近年、デジタル技術の発展に伴い、企業のIT化が加速しています。IT化を促進することで、生産性の向上や人手不足の解消などにつながります。ただし、社内の体制を整え、計画的に進めなければ、IT化が失敗に終わってしまう可能性があります。本記事では、企業がIT化を進めるメリットや注意点、進め方を4ステップで解説します。
IT化とは
IT化とは、企業や組織がソフトウェアやツールなどのIT技術を導入・活用し、業務プロセスの効率化や高度化を実現することです。
具体的なIT化の例としては、在庫管理システムや顧客管理システムの導入が挙げられます。
IT化は、少子高齢化による労働力不足やグローバル競争の激化といった社会課題の解決策として注目されてきましたが、近年ではテレワークの推進や労働時間の短縮によるワークライフバランスの実現という観点からも重要性が増しています。
デジタル化との違い
デジタル化とは、アナログ情報を電子データに変換することです。一方、IT化とは、デジタル化された電子データを活用して、業務プロセスや生活を効率化・高度化することです。
つまり、デジタル化はIT化の前提条件であり、IT化はデジタル化の次のステップといえるでしょう。
例えば、レコードに収録された音声をマイクで録音し、電子データに変換する作業がデジタル化です。そのデジタル化された音声データをMP3ファイルに変換して保存・共有することがIT化です。
DXとの違い
DXとは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや組織文化を根本的に変革し、新たな価値を創出する取り組みのことです。
IT化が業務の効率化や自動化を目指しているのに対し、DXでは企業全体の変革を目指し、新しいビジネスモデルの構築や価値創造に焦点を当てています。
例えば、在庫管理システムを導入し、業務の効率化を実現することがIT化です。一方、その在庫管理システムから得られるデータを分析し、需要予測の精度を高めることで、最適な在庫量を維持し、廃棄ロスを削減するといった取り組みがDXです。
このように、DXではIT化によって得られたデータを活用し、新たな価値を生み出すことに重点が置かれています。
DXについては、下記の記事で詳しく解説しています。
企業がIT化するメリット
企業がIT化するメリットは、下記の通りです。
- 業務の生産性が上がる
- 慢性的な人手不足に対応できる
- コスト削減につながる
業務の生産性が上がる
IT化によって、これまで手動で行っていた作業を効率化することで、業務プロセス全体をスムーズに進行でき、生産性が向上します。
例えば、顧客情報の管理や請求書の発行など、定型的な事務作業を自動化すれば、人的ミスの削減や作業時間の短縮が期待できるでしょう。こうした定型作業がIT化されることで、社員はより付加価値の高い業務に注力できるようになり、生産性の向上が期待できます。
慢性的な人手不足に対応できる
IT化を進めることで、少ない人数でもより多くの業務を効率的にこなせるようになり、慢性的な人手不足に対応できます。
例えば、AIや機械学習を活用することで、マーケティングの自動化や高度な予測分析などが可能となり、業務の効率化と高度化を実現できます。
これにより、限られた人数でも、より高度な業務を遂行できるでしょう。また、チャットボットを活用したカスタマーサービスを導入すれば、24時間体制での対応が可能となり、人手を減らしながらも高いレベルの顧客対応を維持できます。
このようにIT化を進めることで、業務の自動化や効率化を実現し、少ない人数でも多くの業務をこなせるようになります。
コスト削減につながる
IT化を推進することで、大幅なコスト削減を実現できます。
具体的には、下記のようなものが考えられます。
- ペーパーレス化の推進:紙の購入費や印刷費、書類の保管スペースのコスト削減
- 業務の自動化の推進:残業時間の削減による人件費の抑制
- Web会議システムの導入:出張コストの削減(交通費、宿泊費など)
IT化によるコスト削減が実現すれば、経営資源を有効活用できるようになり、新たな事業への投資や人材育成などに資金を回せるでしょう。
IT化のデメリット・注意点
IT化によるデメリットや注意点は、下記の2つです。
- 導入コストや手間が発生する
- セキュリティ対策を考える必要がある
導入コストや手間が発生する
IT化は、業務の効率化やコスト削減などのメリットがある一方で、導入コストや手間がかかるというデメリットがあります。
例えば、既存のシステムをクラウド環境に移行する場合、データ移行や既存システムとの統合に多くの時間と費用がかかります。また、IT化には専門的な知識やスキルが求められるため、社内に適切な人材がいない場合は、システム開発会社への依頼が必要です。
中小企業など、予算に限りがある場合は、IT化への投資が大きな負担となってしまうでしょう。
IT化を進める際は、自社の予算や人的リソースを考慮し、段階的に進めていくことが重要です。
セキュリティ対策を考える必要がある
IT化では、セキュリティリスクへの対策が重要な課題となります。
例えば、クラウドサービスを利用すれば、社外からでも企業の情報にアクセスできるようになり、柔軟な働き方が促進できます。しかし、セキュリティ対策が不十分な場合、情報漏洩などのリスクが高まってしまいます。
例えば、パスワード管理が甘い場合、不正アクセスによる情報漏洩のリスクが高まるでしょう。また、ウイルス対策や定期的なアップデートが不足していると、マルウェアに感染し、機密情報が盗難される可能性もあります。
このようなセキュリティリスクに対応するためには、社内でセキュリティポリシーを策定し、情報管理のルールを明確化することが重要です。また、社員に対してセキュリティ教育を実施し、ルールの徹底を図ることも必要でしょう。
IT化を進める4ステップ
IT化は、下記4ステップで進めていきます。
- IT化する業務や対象を決める
- 社内でIT化を推進する体制を構築する
- ツールやサービスの導入
- 改善しながら最適化していく
1.IT化する業務や対象を決める
IT化を進める際は、まず自社の業務全体を見渡し、IT化する業務や対象を決めることが重要です。
業務フローの分析や社員へのヒアリングを通じて、手作業が多く時間がかかっている部分や、データの処理が煩雑な業務を洗い出します。
例えば、受発注業務や在庫管理、経理業務など、定型的な作業が多い業務は、IT化による自動化の効果が高いでしょう。また、顧客情報や商品情報など、大量のデータを扱う業務も、IT化によって効率化が期待できます。
業務を洗い出したら、IT化によってどの程度のコスト削減や作業工数の削減が見込めるのかを算出します。IT化する業務や対象が複数ある場合は、業務改善による効果の大きさや業務改善の緊急性、導入の容易さなどを基準に優先順位を付けるといいでしょう。
2.社内でIT化を推進する体制を構築する
IT化を円滑に進めるためには、社内に専門の推進チームを立ち上げましょう。
まず、プロジェクトマネージャーを任命し、各部門から適切な人材を選出してチームを編成します。
社内に適切な人材が不足している場合は、IT専門の人材を新たに雇用するか、システム開発会社などの専門企業に協力を依頼することも効果的です。外部の専門家を活用することで、IT化をスムーズに進められるだけでなく、社員のITスキル向上も期待できます。
IT化推進チームが編成できたら、全員で目的を共有し、スケジュールを立てて着実に進めていきましょう。
3.ツールやサービスの導入
IT化を進めるためには、自社の業務内容や規模、予算に合ったツールやサービスの選定・導入が重要です。
まず、ツールの機能や価格、操作性、サポート体制などを比較検討し、自社の予算や要件に合うものを絞り込みましょう。また、無料トライアルできるツールを活用し、実際に使用感を確かめることもおすすめです。
多くのサービスでは、一定期間無料トライアルできるものも多いため、社内の一部で試験的に運用してみましょう。これにより、操作性や機能を確認でき、余計なコストをかけずに自社に最適なツールを選定できます。
4.改善しながら最適化していく
システムやツールを導入したら、実際に使用している社員からフィードバックを収集しましょう。
操作性や機能面での不便な点、改善してほしい点などをフィードバックで吸い上げ、改善につなげていきます。
例えば、操作性の向上であれば、ユーザーインターフェースの改善やマニュアルの整備などが考えられるでしょう。
また、機能面の充実であれば、新機能の追加や、既存機能の拡張などを検討します。このように、システムやツールを継続的に改善することで、IT化の成功につなげられます。
IT化に成功した事例
ここでは、IT化に成功した事例をご紹介します。
今回ご紹介する成功事例は、下記の2例です。
キミセ醤油株式会社
キミセ醤油株式会社は、しょうゆやみそ、ポン酢などを独自の製法で製造している、1866年創業の老舗醤油メーカーです。
同社では、顧客情報の管理業務に多くの時間を要しており、残業時間の多さが課題となっていました。
この課題を解決するために、同社は2019年にIT化に取り組み、RPAを導入しました。
RPAの導入により、下記のようなことが実現しました。
- ベテラン営業の経験やノウハウを数値化し、顧客リストに反映
- 訪問優先度の高い顧客を自動的にリストアップ
RPAの導入前と導入後の1年間を比較したところ、一人あたりの月間残業時間を3時間6分削減できました。自動化によって業務に余裕が出たことで、顧客との会話により多くの時間を使えるようになり、売上げとモチベーションの向上にもつながりました。
本事例の詳細は、下記からご覧ください。
キミセ醤油株式会社 IT化事例
協和工業株式会社
協和工業株式会社は、自動車や産業機械等に使用するユニバーサルジョイント、ステアリングジョイントの専門メーカーです。
同社では、1980年から生産管理システムを導入していました。しかし、既製のパッケージシステムを用いていたため、情報がリアルタイムに同期されないことや実際の工程・在庫状況がシステムとずれてしまうなどの課題を抱えていました。
これらの課題を解決するために、同社ではシステム開発会社に依頼し、約3年にわたって社内システムの刷新に取り組みました。
システム開発会社と目指す方向性を徹底的にすり合わせ、新システムを導入したことで、下記を実現しました。
- 受注から出荷までの一元化と見える化
- 入出力や調べる作業の排除
- リアルタイムで正確な在庫情報の把握
- 管理業務の自動化
新システムの導入により、生産ラインの実績がリアルタイムに見える化されたことで、効率的な生産が可能となりました。その結果、以前は70%だった設備の稼働率が90%を超えるまでに向上しました。
また、組み立てから出荷まで9日間かかっていた製品のリードタイムを4日間まで短縮できるようになり、受注生産が可能となったほか、在庫管理も不要となるなど、大きな効果につながりました。
本事例の詳細は、下記からご覧ください。
協和工業株式会社 IT化事例
IT化を成功させるポイント
IT化を成功させるポイントは、下記2つです。
補助金を活用する
IT化を推進する際は、政府や地方自治体による補助金の活用がおすすめです。
補助金を活用できれば、自己負担額を抑えつつ、IT化を推進できます。
例えば、『IT導入補助金2024』では、事業のデジタル化を目的としたソフトウェアの導入に対して最大450万円が交付されます。この補助金は、業務効率化や生産性向上、セキュリティ対策など、幅広い目的で活用可能です。
また、東京都が実施する『中小企業デジタルツール導入促進支援事業』もおすすめです。この事業では、ソフトウェアやハードウェアの導入に最大100万円が助成されます。
国や自治体の補助金制度を上手に活用することで、自社の負担を軽減でき、スムーズにIT化を進められるでしょう。
システム開発会社に依頼する
自社だけでIT化を進めようとすると、ノウハウやリソース不足により、スムーズに進まないことがあります。IT化を効率的に進め、自社の課題を解決するには、ITコンサルとシステム開発の経験が豊富な企業への依頼がおすすめです。
ITコンサルタントは、多くの企業のIT化を支援してきた経験から、様々な業種・業態に応じた課題解決のノウハウを持っています。自社の現状を分析し、課題を明確化した上で、最適なIT化の方法を提案してくれるでしょう。
また、コンサルから、システム開発まで一貫して対応してくれる会社に依頼すれば、ワンストップでIT化を進められます。さらに、システム導入や開発後の保守・運用までサポートしてくれるため、導入後も安心です。
ITコンサルタントについては、下記の記事で詳しく解説しています。
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引用元:システム開発のIC
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まとめ
本記事では、企業がIT化を進めるメリットや注意点、具体的な進め方を4ステップで解説しました。
IT化を進めることで、生産性の向上や人手不足の解消、コスト削減などが期待できます。一方で、導入コストや手間の問題、情報漏洩のリスクが高まるなどのデメリットも考えなければいけません。
IT化を進める際は、対象業務の選定、推進体制の構築、ツールの導入、継続的な改善の4ステップを踏むことが重要です。自社だけでIT化が難しい場合は、経験とノウハウが豊富なシステム開発会社に依頼しましょう。
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