リモートワークが進んだ現代において、企業のセキュリティ対策は必要不可欠です。個人情報の流出や不正アクセスなどのリスクを避けるためには、VPNの活用が有効な手段の一つと言えるでしょう。
VPNとは、仮想的な専用回線を構築することで安全な通信を可能にする技術です。 公共のWi-Fiを利用する際に通信内容を暗号化したり、リモートワークで社内ネットワークに安全にアクセスしたりする際に活用されています。
本記事では、VPNとは何か、その仕組みやメリット・デメリット、そしてさまざまな利用シーンについて、わかりやすく解説します。VPNを導入する際のポイントについても触れていきますので、ぜひ最後までお読みいただき、安全なインターネット環境構築にお役立てください。
目次
VPNとは、Virtual Private Networkの略称で、日本語では仮想専用通信網と呼ばれています。仮想的な専用回線を構築することで、安全にデータ通信を行うための技術です。インターネット回線などを利用して、本社と支店のように離れた場所にあるLAN同士を接続する回線接続サービスです。 VPNを使うと、あたかも物理的な専用回線で接続しているかのように、インターネットを通して安全な通信を行うことができます。
物理的な専用回線を敷設するよりもコストを抑えられ、利便性も高いため、多くの企業で導入が進んでいます。 VPNの大きな特徴は、データの暗号化です。インターネット上に仮想的なトンネルを構築し、その中で暗号化されたデータを送受信します。これにより、第三者によるデータの盗聴や改ざんを防ぎ、安全な通信を実現します。
現代のビジネスでは、インターネットを通じた情報共有やリモートワークの普及が進む一方で、企業情報や顧客データの漏洩リスクが増加しています。特に、従業員が公共のWi-FiやカフェのフリーWi-Fiを利用する際には、悪意のある第三者による通信内容の盗聴や不正アクセスの危険性が高まります。
また、業務上のデータが外部に流出することで、信頼の喪失や重大な損害につながる可能性もあります。こうしたリスクを未然に防ぎ、企業の情報資産を守るために、VPNの導入は欠かせないセキュリティ対策といえます。
実際に、新型コロナウイルスでリモートワークが広まった2020年の総務省の調べによると、リモートワークでVPNを活用している企業は38.1%と、リモートで社内システムにアクセスする際に一番多い接続方法となっています。
参考:テレワークセキュリティに係る実態調査 (1次実態調査) 報告書
VPNはパソコンだけでなく、スマートフォンでも活用可能です。近年、多くの企業がリモートワークやモバイルデバイスを活用した業務を推進しており、ビジネスシーンにおけるスマートフォンの重要性が高まっています。
しかし、スマートフォンで送受信されるデータには、顧客情報や業務データ、クレジットカード情報など、機密性の高い情報が多く含まれるため、サイバー犯罪の標的になりやすいのが現状です。 スマートフォンでVPNを利用することで、これらの重要なデータを暗号化し、第三者による不正アクセスや盗聴を防ぐことができます。
導入は簡単で、VPNアプリをインストールし、設定を行うだけで利用が可能です。また、多くのVPNサービスがWindows、macOS、iOS、Androidといった複数のOSに対応しているため、企業内のさまざまなデバイスで統一的なセキュリティ対策を講じることができます。
トンネリングとは、インターネットなどの公衆回線を経由して、あたかも専用線で接続しているかのように仮想的なトンネルを構築する技術です。この仮想トンネルによって、送信者と受信者の間で安全なデータ通信を実現します。
トンネリングの仕組みを簡単に説明すると、まず送信側でデータが暗号化されます。そして、この暗号化されたデータは、仮想トンネルを通じて受信側へと送られます。受信側では、データが復号化され、元の情報に戻されます。
専用の仮想トンネルを通じてやり取りが行われるため、悪意のある第三者がデータを盗み見ることができなくなるのです。
VPNにおけるカプセル化とは、送信するデータを別のデータで包み込むことで、データの秘匿性を高める技術です。データは通信のために小さなパケットに分割され、VPNを通る際に、このパケットがさらに別のヘッダー情報を持つパケットで包み込まれます。
例えるなら、手紙を封筒に入れて送るようなものです。この封筒にあたる部分がカプセル化された部分で、データの中身が外から見えないように保護する役割を果たします。 VPNでは、このカプセル化されたデータが仮想トンネル内に転送されます。
仮想トンネルとは、インターネット上に作られた安全な通信経路のことです。カプセル化によってデータが保護されているため、たとえ第三者が仮想トンネルに侵入できたとしても、データの中身を見ることはできません。これは、封筒を開けなければ手紙の内容が読めないのと同じです。
認証とは、VPN通信を行う仮想的なトンネルへの不正アクセスを防ぐためのシステムです。
せっかくトンネリングによって安全な仮想専用線を構築したとしても、悪意のある第三者がトンネル内部に侵入できてしまっては意味がありません。
VPN接続を試みるユーザーが正当なユーザーであるかどうかを確認するために、認証は重要な役割を担っています。
VPNにおける暗号化は、データの盗聴を防ぐための重要な仕組みです。暗号化とは、送信するデータを第三者に解読できない形式に変換する処理のことです。
VPNでは、暗号化によってデータが保護されるため、万が一データが傍受されたとしても、その内容を読み取られる心配はありません。これにより、通信の機密性が保たれ、安全なデータ送受信が可能になります。
これらの技術が連携することで、VPNは安全な通信路を構築し、機密情報を守ることができるのです。
VPNにはさまざまな種類があり、用途や規模に応じて適切なものを選ぶ必要があります。
ここでは代表的なVPNの種類をいくつかご紹介します。
インターネットVPNは、インターネット上に構築された仮想的なプライベートネットワークです。インターネット回線を利用して、あたかも専用回線で接続しているかのように安全な通信を実現します。
複数の拠点間を接続するケースや、外出先から社内ネットワークにアクセスするケースなど、幅広い用途で利用されています。
インターネットVPNは、比較的安価に導入できるため、コストを抑えたい企業におすすめです。また、インターネットに接続できる環境であればどこからでも利用できるため、利便性も高いVPNとなっています。
エントリーVPNとは、比較的少額の初期投資と月額料金で利用できるVPNサービスです。企業が社内ネットワークを構築する際に手軽に導入でき、インターネット回線を使って仮想的なプライベートネットワークを構築します。
そのため、専用線を必要とするサービスと比べて費用を抑えられるのが特徴です。 小規模な拠点間の接続やリモートワークで社内システムにアクセスする用途に向いており、セキュリティ対策も施されているため、安全な通信が可能です。
ただし、通信速度や安定性については、次項で紹介するIP-VPNや広域イーサネットに劣る場合があります。
IP-VPNは、インターネット上に仮想的な専用線を構築するVPNです。インターネット上の閉域網で構築されたVPNであり、通信事業者が提供する広域ネットワークサービスの一つです。インターネットを介して接続されますが、仮想的なプライベートネットワークを構築することで、セキュリティを確保しつつ低コストで利用できます。
インターネットVPNと比較して、セキュリティと信頼性が高いことが特徴です。通信品質が安定しており、遅延が少ないため、音声や動画などのリアルタイム通信にも適しているでしょう。
広域イーサネットとは、イーサネット技術を応用して構築された広域ネットワークです。従来のWAN回線と比較して、高速かつ低コストで利用できるというメリットがあります。 広域イーサネットは、仮想的に閉域網を構築するため、物理的な回線敷設工事を行う必要がなく、迅速な導入が可能です。
また、帯域幅も柔軟に変更できるため、ビジネスニーズの変化にも柔軟に対応できるでしょう。 近年、クラウドサービスの普及やデータ量の増加に伴い、広域イーサネットの需要はますます高まっており、VPN構築の手段としても有効な選択肢の一つです。
VPNを使うことで得られるメリットは主に2つあります。
VPNを使う最大のメリットは、安全に通信できることです。インターネット上でやり取りされるデータは、暗号化されていない場合、第三者に盗み見されるリスクがあります。特に、フリーWi-Fiなど、セキュリティ対策が万全でないネットワークに接続する際は、情報漏洩の危険性が高いです。
VPNを利用すると、通信内容が暗号化されるため、仮にデータが傍受されたとしても、解読される心配がありません。これにより、パスワードやクレジットカード情報などの重要な個人情報を安全に守ることができます。 また、VPNは通信経路を隠蔽する機能も備えています。そのため、アクセス元のIPアドレスが特定されにくくなり、匿名性を高めることができます。これにより、外部からの攻撃や追跡から身を守り、より安全なインターネット環境を実現できます。
VPNは低コストで導入できるのもメリットの一つです。従来の専用線を使ったネットワーク構築と比較すると、VPNはインターネット回線を利用するため、回線費用を大幅に削減できます。
インターネットVPNであれば、VPN装置やVPNサーバーを自前で用意する必要がなく、手軽に導入できるでしょう。 サービスによっては無料プランを提供しているVPNプロバイダも存在します。
有料プランでも月額数百円から利用できるVPNプロバイダが多いため、比較的低価格で高品質なVPNサービスを利用可能です。企業がビジネス用途で利用する場合でも、専用線を敷設するよりもコストを抑えられるでしょう。
VPNは安全な通信手段ですが、セキュリティリスクが完全にゼロになるわけではありません。VPN接続を利用していても、セキュリティリスクが存在する点は理解しておきましょう。
VPNサービスを提供している事業者が不正アクセスを受けるリスクや、利用者側の端末がマルウェアに感染するリスクなどは依然として残ります。
信頼できる事業者を選ぶことはもちろんのこと、端末のセキュリティ対策も怠らないようにしましょう。
VPN接続は、暗号化や復号化の処理、VPNサーバーを経由する通信経路などが原因で、通常のインターネット接続と比べて速度が遅くなる場合があります。特に、無料のVPNサービスではサーバーの負荷が高く、速度低下が顕著になるケースも少なくありません。
また、VPNサーバーの負荷状況によっても通信速度は影響を受けます。多くのユーザーが同時にVPNサーバーに接続している場合、サーバーの処理能力が限界に達し、通信速度が低下する可能性もあるでしょう。
利用者の現在地とVPNサーバーの物理的な距離が遠い場合も、通信速度が遅くなる傾向があります。
VPNを選ぶ際には、通信速度についても事前に確認することが重要です。これらのデメリットを踏まえた上で、VPNの導入を検討しましょう。
VPNは、さまざまなシーンで安全な通信を確保するために利用されています。特に、以下のようなシーンではVPNの利用が重要になるでしょう。
以上のシーンについて詳しく紹介します。
公共のWi-Fiホットスポットに接続するときは、VPNを使用することで通信内容を暗号化し、第三者による盗聴や改ざんのリスクを軽減できます。
フリーWi-Fiは便利ですが、セキュリティが脆弱な場合があり、個人情報やパスワードなどの重要な情報が漏洩する危険性があります。
VPN接続を利用することで、安全にインターネットを利用できるでしょう。
リモートワークの普及に伴い、自宅やカフェなどの社外から社内システムにアクセスする機会が増えています。このような場合、VPNは非常に重要な役割を果たします。
VPNを利用することで、あたかも社内ネットワークに接続しているかのように安全に社内システムへのアクセスが可能になるでしょう。
また、VPNはアクセス制限にも役立ちます。許可されたユーザーだけが社内システムにアクセスできるように設定することで、不正アクセスを防ぎ、セキュリティを強化できます。
これにより、情報漏洩のリスクを最小限に抑えながら、柔軟な働き方の実現が可能になります。
このように、VPNはさまざまな状況で安全な通信環境を提供し、私たちのデジタルライフを支えています。
VPNを選ぶ際には、以下のようなポイントを見極めることが重要です。
それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
VPNを選ぶ際には、コストと通信品質のバランスを考えることが重要です。コストパフォーマンスの高いVPNを選ぶためには、まず自社で必要な通信速度を見極める必要があります。例えば、動画ストリーミングや大容量ファイルの送受信といった通信速度が求められる作業が多い場合は、高速通信が可能なVPNを選択することが重要です。
一方で、Webサイトの閲覧やメールの送受信といった、それほど通信速度を必要としない作業が中心の場合は、低価格なVPNでも十分です。 自社の利用状況や予算に合わせて、最適なVPNを選びましょう。
VPNを選ぶ際、コストパフォーマンスはもちろんですが、快適に利用するためには通信速度も重要な要素です。自社に必要な通信速度を見極めるためには、まずVPNの利用目的を明確にする必要があります。 例えば、Webサイトの閲覧やメールの送受信が主な目的であれば、それほど高速な通信速度は必要ありません。
しかし、大容量ファイルの送受信やビデオ会議などを頻繁に行う場合は、高速な通信速度が求められます。
次に、従業員数や利用頻度を考慮しましょう。従業員数が多く、常にVPNを利用する場合は、より高速な通信速度が必要です。
一方、従業員数が少なく、VPNの利用頻度が低い場合は、それほど高速な通信速度は必要ありません。
これらの要素を踏まえ、VPNプロバイダが提供する通信速度と照らし合わせ、自社に最適なVPNを選びましょう。
多くのVPNプロバイダは無料トライアルを提供しているため、実際に利用してみて、通信速度や安定性を確認することをおすすめします。
引用元:システム開発のIC
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この記事では、VPNの仕組みやメリット・デメリット、利用シーンなどを解説しました。VPNは仮想的なプライベートネットワークを構築し、インターネット上での安全な通信を可能にする技術です。
公共Wi-Fiの利用時やリモートワークで社内システムにアクセスする際などに役立ちます。 しかし、VPNサービスによってはセキュリティリスクや通信速度の低下といったデメリットも存在します。
そのため、コスト、セキュリティレベル、通信速度などを考慮したサービス選びが重要です。 VPN導入を検討中なら、ぜひICにご相談ください。お客さまのニーズに最適なVPNソリューションをご提案いたします。