サーバーレスのメリット・デメリットを徹底解説 サーバーレスを進めるポイントも紹介

サーバーレスのメリット・デメリットを徹底解説 サーバーレスを進めるポイントも紹介

近年、クラウドコンピューティングの分野において、サーバーレスが急速に注目を集めています。従来のサーバー管理の煩雑さやコストを軽減し、開発者がアプリケーションのロジックに集中できるというメリットから多くの企業がサーバーレスを採用しています。本記事では、サーバーレスのメリットとデメリットを詳細に解説し、導入を検討する際のポイントも紹介します。

 

 

サーバーレスのメリット

ここからは、サーバーレスのメリットをご紹介します。

サーバーレスのメリットは、下記の通りです。

  • コスト削減
  • スケーラビリティの向上
  • 高可用性と信頼性
  • 開発速度の向上

一つずつ説明していきます。

 

コスト削減

サーバーレスのメリットの一つは、コストが削減できることです。サーバーレスでは、従来の物理的なサーバーに必要だった設定や管理にかかる時間とコストが大幅に削減されます。また、従来の物理サーバーベースのアプリケーションと異なり、使用した分だけを支払う方式を採用しているため、無駄なコストを抑えることが可能です。

従来の物理サーバーとサーバーレスの違いは、下記になります。

 

物理サーバーベース

サーバーレス

サーバー設定・管理

必要

不要

料金体系

固定費用

実際の使用分のみ

サーバー設定や管理に関わる人件費や時間、そして固定的な料金体系によるコスト負担がなくなり、使用した分だけを支払うことで、全体のコスト効率が大幅に改善されます。

スケーラビリティの向上

サーバーレスのメリットは、スケーラビリティの向上です。 従来の物理サーバーベースのシステムでは、トラフィックの増大に対応するためにサーバーの追加や性能向上が必要でした。これには時間とコストがかかり、計画的なスケールアップが求められました。
しかし、サーバーレスは、必要に応じて自動的にスケールアップ・ダウンを行います。これは、使用中のリソースのみを課金する従量課金のメリットを最大限に活用できるという点にもつながります。
たとえば、トラフィックが増えた際にはリソースが増加し、減少した際にはリソースが減少します。これにより、リソースの無駄を削減し、コストパフォーマンスを大幅に向上させることが可能となります。

高可用性と信頼性

サーバーレスの大きなメリットの一つが、その高可用性と信頼性です。
サーバーレスアーキテクチャは、クラウドサービスプロバイダーが管理しているため、ハードウェアの故障やシステムのダウンタイムによる影響を受けにくいという特長があります。つまり、サービスは連続的に、そして安定して利用できるのです。
また、負荷の増減に応じて自動的にリソースをスケーリングするため、急なトラフィックの増加にも対応可能です。これは、運用中のシステムが常に最適なパフォーマンスを発揮し、ユーザーに対して信頼性の高いサービスを提供できることを意味します。
これらの特徴により、サーバーレスはビジネスにおける高い可用性と信頼性を保証します。したがって、24時間365日のサービス提供が必要なビジネスでは、サーバーレスの採用が有効と言えるでしょう。

開発速度の向上

サーバーレスの最大のメリットの一つは、開発速度の向上です。従来の物理サーバーを使用する場合、必要なリソースを確保し設定を行う必要があります。
しかし、サーバーレスアーキテクチャでは、物理サーバーに必要だったリソースの確保や設定の手間が省かれます。開発者はプログラムの実装に集中でき、従来よりも迅速にシステムを構築することが可能です。

以下に具体的な時間削減の例を表に示します。

項目

従来の方法

サーバーレス

リソースの確保

3日

なし

サーバー設定

2日

なし

アプリケーション開発

7日

7日

このように、サーバーレスではリソースの確保やサーバー設定の時間が削減され、全体の開発期間を短縮することができます。これは、製品の市場投入時間を早めるだけでなく、迅速な問題解決や新機能の追加も可能となります。

サーバーレスのデメリット

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ここからは、サーバーレスのメリットをご紹介します。

サーバーレスのメリットは、下記の通りです。

  • コールドスタートの問題
  • コードの複雑化
  • セキュリティとコンプライアンスの懸念

一つずつ説明していきます。

 

コールドスタートの問題

コールドスタートとは、サーバーレスアーキテクチャで新たなインスタンスが起動する際に発生する遅延のことを指します。
具体的には、一定時間無活動状態の関数が再び呼び出された際、その関数を再度実行環境にロードする必要があり、これに時間がかかるためレスポンス速度が低下します。特にリアルタイム性が求められるサービスでは、この遅延時間がユーザー体験を損なう可能性があります。この問題を解消するためには、一定の間隔で関数を呼び出しておくウォームアップや、待機時間の長いインスタンスを使用するなどの対策が必要です。

コードの複雑化

サーバーレスアーキテクチャは、コードの複雑性が増すというデメリットがあります。
サーバーレスの特性上、複数の関数間でデータを受け渡す場合、それぞれが独立した状態で動作するため、コードの管理が難しくなることがあります。
たとえば、以下のような場面で問題が起こります。

問題点

説明

関数間の依存性

関数Aと関数Bがあった時、関数Aが終了した後に関数Bを開始するなど、関数間の順序の管理が必要になる

エラーハンドリング

それぞれの関数が独立しているため、エラーが発生した際の対応が複雑化する

これらの問題は、サーバーレスを導入した際に考慮すべき重要な要素であり、事前に適切な設計やコード管理の方針を立てることで問題を低減することが可能です。

ベンダーロックインのリスク

ベンダーロックインのリスクとは、特定のサービスプロバイダーに依存する状態を指します。サーバーレスでは、AWS LambdaやGoogle Cloud Functionsなど、プロバイダーが提供する独自の技術に強く依存します。
この依存性は、将来、プロバイダーを変更する際に問題となる可能性があります。たとえば、他のプロバイダーに移行する際に大規模なコードの書き換えを必要としたり、特定の機能が他のプロバイダーで利用できなかったりする場合です。

ベンダーロックインのリスク

移行時の困難

ソースコードの大幅な改修

機能の制約

プロバイダー変更に伴い機能不足が発生する

サーバーレスを選択する際は、ベンダーロックインのリスクを理解し、避けられるような設計を考えることが重要です。

セキュリティとコンプライアンスの懸念

サーバーレスアーキテクチャは、セキュリティとコンプライアンスに関するデメリットも考慮する必要があります。
セキュリティについては、クラウドプロバイダーに依存することになるため、プロバイダーが適切なセキュリティ対策を講じているかが問われます。特にデータの暗号化やアクセス権限の管理など、セキュリティ対策が十分でなければ情報漏洩のリスクがあります。
一方で、コンプライアンスの観点から見ると、法規制や業界基準等に準拠するための設定や監査がより複雑化します。
サーバーレスでは物理的なサーバーが存在しないため、データの保存場所やそのハンドリング方法など具体的な管理が難しくなります。
これらの問題を解決するためには、信頼性の高いクラウドプロバイダーを選択し、定期的なセキュリティ監査を行うことが重要です。

サーバーレスが活用できる場面

ここからは、サーバーレスが活用できる場面についてご紹介します。

サーバーレスが活用できる場面は、下記の通りです。

  • イベント駆動型アプリケーション
  • マイクロサービスアーキテクチャ
  • バッチ処理や定期的なタスク
  • テスト環境の構築

一つずつ説明していきます。
サーバーレスの向き不向きについては、以下の記事で詳しく解説しています。

イベント駆動型アプリケーション

イベント駆動型アプリケーションは、ユーザーからの入力やシステムからの通知など特定のイベントをトリガーとし、イベントごとに処理を行うアプリケーションを指します。具体的には、Eメールの送信、データベースの更新、フォームの提出などが考えられます。
サーバーレスアーキテクチャでは、イベントが発生した際にだけリソースが消費され、それ以外の時間はリソースを消費しないため無駄なコストを削減できます。これにより、イベント駆動型アプリケーションの開発と運用が非常に効率的になります。
また、負荷の増減に応じて自動的にスケーリングする特性から、突発的なトラフィック増加にも迅速に対応可能です。これらの点から、サーバーレスはイベント駆動型アプリケーションにおいて大いに活用できる技術と言えるでしょう。

マイクロサービスアーキテクチャ

マイクロサービスアーキテクチャとは、一つの大きなアプリケーションを小さなサービスに分割し、それぞれが独立して動作する構造です。こうしたアーキテクチャにおいて、サーバーレスは大きなメリットを発揮します。
まず、各マイクロサービスが独立してスケールすることが可能となる点です。たとえば、特定のサービスに高負荷がかかった場合でも、そのサービスだけをスケールさせることができるため、リソースの効率的な利用が可能となります。
また、各マイクロサービスが独立しているため、一部のサービスに問題が発生しても他のサービスに影響を及ぼすことなく対応が可能です。
さらに、マイクロサービスはそれぞれが独立した開発とデプロイを行うことができます。これにより、開発サイクルの高速化や迅速なバージョンアップが可能となります。
このように、サーバーレスとマイクロサービスアーキテクチャは、効率的なリソース利用、高い耐障害性、迅速な開発サイクルというメリットを享受することができます。

バッチ処理や定期的なタスク

バッチ処理では、大量のデータを一定の時間帯に処理するため、サーバーレス技術が非常に有効です。サーバーレスでは、必要に応じてリソースがスケーリングされるため、大量の処理を効率的に行うことが可能です。
また、定期的なタスクについても同様です。たとえば、データベースの定期的なバックアップなど、特定の時間に行うタスクはサーバーレスの特性を活かすことができます。

具体的な活用形態は以下の表に示します。

タスク

サーバーレスの活用

大量データバッチ処理

リソースをスケールして処理量に応じた対応

データベースの定期バックアップ

バックアップ実行時間にリソースを確保し、終了後に解放

これらのように、サーバーレスはバッチ処理や定期的なタスクにおいて、スケーラビリティとコストパフォーマンスの高さを活かすことが可能です。

テスト環境の構築

サーバーレスはテスト環境の構築にも有益です。
従来のテスト環境では、物理サーバーまたは仮想マシンの手配、OSのセットアップ、ネットワーク設定など多くの手間が必要でした。しかし、サーバーレスではこれらの作業が一切不要です。
開発とテストを同時に行う場合、環境の差異により予期しないバグが発生するリスクがあります。しかし、サーバーレスでは開発環境とテスト環境が同一であるため、リスクを減らすことができます。
また、テスト後に環境を解放すれば費用も発生しないため、予算内で多くのテスト環境を準備することが可能となります。これらの特徴から、サーバーレスはテスト環境の構築において非常に効率的なソリューションと言えます。

サーバーレスを進めるポイント

サーバーレスを進めるポイント


ここからは、サーバーレスを進めるポイントをご紹介します。

サーバーレスを進めるポイントは、下記の通りです。

  • 使用ケースの選定
  • コスト管理
  • セキュリティの確保

一つずつ説明していきます。

使用ケースの選定

サーバーレスを有効に使用するためには、最適な使用ケースの選定が欠かせません。まず、イベント駆動型アプリケーションや一定時間ごとに実行されるバッチ処理など、不規則かつ予測不可能な負荷がかかる場合には、サーバーレスの特性を活かすことができます。
また、新しいプロジェクトや新機能の開発にサーバーレスを活用することは、既存のシステムをリファクタリングするよりも手間がかからず効果的です。

以下が代表的な使用ケースの例です。

使用ケース

説明

イベント駆動型アプリケーション

イベント(ユーザーからのリクエストなど)が発生した時に処理が実行される

マイクロサービス

複数の小さなサービスに分割されたアプリケーション
各サービスは独立したスケーリングやデプロイが可能

バッチ処理

一括して処理を実行するタスク
毎晩データベースのバックアップをとるなど

これらの使用ケースを適切に選定することで、サーバーレスのメリットを最大限に引き出すことが可能となります。

最適なプラットフォームの選択

サーバーレスを進める上での重要なポイントとして、最適なプラットフォームの選択が挙げられます。これは、使用するサービスがビジネスの要件を満たしているか、またコストパフォーマンスが良いか等を考慮する必要があります。

たとえば、主要なサーバーレスプラットフォームとして「AWS Lambda」、「Google Cloud Functions」、「Azure Functions」などがあります。これらのプラットフォームはそれぞれ特性や特徴が異なります。

具体的には以下のような要素を比較することが有効です。

  1. パフォーマンス:レスポンス速度や処理能力を比較
  2. 費用:使用料金や料金体系の明瞭さを評価
  3. サポート:公式のサポート体系やコミュニティからのサポート状況を確認
  4. セキュリティ:セキュリティ対策やコンプライアンス対応状況を検討

これらの要素を考慮し、自社のビジネスニーズや開発環境に合わせたプラットフォームを選択することが、サーバーレス実装における成功への鍵となります。

コスト管理

サーバーレスアーキテクチャの導入では、コスト管理が重要なポイントとなります。サーバーレス環境では、従来のサーバーベースの環境と異なり、リソースの利用量に応じて課金される形態をとります。これは、無駄なリソースを消費することなく、必要な時に必要な分だけリソースを利用できるというメリットをもたらします。
しかし、この特性はコスト管理の難しさをもたらす可能性があります。たとえば、大量のリクエストが突如として発生した場合、コストが急激に増大することもあります。そのため、事前にリソース利用の上限設定や、アラート通知を設けるなどの対策が求められます。
また、各クラウドサービスプロバイダーでは、コスト管理ツールを提供しています。これらを活用し、リソースの利用状況を適時モニタリングし、必要に応じて調整することがコスト管理における重要なポイントとなります。

セキュリティの確保

サーバーレス環境では、セキュリティの確保が重要な要素となります。特に、ベンダーにセキュリティを一部委ねる形になるため、リスク管理が求められます。
まず、セキュリティポリシーの策定と適用が必要です。たとえば、IAM(Identity and Access Management)を使い、必要最小限のアクセス権限を設定するという対策があります。
データの暗号化も重要なポイントです。機密情報を含むデータは、保存時(静的データ)だけでなく、通信時(動的データ)も暗号化することで情報漏洩のリスクを低減します。
また、定期的なセキュリティ監査を行い、脆弱性の早期発見と対策を行うことも大切です。

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まとめ

本記事では、サーバーレスのメリットとデメリットを詳細に解説し、導入を検討する際のポイントをご紹介しました。

サーバーレスは、クラウドコンピューティングの新たなる進化として、開発者や企業に多くのメリットをもたらしています。その中でも、コスト削減や、開発速度の向上などが特に注目されます。しかし、サーバーレスには、コールドスタートの問題やベンダーロックインのリスクなどのデメリットもあります。
サーバーレスを採用する際にはこれらのメリットとデメリットをバランスよく考慮し、組織のニーズやプロジェクトの要件を十分に理解した上で最適な決定をすることが重要です。

 

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