
AWS Lambdaとは?使い方やメリットをわかりやすく解説
AWSの中でも、広く活用されているのがAWS Lambdaです。FaaSのひとつで、自社でのサーバー管理が不要な点や、コスト削減につながりやすい点など多くのメリットがあります。今回はAWS Lambdaとは何か、メリットや注意点、活用方法などを解説します。
目次[非表示]
- 1.AWS Lambdaとは?FaaSやサーバーレスの概要
- 1.1.クラウド利用形態のひとつ「FaaS」
- 1.2.サーバー不要「サーバーレス」
- 1.3.サーバーレスのFaaS「AWS Lambda」
- 2.AWS Lambdaの料金形態
- 3.AWSLambda4つのメリット
- 3.1.1.コスト削減につながる
- 3.2.2.セキュアな実行環境を簡単に実現できる
- 3.3.3.障害のリスクを軽減できる
- 3.4.4.選択できるプログラミング言語が豊富
- 4.AWS Lambdaのデメリットや注意点
- 4.1.実行時間に制限がある
- 4.2.処理実行数1,000を超えると制限がかかる
- 4.3.非同期で実行すると重複起動の可能性がある
- 4.4.イベント数が多いとコストがかさむ可能性がある
- 5.AWS Lambdaの活用方法
- 6.まとめ
AWS Lambdaとは?FaaSやサーバーレスの概要
AWS Lambda(ラムダ)は、Amazonが提供するクラウドサービスAWS(Amazon Web Services)のうち、サーバーレスで使用できるサービスのことです。
ここでは、AWS Lambdaについて詳しく理解できるよう、クラウドの利用形態のひとつであるFaaSとサーバーレスの仕組み、そしてAWS Lambdaの概要や特徴について解説します。
クラウド利用形態のひとつ「FaaS」
AWS Lambdaは、クラウドの利用形態のひとつである、FaaSに該当するサービスです。
クラウドには、以下のような種類があります。
- FaaS(Function as a Service)
- IaaS(Infrastructure as a Service)
- SaaS(Software as a Service)
IaaSは、サーバやーストレージなどのインフラをサービスとして提供するもの、SaaSは開発されたソフトウェアをインターネットを通じて提供するものです。
FaaSは、インターネットを通じてサーバーを利用し、プログラムを実行できるもので、アプリケーションやシステム開発に必要なフレームワークが備わっているサービスです。そのため、サーバーレスでアプリケーションを開発することができます。
サーバー不要「サーバーレス」
サーバーレスとは、サーバーを使わずにアプリケーションを開発できる、というわけではありません。
本来、アプリケーションを開発する際は、自社でサーバーを準備する必要があります。そのため、開発者がサーバーを管理しなければなりません。
サーバーレスのサービスを利用すれば、ベンダーがサーバーを準備して管理してくれます。インターネットを通じてベンダーが提供するサーバーを利用でき、開発者はサーバー管理が一切不要になるため開発に専念できるのです。
サーバーレスのFaaS「AWS Lambda」
AWS Lambdaは、サーバーレスでプログラムを実行できるFaaSのひとつです。AWS上でプログラムコードを定義し、Lambda側にアップロードすれば、インターネットを通じてプログラムを実行できます。
具体的には、ファイルアップロード時の処理やストリーミングデータ処理、データの抽出・変換、バックエンド処理などが可能です。
なお、AWS Lambda単体ではLambda関数の実行はできないため、処理を起動させるきっかけとなるトリガーを、ほかのサービスリソースを使って設定する必要があります。
AWSについて、詳しくは以下をご覧ください。
AWS Lambdaの料金形態
AWS Lambdaの料金に関する特徴は、以下のとおりです。
- 使用に応じた料金が発生する従量課金制
- 1カ月につき100万リクエストまで無料
プログラムを実行しない限り料金は発生せず、使用量に応じて料金が異なります。1カ月につき100万リクエストまでは無料であるため、小規模な利用であればほとんど費用がかかりません。
AWS Lambdaのコストメリットを理解できるよう、料金形態について解説します。
使用に応じた料金が発生する従量課金制
AWS Lambdaの料金形態は、使用した分だけ料金が発生する従量課金制です。関数に対するリクエスト数と、コードの実行時間に応じて料金が発生します。プログラムを作成しても、プログラムが実行されない限り料金は発生しません。
サーバーの運用コストもかからないため、プログラム管理にかかるコストを大幅に削減できるのが特徴です。
1カ月につき100万リクエストまで無料
AWS Lambdaには、1カ月につき100万リクエストまでは無料という無料利用枠が設けられています。利用料についても、2023年2月時点でリクエスト100万件あたり0.2USドルと、気軽に導入しやすい低価格です。
無料で利用できる時間は、Lambda関数に割り当てるメモリ量によって異なります。128MBから10,240MBまで、任意のメモリサイズを1MB単位で関数に割り当てられる仕組みです。
参考:AWS「AWS Lambda 料金」
AWSLambda4つのメリット
AWS Lambdaには、以下のようなメリットがあります。
- コスト削減につながる
- セキュアな実行環境を簡単に実現できる
- 障害のリスクを軽減できる
- 選択できるプログラミング言語が豊富
AWS Lambdaは実行基盤の管理が不要であるため、コストや管理にかかる手間の削減、安全性の担保などを実現しやすいのが魅力です。
また、障害のリスクを軽減でき、一般的な開発環境がカバーされているため、使いやすいというメリットもあります。
ここでは、それぞれのメリットについて解説します。
1.コスト削減につながる
前述のとおりAWS Lambdaは、リクエスト数とコードの実行時間に応じて料金が発生する従量課金制を採用しています。処理が行われなければ、起動しても料金は発生しません。Lambda関数に割り当てられたメモリ量の範囲内であれば、自動でリソースが割り当てられ、追加料金もかからないのが特徴です。そのため、イベント数が多かったり実行時間が長かったりしない限りは、コスト削減につながります。
さらに、専用のサーバーを用意して管理する必要がありません。サーバー管理には多くの費用がかかるため、AWS Lambdaを利用することで、その分のコストを抑えられます。
2.セキュアな実行環境を簡単に実現できる
AWSは、世界トップクラスのセキュリティ専門家チームを擁しており、システムを24時間体制でモニタリングしています。AWS Lambdaでは、実行基盤をAWS側で管理しているため、自社で管理する場合に比べて、セキュアな実行環境を簡単に実現しやすいのがメリットです。
管理の手間もかからないため、開発者はコーディングやテストといったコア業務に注力できます。
3.障害のリスクを軽減できる
AWS Lambdaでは、AWSのサービス同士を疎結合にしやすいという特徴があります。疎結合とは、システムの構成要素をそれぞれ独立性が高い状態にすることです。疎結合にすることで、アプリケーション同士の関連性が薄くなり、障害が発生した際にトラブルが拡大するリスクを軽減できます。
自社でサーバーを用意して運用する場合には、サーバーに障害が発生した際に自社で対応しなければなりません。一方のAWS Lambdaでは、万が一サーバーに障害が発生した場合でも、AWS側が対応してくれます。
4.選択できるプログラミング言語が豊富
AWS Lambdaは、選べるプログラミング言語が豊富です。Java、Python、Node.js、C#、PowerShell、Ruby 、Goに対応しており、一般的な開発環境はカバーされています。
さらに、「カスタムランタイム」という機能を用いることで、カスタム言語を実装でき、対応外の言語も使用可能です。
AWS Lambdaのデメリットや注意点
一方、AWS Lambdaには以下のようなデメリットがあります。
- 起動時間に制限がある
- 処理の実行数が1,000を超えると制限がかかる
- 非同期で実行すると重複起動の可能性がある
- イベント数が多いとコストがかさむ可能性がある
特に、起動時間や処理の実行数に制限があることを理解したうえで利用することが必要です。
また、イベント数や実行時間によっては、従量課金制であることが裏目に出てしまう可能性もあるため、用途を考えたうえで利用しましょう。
ここでは、それぞれのデメリットや注意点について詳しく解説します。
実行時間に制限がある
AWS Lambdaには、実行時間は15分までという制限があります。15分を超えるとタイムアウトとなり実行が強制終了となるため、それ以上の時間を要する処理は実行できません。時間のかかるプログラムを実行する場合は、処理を分割して対応する必要があります。
しかし処理を分割して並列化すると、以下の処理実行数制限に引っかかってしまう可能性があるため、注意が必要です。
処理実行数1,000を超えると制限がかかる
AWS Lambdaでは、同一リージョン内における同一アカウントの処理実行数に制限があります。アジアパシフィック (東京)では、1,000が上限です。処理実行数は、「平均実行時間(秒)×1秒あたりの呼び出し数」で算出されます。たとえば、関数の実行に5秒かかる場合、1秒あたりに呼び出せる数は200個までです。
上限を超えると、それ以上の実行についてはスロットリングという制限がかかるため、注意が必要です。
申請をすれば、上限の緩和を認められる場合がありますが、必ずしも認められるとは限りません。
ほかにも、スロットリング回避のためにリトライ処理を組み込み、エラー発生時に関数の呼び出し元においてリトライ処理を実行できるようにする、という方法もあります。
非同期で実行すると重複起動の可能性がある
実行を非同期で行う場合は、重複起動と認識されてしまう点にも注意が必要です。
同期呼び出しの場合、Lambdaを直接1回実行し、処理が完了してからレスポンスが返ってきます。一方、非同期呼び出しの場合は、Lambdaを直接実行するわけではありません。呼び出しに失敗してエラーになった場合は、自動的に2回までリトライされます。そのため、重複起動になってしまう可能性が考えられます。
重複起動を防げるよう、設計時に工夫する必要があります。
イベント数が多いとコストがかさむ可能性がある
従量課金制ということは、使えば使うほどコストが発生するということです。多くのイベントを発生させたり、実行時間が長くなったりする場合は、その分だけ費用がかかります。そのため、大量アクセスがあるシステムについては、Compute Savings Plansといった定額課金のサービスを利用するほうがコストを抑えられる可能性がある点には注意しましょう。
AWS Lambdaは、イベント数が少ないときや特定の時間帯のみ実行する場合、時間が短いプログラムを実行したい場合などにおすすめです。
AWS Lambdaの活用方法
AWS Lambdaには、さまざまな活用方法があります。アプリケーションに必要なデータ処理やファイル連携のほか、ログの抽出やアクセス権の監視、認証など、セキュリティ関連の処理も可能です。
ほかにも、Amazon EC2のようなほかのサービスを利用している場合は、一定の利用料を超えた場合にAWS Lambdaを使ってEC2を停止させる、という使い方も考えられます。
AWS Lambdaにはさまざまなメリットがあるため、要件に応じて積極的に活用しましょう。
まとめ
今回は、FaaSのひとつであるAWS Lambdaについて解説しました。サーバーレスで利用できるAWS Lambdaには豊富な活用方法があり、コスト削減にもつながりやすいです。気軽に導入しやすいサービスであるため、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
AWS Lambdaの利用には、起動時間や処理実行数の制限、重複起動を防ぐ設計の工夫など注意点もあります。問題なく利用できるよう、AWS Lambdaに関する専門知識を有する人材がいると安心です。専門人材の不足に悩んでいる方は、ぜひとも当社にお気軽にお問い合わせください。
※2023年3月時点の仕様です。現在は異なっている可能性があります。