近年、業務の効率化やシステム連携の重要性が高まる中で注目されているのが「API(エーピーアイ)」の活用です。APIをうまく取り入れることで、社内の既存システムとクラウドサービスを連携させたり、他社のプラットフォームとスムーズにデータをやり取りしたりと、柔軟で拡張性の高いIT環境を構築することが可能になります。
とはいえ、「APIという言葉は聞いたことがあるが、仕組みや使い方がよくわからない」「API連携を導入するには何から始めればいいのか迷っている」といった声も多く聞かれます。
本記事では、APIの基本的な仕組みや種類、連携によるメリット、活用事例、導入時の注意点などをわかりやすく解説します。さらに、API設計から実装、運用までをトータルで支援するICのITソリューションについてもご紹介しますので、API連携を検討中の企業担当者の方はぜひ参考にしてください。
目次
API(Application Programming Interface)とは、アプリケーション同士をつなぐ「橋渡し」のような存在で、異なるソフトウェアやサービス間でデータや機能をやり取りするためのインターフェースです。たとえば、あるサービスが提供している機能を、別のシステムから呼び出して利用することができるようになります。
たとえば、地図表示サービスでGoogle Mapsを使う、SNSと自社アプリを連携させる、ECサイトに外部の決済機能を組み込むなど、これらはすべて、APIを通じて実現されています。こうしたAPIの仕組みを活用することで、ゼロからシステムを作る必要がなくなり、開発の効率化やユーザー体験の向上にもつながります。
APIはさまざまな種類がありますが、特にビジネスシーンで多く使われているのが「API連携」や「Web API」です。ここからは、API連携の概要や種類、そしてAPIの仕組みについて詳しく解説していきます。
API連携とは、異なるシステムやサービス同士をAPIを通じてつなぎ、情報や機能をやり取りすることを指します。たとえば、自社の基幹システムと外部のクラウドサービス(SaaS)を連携させてデータを自動で同期したり、複数の業務ツールの間でアカウント情報や顧客データを共有したりすることが可能になります。
API連携を導入することで、手作業で行っていたデータ入力や転記作業を自動化できるため、業務効率の向上、ヒューマンエラーの削減、リアルタイムな情報活用など多くのメリットが得られます。近年では、クラウドサービス同士の連携が当たり前になっており、APIはシステム構築の前提として欠かせない存在となっています。
Web APIは、インターネット経由で利用できるAPIのことで、HTTP(Web通信)を通じて、アプリケーション間でデータの送受信や処理の要求ができる仕組みです。多くのWebサービスやクラウドアプリがこのWeb APIを公開しており、外部の開発者や企業が自社サービスと連携できるように設計されています。
代表的なWeb APIの例としては、Google Mapsの地図表示API、Twitterの投稿・取得API、StripeやPayPalの決済APIなどが挙げられます。これらのAPIを使うことで、地図機能や決済機能などを自社のシステムに簡単に組み込むことが可能になります。Web APIは、クラウド時代のシステム連携を支える中核的な技術といえます。
APIは、クライアント(呼び出す側)とサーバー(提供する側)のやり取りをルール化したものです。たとえば、あるサービスに「このデータをください」「この情報を更新したい」といったリクエストを送信すると、サーバー側がそのリクエストを受け取り、処理を行い、結果(レスポンス)を返してくれます。この一連の通信は、決められた形式(プロトコル)に基づいて行われます。
Web APIの場合は、主にHTTPリクエストを使い、GET・POST・PUT・DELETEなどのメソッドでデータの取得・送信・更新・削除を行います。APIには仕様書(ドキュメント)が用意されており、これをもとに開発者は必要な機能を呼び出すためのプログラムを実装します。APIはあくまで「インターフェース」であり、内部の処理はブラックボックス化されているため、セキュリティや保守性の観点でも優れた構造となっています。
API連携は、異なるシステムやサービス同士をつなぐことで、業務効率やユーザー体験の向上、セキュリティ強化など、企業活動に多くのメリットをもたらします。ここでは、API連携を導入することで得られる主な利点を紹介します。
APIを活用すれば、ゼロから機能を構築する必要がなくなります。たとえば、地図表示や決済機能、チャット機能など、外部サービスが提供するAPIを組み込むことで、自社で同様の機能を一から開発するよりも圧倒的に短時間・低コストでシステム構築が可能になります。また、保守やバージョン管理も提供元が担っているケースが多く、開発チームの負担軽減にもつながります。
多くの企業や行政機関が、APIを通じて自社サービスやデータを外部に公開しています。たとえば、天気情報、為替データ、地図情報、交通機関の運行情報などが代表的です。これらのAPIを連携させることで、最新かつ信頼性の高い外部データを自社サービスにリアルタイムで取り入れることができ、サービス品質の向上や付加価値の創出が期待できます。
API連携により、複数のサービスをシームレスにつなげることで、ユーザーの操作性が向上します。たとえば、SaaSツール間でログイン情報や顧客データを連携させることで、二重入力や再ログインの手間が省け、快適なユーザー体験を提供できます。社内向けシステムでも、データの一元管理や自動処理が実現し、業務スピードの向上に貢献します。
API連携は、セキュリティの観点でも有効です。多くのAPIには、OAuthやAPIキーなどの認証・認可の仕組みが導入されており、安全に外部サービスと通信できます。また、APIを通じてアクセス範囲や利用制限を細かく設定できるため、情報の漏えいや不正アクセスのリスクを抑えながら、必要な連携のみを実現することが可能です。
API連携は非常に便利な一方で、導入・運用には注意すべきポイントもあります。事前にリスクや制約を理解し、安定したサービス提供ができるよう準備しておくことが重要です。
多くのAPIは無料で利用できるプランを提供していますが、リクエスト数やデータ取得量に制限が設けられているケースが一般的です。一定以上のアクセスや商用利用には、有料プランへの移行が必要になることもあります。APIの選定時には、月額費用や従量課金の単価、利用可能な上限などを事前に確認し、自社の利用規模とコストのバランスを見極めましょう。
APIは提供元のシステムに依存しているため、API側の障害や仕様変更、提供終了のリスクを考慮しておく必要があります。万が一に備えて、代替手段の用意や障害時の挙動(例:キャッシュ表示、機能制限の通知など)をシステムに組み込んでおくと、トラブル時の影響を最小限に抑えられます。
APIの利用には、適切なセキュリティ対策が欠かせません。APIキーやOAuthトークンなどの認証情報は、ソースコード内にハードコーディングせず、環境変数や秘密管理ツールで安全に管理する必要があります。また、不要なAPI権限は与えず、最小限のアクセス権で設計することで、不正アクセスや情報漏えいのリスクを抑えられます。
APIはさまざまな場面で活用されており、業務効率化や利便性向上に大きく貢献しています。ここでは、企業における代表的なAPI連携の実例を紹介します。
たとえば、社内の勤怠管理システムとGoogleカレンダーをAPIで連携させれば、従業員の出勤・退勤情報や予定をリアルタイムで同期できます。ほかにも、社内の顧客管理(CRM)システムとチャットツールを連携させ、顧客対応履歴を自動投稿するといった使い方もあります。既存の社内システムに新たな価値を加えられるのが、API連携の大きな魅力です。
ECサイトやアプリでは、LINEログインやGoogleアカウントでの認証を取り入れることで、会員登録の手間を省いたり、ユーザー体験を向上させたりすることができます。また、決済APIを活用すれば、PayPayやクレジットカード決済を自社サービスに簡単に導入することができ、収益化のスピードも加速します。
APIを使えば、各SaaSや業務システムのデータを自動で収集・集約し、データウェアハウス(DWH)に統合することが可能です。たとえば、会計ソフト・MAツール・EC基幹システムなどのデータをAPIで定期的に同期し、BIツールで一元的に可視化することで、経営判断に役立つデータ活用が実現できます。
APIを効果的に活用するには、単に連携すればよいというわけではありません。トラブルや運用コストの増大を防ぎ、スムーズな活用につなげるために、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
まず最初に行うべきなのが、APIを活用する「目的」と「実現したいこと」を明確にすることです。業務効率化なのか、ユーザー体験の向上なのか、それともデータ分析の強化なのか。目的が曖昧なまま進めると、不要な機能を実装してしまったり、連携が形骸化したりするリスクがあります。現状の課題や、APIで解決したい具体的なプロセスを洗い出したうえで要件を定義しましょう。
APIは提供元によって仕様や制限が異なります。信頼性、サポート体制、料金体系、ドキュメントの充実度などを総合的に見て、目的に適したサービスやソリューションを選ぶことが重要です。また、自社の技術スタックや開発リソースとの相性も考慮する必要があります。必要に応じて、パートナー企業などに相談しながら選定を進めるのも有効です。
API連携は導入して終わりではなく、安定稼働と継続的な保守・改善が求められます。APIの仕様変更や障害発生に備えて、エラーログの取得やアラート通知、スロットリング(アクセス制限)への対応策など、監視・運用体制を整えることが重要です。特に業務に直結する連携であれば、業務影響を最小限に抑えるためのBCP(事業継続計画)も検討しておきましょう。
出典:システム開発のIC
API連携を検討するうえで、「どのサービスを選ぶか」「どのように実装するか」「安定して運用できるか」といった悩みはつきものです。特に、自社内に十分な技術リソースがない場合や、複数のシステム・クラウドサービスをまたぐ複雑な連携を検討している場合は、外部の専門パートナーによる支援が有効です。
ICでは、APIの設計・導入・実装から、セキュリティを意識した運用・保守・トラブル対応まで一貫してサポートを行っています。業務システムやSaaS、クラウド基盤との連携実績も豊富で、企業のニーズや規模に応じた最適な連携プランをご提案可能です。
API連携をスムーズかつ安全に進めたい企業様は、ぜひICのITソリューションをご活用ください。
APIは、異なるシステム同士をつなぎ、業務の自動化や利便性の向上を実現する重要な技術です。開発工数の削減やデータ活用、ユーザー体験の向上といった多くのメリットがある一方で、適切な設計・選定・運用体制が欠かせません。
自社に合ったAPI連携を実現するには、基礎知識と実践ノウハウを持つパートナーの力を借りるのが近道です。ICのITソリューションを活用し、業務効率化やDX推進につながるAPI活用を成功させましょう。