エンハンス開発とは、既存のシステムに機能を追加したり性能を向上させたり、保守を行ったりする開発作業のことです。既存システムを理解したうえで行う必要があり、新規開発とは異なるエンハンス開発ならではの難しさがあります。この記事では、エンハンス開発の種類や注意点、必要な能力について解説します。
エンハンスとは?
そもそもエンハンスとは、英語で「強化する」「高める」という意味を指す言葉であり、IT業界ではシステムの拡張や機能追加、性能向上といった開発作業全般を指して用いられます。主に、ハードウェアについて使われることが多い表現です。既存の製品をアップデートしたものを、「エンハンスド〇〇」と呼ぶこともあります。
エンハンス開発とは?
エンハンス開発とは、システムやソフトウェアの開発の中でも、既存の製品やサービスに機能を追加したり、性能を向上させたりといった開発のことです。具体的には、ハードウェアの入れ替え、プログラム修正などのアップデート作業がエンハンス開発に該当します。
既存のシステムやソフトウェアのプログラム、データベースなどを理解し、既存部分の動作を阻害しないように作業する必要があり、新規開発とは別の難しさがあるのが特徴です。
エンハンス開発の種類3つ
エンハンス開発には、以下の3種類があります。
- システムの拡張(機能追加)
- システムの性能向上
- システムの保守
エンハンス開発では、運用後に発覚したトラブルや顧客の要望に対応するため、機能を追加したりシステムを改善させたりすることが多いです。加えてより使いやすいシステムにするために、システムの性能を向上させる取り組みも行われます。
以下では、エンハンス開発の3つの種類について詳しく解説します。
種類1.システムの拡張(機能追加)
システムの拡張とは、既存のシステムに新たな機能を追加することです。システムの拡張方法には、拡張する機能に合わせて既存システムの部分ごとに拡張していくパターンと、拡張する機能のために新たなシステムを作り、既存のシステムと連携させるパターンがあります。
機能を追加する際は、既存部分のデータベースやミドルウェアといったさまざまな要素に注意して進めることが必要です。
種類2.システムの性能向上
システムの性能向上とは、システムに備わっている既存機能や、機能を実行する環境のパフォーマンスを向上させることです。これまでは、既存システムが抱える問題を解決したり、法改正やソフトウェアのアップデートといった外部要因に対応したりすることを目的としたエンハンス開発がほとんどでした。しかし、最近では不具合への対応だけではなく、システムの性能を積極的に向上させるためのエンハンス開発が増えているのです。
種類3.システムの保守
システムの保守とは、システムを改善したり変更したりする作業のことです。システム障害や改善要望を受けてデータやプログラムを改修したり、周辺機器の取り替えやアップデートを行ったりします。開発途中で気づかなかった問題点が、リリース後に判明することは少なくありません。運用していく中で発見した課題を解決し、システムをより良いものにしていくのが保守です。
エンハンス開発における注意点3つ
エンハンス開発では、以下の3つのポイントに注意する必要があります。
- 複雑な機能設計
- 過少見積もり
- テスト不十分によるデグレード
エンハンス開発では、既存システムに影響を及ぼさないように進めることが必要です。仮に影響が出て稼働中のシステムを停止させてしまうと、業務に支障をきたします。エンハンス開発ならではの難しさがある点に注意しましょう。
ここでは、エンハンス開発における注意点について解説します。
注意点1.複雑な機能設計
機能設計が複雑な場合、エンハンス開発で小さな機能を追加するだけでもかなりの工数がかかってしまいます。複数の機能が絡んでいると、新たな機能を追加する際にさまざまな機能に影響が出てしまうリスクがあるのです。そのため、新規開発の段階からエンハンス開発を意識し、機能ごとに独立した構造で設計する必要があります。
注意点2.過少見積もり
エンハンス開発時は、工数の過少見積もりに注意が必要です。エンハンス開発では、既存システムに注意しながら進める必要があり、多くの制限があります。エンハンス開発ならではの制限や難しさを加味せずに工数を見積もると、過少見積もりになるリスクが高いのです。新規開発時と同様に工数を見積もりがちですが、既存システムについて十分に理解し、さまざまなリスクを考えたうえで工数を算出しましょう。
注意点3.テスト不十分によるデグレード
エンハンス開発では、デグレードに注意する必要があります。デグレードとは、エンハンス開発後に、新たな不具合や品質の低下が起こってしまうことです。テストやデバッグが不十分だったり、既存システムを十分に理解せずにエンハンス開発を行ったりすると、デグレードが起こる可能性があります。
デグレードが発生するとその分の工数やコストがかかるため、それを防ぐためにも特にテスト作業を入念に行いましょう。
エンハンス開発に必要な能力とは
前述のとおり、エンハンス開発は決して簡単な作業ではありません。エンハンス開発では、新規のシステム開発とは異なる以下のような能力が求められるのです。
- システムの仕様を理解する能力
- 他人が書いたコードを正確に理解する能力
- 既存のコードに改善を加えて判断する能力
- リスクを考慮したスケジューリング能力
ここでは、エンハンス開発に必要とされる能力について解説します。
1.システムの仕様を理解する能力
デグレードを発生させずにエンハンス開発を行うためには、既存システムへの理解が非常に重要です。そのため、システムの仕様を理解する能力が求められます。システムの仕様を理解していれば、何が問題で課題が生じているのか、顧客の要望を実現するためにはどのパフォーマンスを向上させるべきなのかなどがわかるでしょう。
2.他人が書いたコードを正確に理解する能力
すでに稼働しているシステムに影響を与えないようにエンハンス開発を進めるためには、他人が書いたコードを速く正確に理解する能力が求められます。他人のコードは読みづらいことが多く、どの画面においてどのクラスが起動するのか、どのコードが何に対応しているかなどを正確かつスピード感を持って読み解くスキルが非常に重要なのです。
3.既存のコードに改善を加えて判断する能力
エンハンス開発では、既存のコードをどこまで採用し、どの程度改善するかを的確に判断することが必要です。システムによっては、コードにバグや無駄な部分が多く含まれていることもあり、改善に数ヶ月かかる可能性もあるでしょう。毎日の膨大な業務量の中で改善に取り組むためには、既存コードをどこまで踏襲してどこまで改善するべきかを判断する能力が求められるのです。
4.リスクを考慮したスケジューリング能力
エンハンス開発では保守業務も行います。緊急メンテナンスや障害が発生すると、そちらを優先する必要があるため、予定していた開発業務が遅れてしまう可能性があるのです。そのため、緊急対応が必要になるリスクを考慮したスケジュールを立てることが求められます。
特に、リリースしてすぐのシステムでは、緊急対応が必要になるリスクが高いため、見積工数よりも余裕のあるスケジュールで進めることを意識しましょう。このように、エンハンス開発においては、起こり得るリスクを想定したスケジューリングの能力が求められるのです。
まとめ
今回は、エンハンス開発とは何か、種類や注意点、求められる能力について解説しました。既存のシステムの改善を目的とするエンハンス開発では、既存システムを理解し、影響が出ないように細心の注意を払うことが必要です。そのため、新規開発とは異なるエンハンス開発ならではの難しさがあります。
エンハンス開発や新規開発など、システムの開発を任せられる人材不足に悩んでいる方は、ぜひとも当社にお気軽にお問い合わせください。