プライベートクラウドとは?導入メリットや注意点をわかりやすく解説
クラウド活用が一般化するなかで、企業はセキュリティやガバナンスを確保しつつ、柔軟なIT基盤を整えることが求められています。特に情報システム部門や経営層にとって、どのクラウド形態を採用するかは、事業の継続性やシステムの将来性に直結する重要な意思決定です。その選択肢のひとつであり、近年注目度が高まっているのがプライベートクラウドです。自社専有の環境を構築できる点に魅力があり、セキュリティ要件の厳しい業界を中心に導入が進んでいます。本記事ではプライベートクラウドの仕組みと特長を整理し、パブリッククラウドとの違い、導入時におさえておくべきポイントまで詳しく解説します。
目次
- 1. プライベートクラウドとは
- 2. プライベートクラウドの基本的な仕組み
- 3. クラウド環境の分類
- 4. パブリッククラウドとの違い
- 5. プライベートクラウドの種類
- 6. オンプレミス型プライベートクラウド(自社運用)
- 7. オンプレミス型のメリット
- 8. オンプレミス型のデメリット
- 9. ホステッド(ホスティング)型プライベートクラウド(外部運用)
- 10. ホステッド型のメリット
- 11. ホステッド型のデメリット
- 12. プライベートクラウド導入のメリット
- 13. 高いセキュリティとコンプライアンス対応
- 14. システム構成・運用の自由度が高い
- 15. 既存システムとの親和性が高い
- 16. 安定したパフォーマンスを維持できる
- 17. プライベートクラウド導入時の注意点
- 18. 初期コスト・運用コストの把握
- 19. 運用・保守の体制構築
- 20. 拡張性・移行性の確保
- 21. パブリッククラウドとの併用(ハイブリッドクラウド)もおすすめ
- 22. 安全で最適なクラウド環境を構築するならICのITソリューションへ
- 23. まとめ
プライベートクラウドとは
プライベートクラウドとは、ひとつの企業だけが使うために用意された“専用のクラウド環境”のことです。一般的なクラウドサービスは、多くの企業が同じ仕組みを共有して使いますが、プライベートクラウドは自社だけのために用意されたスペースのように扱えます。
外部の企業と仕組みを共有しないため、会社のルールに合わせて環境を作りやすく、情報の扱い方について厳しい基準がある企業でも安心して利用できます。
ここでは、プライベートクラウドの基本概要を解説いたします。
プライベートクラウドの基本的な仕組み
プライベートクラウドは、物理サーバーを仮想化技術によって柔軟に利用できる環境として構築されます。サーバーやネットワーク、ストレージを統合管理することで、オンプレミスのような安定性と、クラウド特有の拡張性を両立できます。
また、利用者が自社に限定されるため、アクセス制御やセキュリティ監査の基準も企業独自のルールに最適化しやすい点が特長です。
クラウド環境の分類
クラウドは主にプライベートクラウド、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウドに分類されます。
複数企業で共有する大規模基盤を利用するのがパブリッククラウド、自社専有の環境を構築するのがプライベートクラウド、双方を組み合わせて業務に応じて使い分ける形がハイブリッドクラウドです。
どの形態を選択するかは、セキュリティ要件、運用コスト、システムの柔軟性といった観点に左右されます。
パブリッククラウドとの違い
パブリッククラウドは複数企業が同じ基盤を共有するため、導入スピードやコスト面に優れている一方、企業ごとの細かな設定や厳密なセキュリティ要件には対応しづらいケースがあります。
それに対してプライベートクラウドは、自社専用環境を持てることから、ネットワーク構成、セキュリティレベル、運用ルールを自由に調整できます。
また、データの保管場所を明確にできるため、金融業や医療業などの高度なコンプライアンスを求められる組織でも安心して活用できます。
このように、利便性を重視するか、安全性と統制を重視するかによって最適なクラウドの選択肢は大きく変わります。
プライベートクラウドの種類
プライベートクラウドには、大きく「オンプレミス型」と「ホステッド型」の2つの運用形態があります。どちらも自社専用のクラウド環境を利用できる点は共通していますが、サーバーをどこに置くか、だれが運用するかといった点で違いがあります。ここでは、それぞれの仕組みと特徴をわかりやすく説明します。
オンプレミス型プライベートクラウド(自社運用)
オンプレミス型は、自社が保有するサーバーやネットワーク機器を使ってクラウド環境を構築する方法です。社内のサーバールームやデータセンターに機器を設置し、システムの設計から運用、保守まで自社のIT部門が担います。従来のオンプレミス環境に近い形でクラウド化を進められるため、既存システムとの連携やカスタマイズが柔軟に行える点が特徴です。
オンプレミス型のメリット
オンプレミス型では、サーバーやネットワークの構成を自社の方針に合わせて自由に設計できます。
外部と環境を共有しないため、セキュリティポリシーを細かく設定しやすく、情報管理の厳しい企業でも安心して運用できます。
また、物理機器を自社管理できることで、システムをどのように拡張するか、どのような運用ルールを適用するかを柔軟に決められます。
オンプレミス型のデメリット
一方で、オンプレミス型はサーバー機器の導入や保守にかかる初期コストと運用コストが大きくなりやすい点は注意が必要です。
運用を担う社内エンジニアの負担も大きくなるため、専門知識を持った人材の確保が欠かせません。
また、設備の増設や更新も自社で対応する必要があるため、長期的な計画とコスト管理が求められます。
ホステッド(ホスティング)型プライベートクラウド(外部運用)
ホステッド型は、クラウド事業者やデータセンター事業者が提供する専用クラウド環境を利用する方法です。自社専用の領域を外部のデータセンターに用意してもらい、サーバー機器の管理や保守は事業者が行います。
自社専有でありながら、物理機器の面倒を外部に任せられるため、プライベートクラウドの利用ハードルを下げられる点が特徴です。
ホステッド型のメリット
外部事業者がサーバーの設置・運用・監視を行ってくれるため、自社で専門的な設備や人材を抱える必要がなくなります。オンプレミス型よりも初期投資を抑えやすく、クラウド基盤を短期間で利用開始できる点も魅力です。専用環境であるためセキュリティ面も確保しやすく、パブリッククラウドより厳しい管理体制を求める企業にも適しています。
ホステッド型のデメリット
自社で自由に機器構成を変更できない場合があり、カスタマイズ性には制限が生まれます。また、運用基盤は外部に依存するため、障害発生時の対応スピードや復旧方針が事業者のルールに左右される可能性があります。ネットワークの利用状況によっては、通信経路の最適化が必要になるケースもあります。
プライベートクラウド導入のメリット
プライベートクラウドには、企業の基盤をより安全で扱いやすくするためのさまざまな利点があります。
専用環境ならではの強みを理解することで、自社の課題に合ったクラウド選択がしやすくなります。
ここでは、導入を検討する際に知っておきたい主なメリットを整理して紹介します。
高いセキュリティとコンプライアンス対応
プライベートクラウドは、自社専用のクラウド環境で運用できるため、外部の企業とデータ領域を共有しません。
この特性により、アクセス制御やネットワーク分離などのセキュリティ対策を自社の基準に合わせて細かく設定できます。
特に金融や医療、公共機関など、厳格なコンプライアンスが求められる業界では、データの保管場所や取り扱いルールを明確にできる点が大きなメリットになります。
システム構成・運用の自由度が高い
自社専用環境であるため、サーバー構成やネットワーク設計、利用するソフトウェアの選定まで、細かな部分を自社の要件に合わせてカスタマイズできます。業務に合わせてリソース配分を調整したり、独自の運用ルールを適用したりするなど、パブリッククラウドでは実現が難しい柔軟な構築が可能です。また、運用ポリシーを統一しやすく、現場の業務効率を損なわない形でクラウド化を進められます。
既存システムとの親和性が高い
長く使い続けてきた基幹システムやオンプレミス環境との連携が必要な場合、プライベートクラウドは非常に相性がよい選択肢です。ネットワーク構成を自社に最適化できるため、オンプレミスとクラウド間の通信を安全かつ安定的に確保できます。既存システムの仕様に合わせてチューニングも行えるため、クラウド移行時のトラブルを最小限に抑えながら、段階的なモダナイゼーションを実現できます。
安定したパフォーマンスを維持できる
利用者が自社のみであるため、他社のアクセス増加によって処理速度が低下するリスクがありません。常に一定のパフォーマンスを維持できる点は、止められない業務や大量のトランザクションを処理するシステムにとって大きな安心材料となります。必要に応じてリソースの増設や最適化を行うこともでき、業務の成長に合わせた柔軟な性能管理が可能になります。
プライベートクラウド導入時の注意点

プライベートクラウドは多くのメリットがある一方で、導入前に検討しておくべきポイントも存在します。特にコストや運用体制、将来的な拡張性などは、導入後のシステム運用に大きく影響します。ここでは、失敗しないために押さえておきたい注意点を紹介します。
初期コスト・運用コストの把握
プライベートクラウドは専用環境を構築するため、サーバー機器の導入費用やネットワーク設備の準備など、パブリッククラウドに比べて初期投資が大きくなる場合があります。オンプレミス型であれば設備更新や電力・空調維持などのランニングコストも必要です。ホステッド型でも、専用領域のため一般的なクラウドサービスより費用が高くなるケースがあります。導入前には、初期費用と継続費用の両方を明確にし、長期的なコストを見据えて計画を立てることが重要です。
運用・保守の体制構築
自社専用環境という特性上、監視や障害対応、セキュリティ更新などの運用業務をどのように行うかを事前に決めておく必要があります。オンプレミス型の場合は社内エンジニアの負担が大きくなりやすく、十分なスキルと人数を確保できないと運用が滞るリスクがあります。ホステッド型の場合でも、事業者との役割分担を明確にし、トラブル発生時の対応フローを整理しておくことが欠かせません。
拡張性・移行性の確保
業務の成長や新しいシステムの追加に備え、柔軟にリソースを増やせる設計になっているかを確認することが重要です。プライベートクラウドは自由度が高い反面、後から拡張しようとすると追加の機器購入や設定変更が必要になる場合があります。また、将来的にパブリッククラウドやハイブリッドクラウドへ移行する可能性がある場合は、データ形式やネットワーク構成が移行を妨げないかを事前に検討しておく必要があります。拡張性と移行性を確保しておくことで、想定外の業務変化にも柔軟に対応できます。
パブリッククラウドとの併用(ハイブリッドクラウド)もおすすめ
近年は、プライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせた「ハイブリッドクラウド」を採用する企業も増えています。業務の性質に合わせて環境を使い分けられるため、セキュリティと柔軟性の両立が可能になります。たとえば、機密性の高いデータはプライベートクラウドで厳重に管理し、負荷が変動しやすい業務や一時的なシステム拡張にはパブリッククラウドを利用するといった形です。企業ごとの要件に合わせて最適な構成を組めるため、クラウド活用の幅が大きく広がります。
安全で最適なクラウド環境を構築するならICのITソリューションへ

引用元:システム開発のIC
クラウド環境の選択は、企業の事業継続や将来的な成長にも影響する重要な判断です。プライベートクラウドを含むクラウド基盤の設計・構築には、高度な専門知識と安定した運用体制が欠かせません。ICでは、クラウド導入に関するコンサルティングから、ネットワーク設計、サーバー構築、運用サポートまでを一貫して提供しています。自社のセキュリティ要件や業務フローに合わせた最適なクラウド環境を提案し、安全かつ効率的なIT基盤づくりを支援します。クラウドの導入や最適化に不安がある場合でも、豊富な実績をもつエンジニアが丁寧にサポートします。
まとめ
プライベートクラウドは、自社専有の環境で高度なセキュリティや自由度の高いシステム構成を実現できるクラウド基盤です。
パブリッククラウドよりも細かな運用ルールを適用しやすく、既存システムとの親和性が高い点もメリットとして挙げられます。
一方で、コストや運用体制など検討すべき課題もあるため、導入前の慎重な計画が欠かせません。業務やデータの特性に合わせて、プライベートクラウド、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウドを適切に使い分けることが、企業のIT基盤を強くするポイントとなります。
クラウド環境の構築や移行に悩んだ際は、専門知識を持つパートナーのサポートを受けることで、より安全で最適な環境を実現できます。
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