ブログ記事|システム開発のIC

PoCとは?意味や定義、4つのメリットを簡単に解説|システム開発のIC

作成者: Admin|May 14, 2023 3:00:00 PM

PoCとは、新しい理論やアイデアなどの実現可能性を事前に確かめるプロセスです。開発リスクの回避やコストの見直しなどにつながり、IT業界でも注目されています。今回は、PoCとは何か、定義や実施するメリット、実施ステップ、注意点などを解説します。


目次[非表示]

  1. 1.PoC(概念実証)とは?その他との違い
    1. 1.1.プロトタイプとの違い
    2. 1.2.実証実験との違い
    3. 1.3.MVPとの違い
  2. 2.PoCの4つのメリット
    1. 2.1.1.開発リスクを抑えられる
    2. 2.2.2.コストの見直しにつながる
    3. 2.3.3.検証結果を応用できる
    4. 2.4.4.投資家や企業から注目される
  3. 3.PoC実施までの4ステップ
    1. 3.1.1.目標値を設定する
    2. 3.2.2.実施方法を検討する
    3. 3.3.3.検証する
    4. 3.4.4.評価する
  4. 4.PoCを実施する際の注意点
  5. 5.PoC成功のための3つのポイント
    1. 5.1.1.実際と同じ条件で検証を進める
    2. 5.2.2.小さな規模からスピーディーにスタートする
    3. 5.3.3.チームで目的を共有する
  6. 6.まとめ


PoC(概念実証)とは?その他との違い

PoCはProof Of Conceptの略で、日本語では「概念実証」と訳されます。PoCとは、新しい理論やアイデア、手法が実現可能かどうかを確かめるために、プロトタイプの開発前に検証することです。

PoCは、もともと製造業や製薬業のように、大規模な設備投資と技術開発が行われる業界で活用されてきました。近年、IT業界でも広く用いられており、新しいサービスや製品が次々と開発されている現在、非常に重要なプロセスです。

以下では、PoCと混同しやすいプロトタイプや実証実験、MVPとの違いを解説します。


プロトタイプとの違い

プロトタイプとは、試作品を作る行程のことです。方向性や実現性をある程度固めたのちに、完成品を作る前にプロトタイプで作成します。プロトタイプを行うことで、製品やサービスをブラッシュアップして完成品を作成できるのがポイントです。

PoCはその前段階で、方向性や実現性をある程度固めるプロセスです。そのためPoCを経て、実現可能性を検証したのちにプロトタイプで作成すると覚えておきましょう。


実証実験との違い

実証実験とPoCは、非常によく似た概念です。両者は、実施する趣旨が微妙に異なります。実証実験は、新しい製品やサービスを開発する際の問題点を明らかにするものです。一方、PoCは実現可能性を確かめるために行われます。

しかし、PoCを行うことで問題点が浮き彫りになる場合も多く、両者はほとんど同じものと捉えて問題ないでしょう。


MVPとの違い

MVPは、Minimum Viable Productの略で、「実用最小限の製品」と訳されます。MVPは、顧客が求める最低限の機能を持った製品やサービスのことです。本格的にリリースする前にMVP製品を使用してもらい、市場の反応を見て短期間で仮説検証できます。

MVPは、製品やサービスを市場に出したときの顧客の反応を見ることを目的に行われるものです。一方のPoCでは、アイデアや技術が実現可能かを検証するために、簡易版の製品やサービスが用いられます。



PoCの4つのメリット

PoCを実施するメリットは、以下の4つです。

  • 開発リスクを抑えられる
  • コストの見直しにつながる
  • 検証結果を応用できる
  • 投資家や企業から注目される

PoCでは本格的な開発に移る前にリスクやコストを明確化できるため、費用対効果の高い開発を実現できます。さらに、検証結果を投資判断に応用できたり、結果を使って投資家や企業からの賛同を得られたりするのもメリットです。

ここでは、それぞれのメリットについて詳しく解説します。


1.開発リスクを抑えられる

PoCで仮説検証を小規模で行うことで、本格的な開発に移行する前に実現可能性を判断できます。そのため、開発リスクを抑えられるのがメリットです。技術的に実現可能か、使い勝手に問題はないか、動作は安定しているかなどを事前に確認でき、「開発したものの失敗に終わった」というリスクを回避できます。

PoCを経て足りない技術や情報などがわかれば、それをもとに新規事業の準備を進められるのもメリットです。


2.コストの見直しにつながる

PoCを実施することで費用対効果を確認でき、コストや工数の見直しにつながります。検証せずに本格的な開発に入ると、最終的に開発がうまくいかず、かけた費用が無駄になることも多いです。また、無駄なコストや工数が生じていることにも気づけません。

PoCによって、本格的な開発に移る前に開発・製造過程を確認できます。費用対効果や工数を検証できるため、コストや工数を見直せるのがメリットです。



3.検証結果を応用できる

PoCによって得られた検証結果は、投資の判断材料として応用できます。PoCでは費用対効果を明らかにできるため、1回の投資における損失と成果の比率を数値化可能です。これをリスクリワードレシオといい、1回の投資の価値を数値化できるため、投資すべきか否かの判断に活用できます。

さらに、PoCの結果をもとにプロトタイプやMVPを作成し、顧客の反応を事前に把握したうえで、商品を市場に投下できるのも魅力です。


4.投資家や企業から注目される

PoCで実現可能性を証明できれば、投資家やほかの企業から高い評価を得られる可能性があります。投資家の賛同を得ることは、企業が存続するために不可欠です。PoCの検証結果を示すことで、投資家の賛同や協力を得たうえで新規事業を推進できます。

ほかの企業との業務提携を検討している企業にとっても、PoCは有効です。机上の空論ではないことを証明できるため、有力な企業との業務提携をスムーズに実現できる可能性が高まります。



PoC実施までの4ステップ

PoCは、以下のステップで実施しましょう。

  • 目標値を設定する
  • 実施方法を検討する
  • 検証する
  • 評価する

いきなりPoCを実施しても、必要なデータが得られず、コストや時間が無駄になってしまいます。失敗を防ぐためには、検証の前に目標を明らかにし、実施方法をよく検討しなければなりません。

ここでは、PoCを実施する4つのステップについて解説します。


1.目標値を設定する

まずは、PoCで収集したいデータや得たい目標値などを設定しましょう。ゴールを明確化しないと、PoCを進めるうちに本来の目的とはずれた検証になってしまい、PoCを有効活用できなくなるリスクがあります。

PoCは、あくまでも実現可能性を仮説検証するためのステップです。PoCを実施することが目的にならないよう、得たい目標値を具体的に設定し、そのために必要な実験や検証作業を明らかにしましょう。


2.実施方法を検討する

次に、検証作業の進め方や、データの収集方法などを検討します。なるべく小規模かつ現実に即した実験や検証作業を行うことが大切です。具体的には、実際の使用環境に似たシナリオや、ターゲットユーザーに近い属性のモニターを準備しましょう。

さらに、PoCにかける期間や工数を見積もり、何のデータを測定するための検証作業であるかを明確化する必要があります。


3.検証する

PoCの目標や実施方法などが確定したならば、実際に実験や検証作業を行いましょう。検証の精度を高めるためには、できるだけ多くの方に利用してもらい、客観的な評価を集めることが大切です。たとえ小規模な導入であっても、多くのターゲットユーザーからの意見を取り入れ、客観的で信頼性の高い検証を実施できるようにしましょう。


4.評価する

最後に、検証結果を評価します。実現可能性を正確に判断するためには、データを厳正に評価することが重要です。

ここで良い結果が出れば、本格的な開発に進みます。期待どおりの結果が出なかった場合は、原因を分析して次の検証に活かしましょう。

評価プロセスでは実現可能性だけではなく、開発や製造における課題を明確化することも大切です。より確実で費用対効果の高い開発を実現できるよう、想定されるリスクを洗い出してコストや工数を見直しましょう。

PoCを実施したプロジェクト事例については、以下のインタビューをご覧ください。

  技術者インタビュー 今までの技術をAWSを使用したクラウドでの開発にも 金融系取引に関するシミュレーションシステムをAWSサーバレスアプリケーションで実現するための構築を担当した、K氏にお話を伺いました。 株式会社IC



PoCを実施する際の注意点

PoCを実施する際は、「PoC疲れ」や「PoC貧乏」に陥らないように注意しなければなりません。

PoC疲れとは、PoCで期待した成果が得られない状態が続き、本格的な開発に進めずに行き詰まってしまうことです。PoC貧乏とはPoCを繰り返し、ただただ膨大なコストがかかってしまっているだけの状態を指します。

PoCを繰り返すだけで、なかなか実際の開発に進めないようでは意味がありません。

PoCは、小規模で実現可能性を仮説検証できる便利なプロセスです。しかし、いたずらにPoCを繰り返してしまうと、プロジェクトのゴールがわからなくなり、本格的に開発をおこなえなくなるリスクがあります。コストや時間も無駄になってしまうため注意が必要です。

PoCを行うこと自体が目的にならないようにしましょう。



PoC成功のための3つのポイント

PoCを成功させるためには、以下のポイントを意識してください。

  • 実際と同じ条件で検証を進める
  • 小さな規模からスピーディーにスタートする
  • チームで目的を共有する

有意義なPoCを実施するためには、精度の高いデータを取得し、小規模な仮説検証を繰り返すことがポイントです。さらに、PoCを進めるうちに目的を見失うことがないよう、あらかじめチームで目的を共有しましょう。

ここでは、PoC成功のための3つのポイントを詳しく解説します。


1.実際と同じ条件で検証を進める

PoCで説得力の高いデータを取得し、実現可能性を正確に評価するためには、実際と同じ環境や条件で検証を進めることが大切です。

実際の現場、あるいは現場と同じ環境を用意してPoCを実施することで、現場からのフィードバックを収集できます。

同じ環境や条件が用意できないとしても、なるべく似た状況や仮想環境を用意しましょう。


2.小さな規模からスピーディーにスタートする

PoCは、スモールスタートで進めましょう。いきなり大規模なPoCを実施すると、PoCのプロセスに多くの時間やコストがかかってしまいます。検証を進めるうちに目的がブレて、PoC自体が無駄になってしまうリスクも否定できません。

PoCを効果的に実施するためには小さな規模からスタートし、仮説検証をスピーディーに繰り返せるようにしましょう。

はじめはスモールスタートさせる予定であっても、PoCを進めるうちにコストや時間が増大してしまう場合もあります。予算オーバーにならないよう、実施方法を検討する際に、PoCにかけるコストや時間の上限を決めておきましょう。


3.チームで目的を共有する

PoCを実施する際は、チーム全体で目的を共有することがポイントです。

あらゆる課題をクリアしようとして、PoCに過度にこだわってしまうと、無駄なコストや工数がかかってしまう可能性があります。しかしPoCは、あくまでも新しい技術やアイデアを実現するための手段であり、それ自体が目的になってはなりません。

PoCを実施する目的を事前にチーム全体で共有し、優先順位をつけて効率的に進められるようにしましょう。



まとめ

PoCとは、本格的な開発の前に新しい理論やアイデア、手法の実現可能性を確かめるプロセスのことです。PoCを実施することで、事前に実現可能性を検証できたり、開発における問題点を明らかにできたりします。PoCは、開発リスクの軽減や開発コストの見直し、投資判断などにつながる重要なプロセスです。PoCを実施する際は、事前に目的を整理してチームで共有し、PoCを行うことが目的にならないように注意しましょう。

​​​​​​​IT業界でPoCを推進する際は、専門人材の確保が大切です。ITに強い人材不足に悩んでいる方は、お気軽にお問い合わせください。