近年、DXの推進やクラウドサービスの普及などを背景に、企業を取り巻くIT環境は大きく変化しています。そうした変化に対応するため、既存システムの見直しを進める企業も増えています。
こうした中で注目を集めているのが、既存資産を活かしながらシステムを最適化できる「モダナイゼーション」です。本記事では、モダナイゼーションの基本的な考え方や必要とされる理由、既存システムを見直す際の進め方などを解説します。
目次
モダナイゼーションとは、既存システムを現在の業務や技術環境に合わせて見直し、継続的に活用できる状態へ改善する取り組みです。システムを単純に新しいものへ置き換えるのではなく、現状の課題や将来の事業展開を踏まえ、自社に適したIT基盤を整備することを目的としています。
モダナイゼーションは、既存資産を有効活用しながら将来を見据えたシステム環境を整えられるため、多くの企業で注目されています。
マイグレーションとは、システムやデータを現在の環境から別の環境へ移行する取り組みを指します。オンプレミス環境からクラウド環境への移行やサーバー・OSの更新など、既存システムの機能を大きく変えずに実行環境を移すことが目的となります。
一方、モダナイゼーションはシステム全体を現代の業務や技術に適した形へ見直す考え方です。必要に応じて機能やアーキテクチャを改善したり運用方法を見直したりしながら、将来の拡張性や保守性まで考慮して最適化を図ります。
マイグレーションはシステムを移行することを目的としているのに対し、モダナイゼーションはシステム全体を最適化することを目的としているといった点で大きな違いがあります。
多くの企業でモダナイゼーションが進められている背景には、既存システムを取り巻く環境の変化があります。
ここでは、モダナイゼーションが必要とされている背景を以下の5つに絞って解説します。
既存システムの老朽化
改修・機能追加の難しさ
保守運用の負担増加
データ活用の停滞
セキュリティリスクの増加
長期間運用されてきたシステムでは、ハードウェアやソフトウェアのサポート終了、開発基盤の陳腐化などが課題となります。こうしたレガシーシステムは、安定して稼働しているように見えても障害発生時の復旧や機器の更新が難しくなり、業務へ大きな影響を及ぼすおそれがあります。
また、最新のクラウドサービスやAIなどとの親和性も低く、将来的な業務改善やDX推進の妨げになりかねません。こうした課題を解消し、将来を見据えたシステムへ見直す方法としてモダナイゼーションが注目されています。
レガシーシステムに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:レガシーシステムとは?放置リスクや今すぐ始められる対策をわかりやすく解説
事業環境が変化すると、新しいサービスや制度への対応、業務フローの見直しなどに合わせてシステムの改修が必要になります。しかし、長年にわたり機能追加を繰り返したシステムでは構造が複雑化し、小規模な改修でも広範囲へ影響が及ぶケースは少なくありません。
このような状況に対応するため、改修や機能追加を行いやすいシステムへ見直すモダナイゼーションが求められています。
レガシーシステムを使い続けるほど、保守運用にかかる負担は大きくなる傾向があります。障害対応や定期メンテナンスに多くの工数を割かなければならず、本来取り組むべき業務改善へ十分なリソースを割けなくなることもあります。
また、古い言語や製品に精通した技術者は年々減少しており、担当者の退職によってノウハウが失われるケースも課題です。保守性の向上や安定したシステム運用を実現するため、モダナイゼーションを検討する企業が増えています。
企業活動では、顧客情報や販売実績などのデータを分析し、意思決定へ活用することが重要になっています。しかし、長年使用してきたシステムではデータが複数のシステムへ分散していたり、外部サービスと連携できなかったりするため、必要な情報を十分に活用できない場合があります。
データを十分に活用できなければ、データ分析やAI活用、業務の自動化などが進めにくくなるため、データを円滑に連携・活用できるシステム基盤への見直しが求められています。
サイバー攻撃が高度化する中、レガシーシステムを使い続けることはセキュリティ面でも大きなリスクになります。サポートが終了したOSやミドルウェアを利用している場合、新たな脆弱性が見つかっても修正プログラムが提供されないことがあります。
さらに、最新の認証方式やセキュリティ対策を導入しにくいシステムでは、不正アクセスや情報漏えいにつながる危険性も高まります。安全なシステム環境を維持するため、現在のセキュリティ要件に対応できるシステムへの見直しを進める企業が増えています。
モダナイゼーションによって期待できる効果は、主に以下の5つです。
変化に強い基盤をつくれる
新しい施策を展開しやすくなる
社内外の連携を強化できる
データに基づく判断ができる
DX推進の基盤を整えられる
ここでは、それぞれの効果について解説します。
モダナイゼーションを実施すると、市場や事業環境の変化へ柔軟に対応できるシステム基盤を構築できます。老朽化したシステムでは、小さな変更でも大規模な改修が必要になるケースがありますが、拡張性を考慮した構成へ見直すことで機能追加やシステム改修を進めやすくなります。
制度改正や事業拡大、新たな業務要件にも迅速に対応できるようになり、将来的なシステム運用の負担軽減にもつながります。
モダナイゼーションにより、システムの制約が少なくなることで新サービスの立ち上げや業務改善施策にも取り組みやすくなります。システム改修に時間を要していた企業でも、新しい機能を追加しやすい環境を整えることで事業の変化へスピーディーに対応できます。
さらに、新たな顧客向けサービスの提供や業務プロセスの改善、クラウドサービスの活用など、企業の競争力向上につながる施策も展開しやすくなるでしょう。
モダナイゼーションによってシステム間の連携性が向上すると、社内外の情報共有も円滑になります。部門ごとに管理されていた情報を連携しやすくなる他、外部サービスやクラウドシステムとの接続もしやすくなり、業務全体の効率化を図れます。
さらに、取引先や外部サービスとのデータ連携も進めやすくなり、組織全体で一貫した業務運用を実現できます。
モダナイゼーションは、企業に蓄積されたデータを活用しやすい環境づくりにも役立ちます。システムごとに分散していた情報を連携・整理することで、必要なデータを集約しやすくなり、分析やレポート作成の精度も向上します。
その結果、経験や勘だけに頼るのではなく、売上や顧客動向などのデータに基づいて意思決定を行えるようになるでしょう。
DXを進めるためには新しいデジタル技術を導入するだけでなく、それを支えられるシステム基盤が欠かせません。既存システムの制約が残ったままでは、AIやクラウドなどの新しい技術を導入しても十分な効果を発揮できない場合があります。
モダナイゼーションによって柔軟性や拡張性の高いシステムへ見直すことで、デジタル技術を取り入れやすい環境が整い、業務効率化や新たな価値創出など、企業全体のDXを継続的に推進しやすくなります。
モダナイゼーションには複数の進め方があり、システムの状態や目的によって適した手法は異なります。そのため、現状の課題や予算、移行期間などを踏まえ、自社に合った種類を選ぶのが重要です。
ここでは、モダナイゼーションを進める際の代表的な手法を5つ解説します。
リホストは、アプリケーションや業務ロジックを大きく変更せず、サーバーやOSなどの実行環境を新しい基盤へ移行する手法です。オンプレミスからクラウドへ移行するケースなどで多く採用されています。
既存システムを活かせるため、比較的短期間かつ低コストで進めやすいのが特徴です。一方で、システムの構造そのものは変わらないため、保守性や拡張性など、既存システムが抱える課題はそのまま残る場合があります。
リプレイスは、既存システムの役割を新しいシステムやパッケージ製品、クラウドサービスなどへ置き換える方法です。現在のシステムでは業務要件を満たせなくなった場合や、運用コストが増大している場合に検討されます。
システム全体を最新の環境へ更新できるため、業務効率やセキュリティ、拡張性の向上が期待できます。その反面、導入範囲が広くなりやすいため、費用や移行期間、業務への影響などを考慮しながら進める必要があります。
リライトは、既存システムの機能や業務内容を引き継ぎながらプログラムを新しい開発言語や技術で書き直す手法です。古い開発言語のサポート終了や保守性の低下に対応したい場合に選ばれることがあります。
新しい技術へ移行することで保守性や拡張性を高めやすくなり、将来的な機能追加にも対応しやすくなります。ただし、既存システムの仕様を十分に把握したうえで開発を進める必要があるため、一定の期間と技術力が求められます。
リファクタリングは、システムの動作や機能を変えずにソースコードや内部構造を整理・改善する手法です。長年の機能追加によって複雑化したコードを見直し、保守や開発をしやすい状態へ整えることが可能です。
既存システムを活かしながら保守性や開発効率を高めたい場合に適している一方で、コードの変更によって新たな不具合が発生する可能性があるため、十分な検証を行いながら進めることが重要です。
リビルドは、既存システムを抜本的に見直し、新しい技術やアーキテクチャを前提として再構築する手法です。現在のシステムだと将来の事業展開や業務要件へ対応できないといった場合に選択されます。
設計段階から見直せるため、拡張性やパフォーマンス、セキュリティなどを大幅に向上させることが可能です。その反面、開発規模が大きくなりやすいため、十分な計画と投資が求められます。
モダナイゼーションは、システムを新しい技術へ置き換えれば成功するわけではありません。現状の課題や業務への影響を踏まえながら進めることで、期待する効果を得やすくなります。
ここでは、モダナイゼーションを進める際に押さえておきたいポイントとして以下の4つを解説します。
刷新する範囲を見極める
業務への影響を想定する
段階的に進められる計画を立てる
必要に応じて専門会社へ相談する
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
モダナイゼーションを進める際は、現在の課題や今後の事業計画を整理したうえで、どの部分を見直すべきかを判断することが重要です。必要以上に大規模な改修を行うと、コストや工数が増えるだけでなく、業務への影響も大きくなる可能性があります。
一方で、課題の大きい領域から優先的に見直すことで、限られた予算や期間でも高い効果を期待できます。目的や優先順位を明確にし、自社にとって最適な範囲を見極めながら進めましょう。
システムの見直しは日々の業務にも影響を与えるため、移行期間中の運用方法や利用部門への影響を事前に整理し、業務が滞らないよう準備を進めることが大切です。
システム停止が必要なタイミングやデータ移行の手順、利用者への周知方法などをあらかじめ検討しておけば、現場の混乱や業務への影響を抑えながら移行を進めやすくなります。円滑にモダナイゼーションを進めるためには、システムだけでなく現場の運用まで考慮した準備が欠かせません。
モダナイゼーションは、優先度の高い領域から段階的に進める方法が適しています。影響範囲を抑えながら進められるため、問題が発生した場合でも柔軟に対応しやすくなります。
また、各段階で効果や課題を確認しながら次の工程へ進めることで、計画とのズレを早期に把握できます。大規模なシステムほど長期間の取り組みになりやすいため、無理のないスケジュールを立てることが重要です。
モダナイゼーションでは、現状分析から手法の選定、移行計画の策定まで専門的な知識が求められます。自社だけで判断することが難しい場合は、モダナイゼーションの実績がある専門会社へ相談することも有効な手段です。
専門家による第三者の視点を取り入れることで、自社では気づきにくい課題や最適な進め方を整理しやすくなります。さらに、システムの改修や再構築まで一貫した支援を受けられれば、計画から運用開始までスムーズに進めやすくなるでしょう。
引用元:システム開発のIC
モダナイゼーションを成功させるためには、自社のシステムに適した手法を選択し、業務への影響を考慮しながら計画的に進めることが重要です。しかし、「どこから見直せば良いかわからない」「全面刷新と部分的な改修のどちらが適しているのか判断できない」といった課題を抱える企業も少なくありません。
ICでは、45年以上にわたって培ってきたシステム開発・運用のノウハウを活かして現状分析を行い、お客様に適した改善策を提案しています。トップエンジニアとトップディレクターによる特別チームが課題整理から運用まで一貫して支援するため、企業ごとの状況に合わせたIT環境の最適化が可能です。
既存システムの改修や再構築、将来を見据えたシステムの見直しなどを検討している場合は、ぜひICへご相談ください。
モダナイゼーションを進めることで、保守性や拡張性の向上だけでなく、データ活用やDX推進を支えるシステム基盤を構築できます。さらに、新たなサービス展開や業務改善にも取り組みやすくなります。
モダナイゼーションの進め方にはリホストやリプレイス、リライトなど、複数の手法があり、システムの状態や目的によって適した進め方は異なります。期待する効果を得るためには、刷新する範囲や業務への影響を十分に検討し、計画的に進めることが大切です。
自社だけで最適な手法や進め方を判断することが難しい場合は、専門会社へ相談することも有効です。現状分析からシステムの改修・再構築まで一貫した支援を受けたい場合は、ICを選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。