことで、開発や保守の際に担当者間の引き継ぎがスムーズになり、運用の属人性も大きく軽減されました。
また、業務フローの標準化により、従来は担当者の経験や感覚に頼っていた作業も、明確な手順書に基づいて誰でも対応可能となりました。この結果、人的ミスのリスクが減り、業務全体の安定性・再現性が向上。教育や引継ぎにかかる負担も軽減され、短期間でキャッチアップできる体制が整いやすくなりました。
お客様からは、「作業を滞りなくかつ高品質な仕上がりでご対応いただき、助かりました。今後も同様のご対応を引き続きお願いしたいです」とのお声もいただきました。
今後について
今回のSAP環境のバージョンアップは、社内で利用されるほかのERPシステム・そのほかでも起きることです。一回だけの改修・バージョンアップ作業として行うのではなく、企業の長期的な発展に向けた支援を行います。今後もICでは、社内外の体制や環境づくりも含めた総合的な支援を行ってまいります。
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