日本では、労働人口の減少や少子高齢化などの課題に直面しており、企業がこれからも成長し続けるためには、AIの活用が不可欠です。しかし、ただAIを導入すればいいというわけではありません。
AIを効果的に活用するには、自社の課題やニーズを理解し、戦略を立てる必要があります。本記事では、AIを活用してできることや成功事例、活用するポイントを解説します。
日本のAI活用の現状
AIは、日本語で「人工知能」と訳され、人間の言語の理解や認識、推論といった知的な行動をコンピュータに行わせる技術のことです。
総務省が「令和元年版情報通信白書」で発表したデータによると、7か国で企業のAI導入状況の比較を行った結果、日本は最下位という結果になりました。この結果から、日本のAI活用状況は、他の先進国と比較して大きく遅れをとっていることがわかります。
同データで産業別に見ても、ほとんどの産業において、AI導入・運用が遅れていることが明らかです。日本企業がAIを活用し、競争力を高めていくためには、早急な対策が必要です。
企業にAI活用が必要な理由
企業にAI活用が必要な理由は、下記の通りです。
- 「2025年の崖」問題の回避のため
- 「2040年問題」に対応するため
- 大きく経済成長するため
「2025年の崖」問題の回避のため
「2025年の崖」とは、国内企業の多くが利用しているレガシーシステムの老朽化が進み、維持管理コストが増大することで、2025年以降、最大で年間12兆円もの経済損失が発生すると予測されている問題のことです。
経済産業省が公開した「DXレポート」では、この「2025年の崖」を回避するためには、AI(人工知能)などの革新的なテクノロジーを積極的に活用し、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が必要だとされています。
そのため、企業はAIの活用やDXを推進し、業務効率化や属人化の解消を図り、生産性の向上や競争力の強化につなげていく必要があるでしょう。
「2040年問題」に対応するため
2025年の崖を無事に乗り越えても、2040年頃には「2040年問題」が到来するといわれています。
「2040年問題」とは、いわゆる「団塊ジュニア世代」が65~70歳を迎え、日本の高齢化がさらに進むことによって引き起こされる問題のことです。
総務省の「自治体戦略2040構想研究会第一次報告」によれば、2040年頃にかけて、下記のような問題が発生するといわれています。
- 若者を吸収しながら老いていく東京圏と支え手を失う地方圏
- 標準的な人生設計の消滅による雇用・教育の機能不全
- スポンジ化する都市と朽ち果てるインフラ
これらの問題に対応するためには、AIを活用し、従来の半分の人員でも機能を維持できる体制構築や環境整備が必要です。
大きく経済成長するため
中小企業庁が中心となって展開している戦略的基盤技術高度化支援事業が2020年3月27日に公表した「最終報告書」によると、国内企業がAIを積極的に導入すれば、2022年までに最大7兆円、2025年までに最大34兆円もの経済効果がもたらされるとの推計が示されています。
この経済効果を一人当たりの生産性に換算すると、540万円/人から610万円/人まで改善されるとの試算も同報告書で言及されており、AIの活用が生産性向上と経済成長に大きく寄与することが期待されています。
しかし、この経済成長を実現するためには、手作業が中心となっている業務プロセスを抜本的に見直し、AIの運用を前提とした業務プロセスへと変革しなければいけません。
つまり、単にAIを導入するだけではなく、業務プロセスそのものをAIの活用に適した形に再設計することが必要です。
AIを活用してできること
企業がAIを活用してできることは、下記の通りです。
- 画像認識
- 自然言語処理
- 音声認識
- データの分析・予測
画像認識
画像認識とは、カメラなどの映像や画像から、さまざまなデータを得る分析技術のことです。
AIを活用した画像認識技術により、映像に映っている物体が何であるかの判断や文字認識、画像解析などができます。
例えば、工場の製造ラインに設置されたカメラの映像をAIで解析することで、製品の品質チェックを自動で行うことが可能です。
人の目による目視検査では見落としがちな細かな傷や汚れなども、AIによる画像認識であれば高い精度で検出できます。これにより、品質管理の高度化と人的コストの削減を図れるでしょう。
株式会社ICでは、マンションやオフィスビルへの販売向けに、監視カメラのAI画像解析サービスの開発を行いました。このプロジェクトでは、関連する認証端末や周辺機器が多岐にわたったため、ICの組み込み技術の経験とノウハウを大いに活かせました。
本事例の詳細は、下記からご覧ください。
自然言語処理
自然言語処理とは、人間の言語をコンピュータが理解し、処理する技術のことです。
人間の言語は、文法や語彙、文脈など複雑な要素で構成されているため、そのままではコンピュータが理解できません。そこで、自然言語処理技術を用いて、人間の言語をコンピュータが理解できる形式に変換することで、分析や処理が可能です。
自然言語処理の活用例としては、チャットボットやカスタマーサポートの自動化などが挙げられます。
ユーザーからの問い合わせや質問を自然言語処理技術で分析し、回答を自動で生成することで、人的コストを削減しつつ、迅速かつ的確なサポートを提供できます。
このように自然言語処理の技術は、人間とコンピュータのコミュニケーションを円滑にし、業務の効率化や自動化に大きく貢献します。
音声認識
音声認識とは、人間が発した言葉や声、会話をAIが解析し、テキストデータへと変換して出力する技術のことです。
音声認識は、下記のようにさまざまな分野で活用されています。
- 文字起こし:インタビューの音声をテキストに自動変換し、書き起こしを効率化
- 音声アシスタント:スマートフォンなどに搭載され、ユーザーをサポート
- 音声入力:キーボードを使わずに、音声で文字入力ができる
- コールセンター業務の自動化:問い合わせ内容を音声認識で自動的にテキスト化
このように、音声認識技術はさまざまな分野で活用されており、業務の自動化や効率化に大きく貢献しています。
データの分析・予測
データの分析・予測とは、AIを活用してこれまでの膨大なデータを分析し、最も効率的で効果的な方針や計画を立案することです。AIは、膨大な過去のデータを学習することで、パターンを発見し、最適解を導き出せます。
例えば、製造業の需要予測や在庫管理、生産計画の最適化などに活用できます。過去の販売実績データをAIに学習させることで、需要を高精度で予測できます。
その予測結果をもとに、最も利益が出る生産数や仕入れ数を算出し、無駄のない生産計画や調達計画を立てられます。
AIによるデータの分析・予測を行うことで、従来の経験や勘に頼っていた業務を効率化し、より精度の高い意思決定ができます。
ビジネスでAI活用に成功した事例
ここでは、AIをビジネスに活用し成功した事例をご紹介します。
今回ご紹介する事例は、下記の通りです。
- 日本気象協会
- ヤマト運輸株式会社
- 三井不動産リアルティ株式会社
日本気象協会
日本気象協会は、気象データを活用して安心・安全・快適な社会づくりを目指している一般財団法人です。同法人では、天気予報の原稿作成にAIを活用しました。天気予報は毎日発表するものであり、正確さに欠ける気象情報を伝えるわけにはいきません。
そのため、「気象情報のどのような情報を、どのように届ける場合に生成AIを活用するのか」を検討するところから始め、「正確な気象データを届けるために、生成AIを活用する」ということを念頭に置いて活用しました。
創立74年目を迎える日本気象協会には、長年蓄積しているデータがあり、生成AIが学習できるデータが豊富に揃っていました。このデータを活用することで、AIによる高精度な天気予報の生成ができました。
また、生成AIを活用する際は、社内の情報セキュリティ部門のガイドラインに従って、生成AIのインプットに利用しても問題ないデータを選ぶようにしました。
このように、セキュリティに配慮しながら、AIを活用することで、効率的かつ正確な天気予報の作成を実現しています。
本事例の詳細については、下記からご覧ください。
生成AIが気象の未来を変える?部署横断「経営ビジョン推進プロジェクト」
ヤマト運輸株式会社
ヤマト運輸株式会社は、宅配業界最大手で全国に約4000の拠点を持つ企業です。
同社では、新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、宅配需要がさらに拡大し、従来の貨物量予測では限界を迎えようとしていました。
そこで、AIの機械学習による貨物量の予測に取り組み、新たな実装方式とされる「MLOps」を採用し、その実用化に成功しました。
MLOpsとは、機械学習モデルをビジネス適用するために、開発から分析、運用までを効率化するための手法です。MLOpsを活用したAIの導入により、全国にある配送センターにいつ、どのくらいの荷物が届くかを高精度で予測できるようになりました。
この予測結果を活用することで、配送センターごとに最適な人員配置や車両手配を行えるようになり、配送効率の大幅な改善を実現しています。
本事例の詳細については、下記からご覧ください。
AIのPoC疲れから脱却せよ!「MLOps」の導入がヤマト運輸にもたらした確かな効果 | IT Leaders
三井不動産リアルティ株式会社
三井不動産リアルティ株式会社は、不動産仲介や所有不動産の売却、購入、賃貸に関するサービスを提供している企業です。
同社では、マンションを所有する方が将来住みかえをする際に、マンションの売却活動や購入物件の選定をスムーズに行えるよう、AIを活用した新サービス「リハウスAI査定」を開発しました。
リハウスAI査定は、三井不動産リアルティで実際に取引された膨大な成約事例データをAIに学習させることで、立地やグレード、階数、向きなど住戸の特徴に応じて、高い精度で推定成約価格を算出できるシステムです。
このシステムにより、気軽に所有するマンションの推定成約価格を把握できるようになりました。
本事例の詳細については、下記からご覧ください。
ニュースリリース:AIによりマンションの推定成約価格を即時に算出する「リハウスAI査定」を三井不動産リアルティとエクサウィザーズで共同開発
AIを上手く活用していくポイント
ビジネスにAIを上手く活用していくポイントは、下記の通りです。
- 明確な目標設定
- データの整備
- 適切なAIツールの選定
- AI活用のプロに依頼する
明確な目標設定
AIを導入する際には、漠然とした考えでは上手くいきません。自社の抱える課題を明確にし、その問題をAIがどのように解決できるかを具体的に設定することが重要です。
例えば、下記のような目標設定が考えられます。
目標
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内容
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顧客サービスの向上
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- チャットボットやカスタマーサポートの自動化
- 24時間365日の対応を可能にする
- 顧客満足度を高める
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業務効率化
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- 画像認識、音声認識、自然言語処理などの技術を活用
- 人の手作業で行っていた業務を自動化することで生産性を向上させる
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新しいビジネスチャンスの発見
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- 膨大なデータをAIで分析
- これまで見えていなかった顧客ニーズや市場トレンドを発見
- 新たなビジネスチャンスを生み出す
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自社の課題に対して、AIがどのような解決策を提供できるかを明確にすることで、AI導入の目的を具体化でき、技術選定やシステム設計につなげられます。
データの整備
AIを活用して需要予測や在庫管理を行う場合、まずはAIに学習させるデータの準備が必要です。
AIは、大量のデータから特徴や傾向を学習することで、その知能を高め、需要予測や在庫管理の精度を向上させられます。
具体的には、過去の販売実績データや在庫データ、市場動向データなどを収集し、AIに学習させるためのデータセットを作成します。その際、AIにとって学習しやすいデータの形式に整えることが必要です。
また、データの品質も重要です。欠損値や異常値などは、AIの学習を妨げる要因となります。そのため、データのクレンジング作業を行い、AIに適したクリーンなデータを準備しましょう。
ただし、こういった作業は、専門知識が必要なため、ITコンサルタントやAIエンジニアが在籍しているシステム開発会社への依頼がおすすめです。
適切なAIツールの選定
ビジネスにAIを活用する際には、目的に合ったAIツールやプラットフォームを選びましょう。
AIツールは用途によってさまざまなものがあり、例えば、下記のようなものが挙げられます。
カテゴリー
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特徴
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代表例
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機械学習プラットフォーム
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データの前処理から機械学習モデルの構築・評価まで一貫して行える
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- Amazon SageMaker
- Google Cloud AI Platform
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自然言語処理ツール
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テキストデータの分析や処理に特化
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- BM Watson Natural Language Understanding
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画像認識ツール
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画像データの分類や物体検出などを実現
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- Google Cloud Vision API
- Microsoft Computer Vision
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ツール選定の際は、導入コストとランニングコストが予算内に収まるか、十分な機能を備えているかなども考慮しながら選びます。
AI活用のプロに依頼する
ビジネスでAIを活用するためには、専門知識が必要です。しかし、AIは比較的新しい分野のため、自社だけでAIを活用しようとすると、スキルや経験不足から失敗してしまう可能性があります。
そのため、AIの活用を成功させるためには、AIの活用支援実績が豊富なシステム開発会社への依頼がおすすめです。
システム開発会社には、AIに精通したITコンサルタントやエンジニアが在籍しているため、自社の状況を熟知したうえで、AIの導入から運用までをトータルでサポートしてくれます。システム開発会社のサポートがあれば、スムーズに導入を進められるでしょう。
ITコンサルタントについては、下記の記事で詳しく解説しています。
AI活用を検討しているならICにお任せください
引用元:システム開発のIC
株式会社ICは40年以上の歴史を持ち、豊富な実績と信頼を築き上げてきたITソリューション企業です。
お客様の業界や業務内容を深く理解したうえで、業務効率化やコスト削減、生産性の向上など、AIを活用した企業課題の解決に向けたサポートが可能です。
AIの活用を検討されている場合は、下記からお問い合わせください。
コンサルティング|システム開発のIC
まとめ
本記事では、AIを活用してできることや成功事例、活用するポイントを解説しました。
AIを活用すれば、画像認識や自然言語処理、音声認識、データ分析・予測などが可能になり、製品の品質チェックやカスタマー対応などが自動化できます。
AIを上手く活用するためには、活用目標の設定と適切なAIツールの選定が重要です。AIの活用には、専門知識が必要です。自社だけで対応が難しい場合は、AI導入支援実績が豊富なシステム開発会社に依頼しましょう。
AI活用の依頼なら、コンサルティング|システム開発のICにご相談ください。