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ネットワーク診断の方法とは?自社でできる確認手順と専門サービスの選び方を解説|システム開発のIC

作成者: Admin|Dec 16, 2025 12:00:00 AM

社内ネットワークが遅い、接続が不安定、セキュリティ面に漠然とした不安があると感じていても、何から確認すればよいのかわからないという情シス担当者やIT責任者は少なくありません。まずは自社で状況を把握し、それでも不安が残る場合には外部のネットワーク診断サービスを検討する、という段階的な対応が現実的です。

本記事では、「ネットワーク診断とは何か」という基本から、自社で実施できる診断方法、専門サービスで行われる診断内容の違いまでを整理します。診断手段の特徴を理解することで、自社にとって本当に必要なネットワーク診断の方法を判断できます。

 

ネットワーク診断とは

ネットワーク診断は、社内ネットワークの現状を正しく把握し、安定した運用や安全性を維持するために欠かせない取り組みです。

ここでは、ネットワーク診断が具体的にどのような調査を行うものなのか、そしてなぜトラブル防止やセキュリティ強化につながるのかについて解説します。

ネットワークの状態を可視化するための調査

ネットワーク診断とは、社内ネットワークがどのような構成になっており、現在どの程度安定して稼働しているのかを客観的に把握するための調査を指します。通信速度や遅延、接続エラーの有無といった表面的な状況だけでなく、ルーターやスイッチの設定、通信経路、ログ情報などを確認することで、ネットワーク全体の状態を可視化します。

 

普段は問題なく使えているように見えるネットワークでも、内部では負荷の偏りや設定ミス、老朽化した機器が原因となるリスクを抱えているケースも少なくありません。ネットワーク診断は、こうした見えにくい問題を洗い出し、現状を正しく理解するための第一歩となります。

トラブル防止・セキュリティ強化に役立つ理由

ネットワーク診断が重要とされる理由は、トラブルが発生してから対応するのではなく、未然に防ぐ手段であるためです。

通信遅延や接続不良が業務に影響を与えてから原因を探すと、復旧までに時間がかかり、業務停止や生産性低下につながる恐れがあります。また、セキュリティ面においても、設定不備や不要な通信ポートの開放などは、外部からの攻撃リスクを高める要因となります。定期的にネットワーク診断を行うことで、こうした潜在的な問題を早期に把握し、安定したネットワーク運用とセキュリティ強化の両立を図ることが可能になります。

 

ネットワーク診断と同様に、インフラ環境を診断する「インフラ診断」については以下の記事で詳しく紹介しています。

自社でできるネットワーク診断の方法

専門サービスを利用する前に、まずは自社で実施できる範囲のネットワーク診断から着手することが重要です。基本的な確認だけでも、トラブルの原因をある程度切り分けられる場合があります。

ここでは、情シス担当者が比較的取り組みやすい代表的な診断方法を紹介します。

① ネットワーク状態の基本チェック(速度・接続・遅延)

はじめに確認したいのが、通信速度や遅延の有無といった基本的なネットワーク状態です。

ブラウザから速度測定ツールを利用し、通常時と問題が発生している時間帯で結果を比較することで、回線混雑や帯域不足の可能性を把握できます。また、複数の端末で同時に確認することで、問題が特定端末に限定されているのか、ネットワーク全体の問題なのかを切り分けやすくなります。

② OS標準の診断機能を使った方法(Windows・Mac)

Windowsでは、「ネットワークとインターネットの設定」から接続中のネットワークを選択し、「ネットワークのトラブルシューティング」を実行することで、IPアドレスの取得状況やDNS設定、ゲートウェイへの接続可否などを自動で確認できます。

Macの場合は、「システム設定」内の「ネットワーク」から対象の接続を選び、「診断」を実行することで、接続状態や設定に問題がないかを順を追って確認できます。これらの機能は操作が簡単なため、一次対応として非常に有効です。

③ ping・tracert などの簡易コマンドを使った方法

より踏み込んだ確認として、pingやtracert(Macではtraceroute)といったコマンドを使う方法があります。

pingは通信の応答速度やパケットロスの有無を確認でき、tracertは通信経路のどこで遅延や停止が起きているかを把握できます。コマンド操作に慣れる必要はありますが、ネットワーク障害の切り分けには有効で、外部要因か社内要因かを判断する材料になります。

④ ネットワーク機器(ルーター・スイッチ)のログ確認方法

ルーターやスイッチなどのネットワーク機器には、通信エラーや接続履歴がログとして記録されています。管理画面にログインし、エラーや警告が頻発していないかを確認することで、機器側の問題を把握できます。

特定のポートだけ通信が不安定な場合や、再起動が繰り返されている場合は注意が必要です。機器ログの確認は、根本原因を探るうえで重要な診断手段です。

専門のネットワーク診断サービスで行われる診断方法

専門のネットワーク診断サービスでは、自社では把握しきれない範囲まで含めて、より高度な調査が行われます。専用ツールや専門知識を用いることで、通信品質だけでなく、セキュリティリスクや構成上の課題を多角的に確認できる点が特徴です。

ここでは、専門のネットワーク診断サービスで行われる診断方法を紹介します。

リモート診断(外部からの脆弱性診断)

リモート診断は、外部ネットワークから社内環境に対して実施される診断方法です。インターネット経由でアクセス可能な機器やサービスを対象に、脆弱な設定や不要な公開ポートがないかを確認します。

自社内からは気づきにくい外部視点でのリスクを把握できる点が特徴です。現地対応が不要なため、比較的短期間かつ低コストで実施しやすい診断方法といえます。

オンサイト診断(現地調査・構成分析)

オンサイト診断は、専門エンジニアが現地に訪問し、ネットワーク機器や配線、構成を直接確認する診断方法です。設計書どおりに構成されているか、機器の配置や設定に問題がないかを詳細に分析します。

実際の運用状況を踏まえた評価ができるため、慢性的な通信遅延や複雑化した構成の見直しに向いています。大規模環境や重要システムでは特に有効です。

ネットワーク脆弱性診断

ネットワーク脆弱性診断では、OSやネットワーク機器、各種サービスに既知の脆弱性が存在しないかを検査します。主に、セキュリティ対策の第一歩として活用されている診断方法です。

脆弱性データベースと照合し、攻撃に悪用される可能性のある設定やバージョンを洗い出します。結果はリスクの高低とともに報告されるため、優先的に対策すべき箇所が分かりやすい点が特徴です。

ネットワークペネトレーションテスト

ペネトレーションテストは、実際の攻撃手法を想定してネットワークへの侵入を試みる診断です。脆弱性診断よりも一歩踏み込み、どこまで侵入できるのか、どの情報にアクセス可能かを検証します。机上のリスクではなく、実被害につながる可能性を把握できる点が特徴です。

重要情報を扱う企業や、高いセキュリティレベルが求められる環境で実施されます。

ログ分析・設定レビュー・構成最適化

専門サービスでは、通信ログやアクセスログの分析、ネットワーク設定のレビューも行われます。不要な通信や設定ミスを洗い出し、パフォーマンスやセキュリティの観点から最適な構成を提案します。

単なる診断にとどまらず、改善策まで含めて提示されるため、運用負荷の軽減や安定性向上につながります。中長期的なネットワーク改善を目的とする場合に有効です。

ネットワーク診断サービスを選ぶ際のポイント

ネットワーク診断サービスは提供会社によって内容や深さが大きく異なります。価格だけで判断すると、必要な診断が含まれていなかったり、改善につながらないケースもあります。そのため、自社の課題や目的に合ったサービスを選ぶことが重要です。

ネットワーク診断サービスを選ぶ際のポイントについて、詳しく紹介します。

診断範囲と内容が明確か

まず確認すべきなのが、どこまで診断してもらえるのかという範囲と内容です。外部公開部分のみなのか、社内ネットワーク全体まで含まれるのかによって、得られる結果は大きく変わります。

診断項目が具体的に提示されていない場合、期待していた調査が含まれていない可能性もあります。契約前に診断対象や手法が明確に示されているかを必ず確認することが重要です。

価格体系と必要な作業ボリューム

ネットワーク診断の価格は、診断範囲や機器数、調査手法によって大きく変動します。定額制なのか、対象ごとの従量課金なのかを確認し、自社環境に対して過不足のない内容かを見極める必要があります。

安価なプランでも作業ボリュームが限定的な場合、十分な効果が得られないこともあります。価格と作業内容のバランスを比較することが重要です。

実績・専門資格(情報セキュリティサービス基準など)

診断を任せる以上、提供会社の実績や信頼性も重要な判断材料です。過去の導入事例や対応業種を確認することで、自社環境への理解度を判断しやすくなります。また、情報セキュリティサービス基準への適合や、関連する専門資格を有しているかも確認したいポイントです。第三者基準への対応は、一定水準の品質が担保されている目安になります。

報告書の質と改善提案の内容

診断結果は報告書として提出されることが一般的です。その際、単に問題点を列挙するだけでなく、リスクの優先度や改善の方向性が分かりやすく整理されているかが重要です。

技術者向けの専門的な内容だけでなく、意思決定に必要な要点がまとめられていると、社内説明もしやすくなります。改善提案の具体性はサービス品質を判断する重要な指標です。

診断後のサポートがあるか

診断は実施して終わりではなく、その後の対応が重要です。改善策の実装支援や再診断、追加相談が可能かどうかを確認しておくと安心です。診断結果をどう活用すればよいか分からず、対策が進まないケースも少なくありません。診断後も継続的に相談できるサポート体制が整っているサービスを選ぶことで、ネットワーク環境の改善につなげやすくなります。

ネットワーク診断の流れ

ネットワーク診断は、いきなり調査を行うのではなく、段階的なプロセスで進められます。事前のヒアリングから診断、分析、改善提案までを一連の流れで実施することで、現状把握から課題解決までをスムーズにつなげられます。

以下から、外部サービスに依頼した場合のネットワーク診断の流れを紹介します。

実際の流れを把握しておくことで、診断にかかる期間や社内で必要な準備もイメージしやすくなり、活用判断もしやすくなります。

ヒアリング

最初に行われるのがヒアリングです。現状のネットワーク構成や利用状況、発生しているトラブル、セキュリティに関する懸念点などを整理します。過去の障害履歴や業務への影響範囲を共有することで、診断の重点ポイントを明確にできます。

ここで情報が不足していると、診断結果が限定的になる場合もあります。正確な診断のためにも、できるだけ詳細な情報提供が重要です。

診断実施(リモート/オンサイト)

ヒアリング内容をもとに、実際の診断が実施されます。リモート診断では外部からのアクセス状況や設定を確認し、オンサイト診断では現地で機器や構成を直接調査します。環境や目的に応じて、いずれか、または両方が組み合わされるケースもあります。

診断中は一時的な通信確認や設定確認が行われるため、業務影響の有無について事前調整が行われることもあります。

分析・報告書提出

診断で取得した情報をもとに、通信状況や設定内容、セキュリティリスクが分析されます。その結果は報告書としてまとめられ、問題点やリスクレベル、影響範囲などが整理されます。専門的な内容であっても、図や表を用いて分かりやすく説明されることが一般的です。報告書は今後の改善判断や社内説明の資料としても活用できます。

改善提案・対策支援

報告書提出後は、分析結果をもとに改善提案が行われます。設定変更や機器更新、運用ルールの見直しなど、課題に応じた具体的な対策が提示されます。必要に応じて、実装支援や再診断、継続的なサポートが提供される場合もあります。診断を一度きりで終わらせず、改善までつなげることで、ネットワーク環境の安定性と安全性を高めることができます。

まとめ|ネットワーク診断でトラブルを未然に防ぎ、安全なIT環境を構築する

ネットワーク診断は、社内ネットワークの不調やセキュリティ不安を解消するために欠かせない取り組みです。

まずは自社でできる基本的な診断を行い、状況を把握することで、問題の切り分けが可能になります。一方で、原因が特定できない場合や、より高い安全性が求められる場合には、専門のネットワーク診断サービスの活用が有効です。自社診断と外部診断の特徴を理解し、自社にとって最適な方法を選ぶことが、安定したネットワーク運用への第一歩となります。