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シンクライアントとは?メリデメや実行方式・端末の種類を解説|システム開発のIC

作成者: Admin|Nov 13, 2022 3:00:00 PM

シンクライアントとは、サーバー側でさまざまな処理を行い、クライアント端末での処理を必要最小限に抑えるシステム構築方式のことです。シンクライアントにはセキュリティや運用コスト面でメリットがある一方、サーバーへの負荷や導入コストなど、デメリットもあります。本記事では、実行方式および端末の種類もあわせて詳しく解説しているため、ぜひご覧ください。


目次[非表示]

  1. 1.シンクライアントとは
    1. 1.1.シンクライアント登場の歴史
  2. 2.シンクライアントのメリット
    1. 2.1.メリット1.運用管理コストの低減
    2. 2.2.メリット2.情報の漏えい防止
    3. 2.3.メリット3.どこでもアクセスができる
  3. 3.シンクライアントのデメリット
    1. 3.1.デメリット1.サーバーに負荷がかかり動作が重くなる
    2. 3.2.デメリット2.導入する際にコストがかかる
    3. 3.3.デメリット3.ネットワーク環境がないと利用できない
  4. 4.シンクライアントの実行方式の種類
    1. 4.1.1.ネットブート型
    2. 4.2.2.画面転送型
  5. 5.シンクライアント端末の種類
    1. 5.1.1.デスクトップ型
    2. 5.2.2.モバイル型
    3. 5.3.3.USB型
    4. 5.4.4.ソフトウェアインストール型
  6. 6.まとめ


シンクライアントとは

シンクライアントとは、Thin(薄い)Client(クライアント端末)を意味する用語で、サーバー側でアプリケーションの実行処理やデータ保存などを行い、エンドユーザーであるクライアント端末では、最小限の処理のみを行わせるシステム構築方式のことです。仮想デスクトップ環境下での利用に特化しています。

クライアント端末側で行う処理を限定することで、運用管理コストを抑え、情報漏えいを防げるのです。


シンクライアント登場の歴史

シンクライアントは、新しい概念ではありません。この概念や技術自体は、1996年にオラクル社が発表したネットワーククライアントシステム「Network Computer」が始まりです。2000年代からセキュリティ対策の重要性が各企業で叫ばれるようになったのを機に、シンクライアントが注目を浴びるようになりました。以降、企業の内部統制がますます求められるようになり、中央サーバーであらゆる処理を行うシンクライアントのニーズが高まります。現在では、仮想デスクトップ環境を実現するシステムとして広く導入されているのです。



シンクライアントのメリット

シンクライアントは、中央サーバーでさまざまな処理を行い、クライアント端末での処理を必要最低限に抑えられる仕組みです。また、ネットワーク環境さえあればどこからでもアクセス可能で、シンクライアントには以下の3つのメリットがあります。


  • 運用管理コストの低減
  • 情報の漏えい防止
  • どこでもアクセスができる


ここでは、それぞれのメリットについて解説しましょう。


メリット1.運用管理コストの低減

シンクライアントならば、OSやアプリケーションなどの利用環境を中央サーバーで一括管理できます。クライアント端末それぞれの運用や管理が不要で、中央サーバーを制御する担当者のみであらゆる運用や管理の業務を完結させられるのです。そのため、運用管理コストを低減できます。

必要な端末が増えた場合であっても、面倒なインストール作業は不要で、クライアント端末を接続すればすぐに利用可能です。

さらに、クライアント端末側の機能が最小限に抑えられているため、端末にかかる負荷が少なく、故障リスクも低いといえます。

特に企業の規模が大きく、端末の運用や管理にコストがかかっている場合は、シンクライアントの活用が適しているでしょう。


メリット2.情報の漏えい防止

前述のとおり、シンクライアントは中央サーバーでさまざまな処理を担うため、あらゆるデータはサーバーに保管されています。クライアント端末にはイメージ画面しか表示されないため、情報の持ち出しリスクを防げます。仮にクライアント端末が紛失したり攻撃を受けたりしても、情報漏えいのリスクを軽減できるのです。

また、クライアント端末側ではOSのアップデートやアプリケーションのインストールができない点も、セキュリティリスクの回避につながります。

サーバーとクライアント端末間の通信がSSL通信により暗号化されている点も、セキュリティ対策のうえでは大きなメリットです。


メリット3.どこでもアクセスができる

シンクライアントは、ネットワーク環境さえあればどのような場所からでもアクセスできます。前述のとおり、サーバーとクライアント端末間の通信が暗号化されているため、公衆無線LANを利用する場合でも安心して通信可能です。このように自宅やオフィスなど、場所を選ばずにセキュリティの安全性が担保された状態でアクセスできます。

また、実行方式によっては、専用のシンクライアント端末だけではなく、スマートフォンやタブレットでも利用できる点もメリットです。



シンクライアントのデメリット

運用コストやセキュリティ面、アクセス性でメリットがあるシンクライアントには、以下のようなデメリットもあります。


  • サーバーに負荷がかかり動作が重くなる
  • 導入する際にコストがかかる
  • ネットワーク環境がないと利用できない


特に、サーバーにリソースを集約して共有し、サーバー側の画面を操作するという仕組み上サーバーに負荷がかかりやすく、また利用にはネットワーク環境が必要です。さらに、運用管理コストが低い一方、導入コストがかかる点には注意しましょう。ここでは、それぞれのデメリットについて詳しく解説します。


デメリット1.サーバーに負荷がかかり動作が重くなる

シンクライアントは、ユーザーのCPUやディスクといったリソースを、すべてサーバーに集約して共有するシステム構築方式です。そのため、サーバー側に大きな負荷がかかるというデメリットがあります。

サーバーに大きな負荷がかかることで、これまで快適に作動していたアプリケーションや簡単な操作でさえ処理速度が低下し、システム障害が発生する可能性もあるのです。

こうした障害を防ぐためには、サーバーの強力化や高速かつ広帯域のネットワークインフラの導入が求められます。そのため、当初見積もっていた以上のコストがかかる場合があるでしょう。


デメリット2.導入する際にコストがかかる

シンクライアントの利用は運用管理コストの低減につながりますが、導入にコストがかかるため、メリットをあまり感じられない場合もあります。

シンクライアントの導入にあたっては、VDI(Virtual Desktop Infrastructure )という仮想デスクトップ環境を利用することが主流です。VDIを利用する場合は、シンクライアント端末だけではなく、VDI基盤を作動させるためのサーバーやストレージ、制御ソフトウェアを必要とします。そのため、その分の導入コストがかかるのです。

導入コストと運用管理コストの双方を勘案して、シンクライアントを導入するか否かを判断しましょう。


デメリット3.ネットワーク環境がないと利用できない

シンクライアントは、サーバー側の画面を操作する仕組みです。そのため、オフライン環境では利用できません。ネットワーク環境がないと、画面の読み込みやマウス操作などに非常に時間がかかります。

また、画面データを転送する仕組みのため、データ転送量が多くなりがちです。モバイル通信ではデータ転送量の上限があるため、外で使用する際は安定したネットワーク環境を確保する必要があります。



シンクライアントの実行方式の種類

シンクライアントの実行方式には、以下の2つがあります。


  • ネットブート型
  • 画面転送型


ネットブート型は、サーバーから大量のデータが転送され、クライアント端末においてパソコンと同じ感覚で利用する方式です。一方の画面転送型では、サーバーで処理した結果が端末に表示されるため、クライアント端末側の操作はキーボードの操作指示のみという違いがあることを覚えておいてください。

ここでは、それぞれの実行方式について解説しましょう。


1.ネットブート型

ネットブート型は、サーバー上のOSイメージをネットワーク経由でダウンロードし、それをクライアント端末で起動して利用する方式です。パソコンのメモリやCPUを利用する実行形式であり、パソコンと同じ感覚で使用できます。

ネットブート型のデメリットは、転送データが大きいため端末にある程度のスペックが求められる点と、高速かつ広帯域のネットワークインフラが求められる点です。また、パソコンを起動するたびに大量のデータが転送されるため、パソコンの台数に応じてサーバーを設置する必要があります。


2.画面転送型

画面転送型は、サーバーで処理した結果をクライアント端末に表示する実行方式です。クライアント端末側では、キーボードの操作指示のみを行います。

画面転送型には、さらに以下の3つの方式があります。


  • サーバーベース型
  • デスクトップ仮想(VDI)型
  • ブレードPC型


サーバーベース型は、サーバー側で実行したアプリケーションを、全てのクライアント端末で同時に共有する実行方式です。単一のアプリケーションを共有するため、サーバーの性能が高くなくても対応できます。しかし、アプリケーションにエラーが起こったり、アクセスが集中したりした場合には、全てのユーザーに影響を及ぼす点がデメリットです。


デスクトップ仮想(VDI)型は、サーバー上に仮想デスクトップ環境を置き、ユーザーはクイアント端末からそのデスクトップ環境を使用する実行方式です。仮想マシンを準備するだけで利用でき、ユーザーはそれぞれ独立した環境を利用できるため、問題が発生しても被害の範囲を抑えられます。仮想環境の管理が必要な点や、ライセンス費用が発生する点がデメリットです。


ブレードPC型は、クライアント端末と専用のブレードPCを接続して利用する実行方式です。ブレードPCとは、CPUやメモリ、ハードディスクを搭載した超小型PCのことを指します。ブレードPCを占有できるため、スペックの高い処理に適した方式です。しかし、クライアント端末ごとにブレードPCを準備する必要があるため、コストや管理の手間がかかります。



シンクライアント端末の種類

シンクライアント端末は、小型かつ薄型で安価なものが多いです。シンクライアント端末には、以下の4つの種類があります。


  • デスクトップ型
  • モバイル型
  • USB型
  • ソフトウェアインストール型


操作性の高さや持ち運びのしやすさや、導入コストの低さなど、メリットはさまざまです。ここでは、それぞれのシンクライアント端末の種類について解説します。


1.デスクトップ型

デスクトップ型とは、専用OSやWindows 10 IoTが搭載されたデスクトップパソコン型の端末のことで、「Dell Wyse 3040」や「Dell Wyse 5070」などが代表的です。最小限の機能が搭載されており、さまざまな機器と接続できます。また、搭載されているCPUの質やパソコンの基本性能が高く、通常のパソコンと同じような環境を作りやすいのが特徴です。


2.モバイル型

モバイル型は、薄いノート型の端末のことを指します。Atrus社の 「Atrust mt182」、 Dell社の「Wyse 5470」などが代表的で、持ち運びのしやすさが特徴です。コンパクトで利便性が高く、外出先での使用に適しています。

なお、「Atrust mt182」をはじめとする一部のモバイル型端末では、 4G LTEネットワークが選択可能です。


3.USB型

USB型は、既存の端末にUSBを差し込むことでシンクライアント化できる端末のことです。既存の端末を利用できるため、導入にかかる手間やコストを抑えられます。容易に持ち出せるため、外出先などで気軽に使用できるのもメリットです。

一方で盗難や紛失のリスクが高いため、セキュリティの確保には注意しなければなりません。暗号化ツールで暗号化されているものや、耐改ざん性を重視したモデルを選びましょう。


4.ソフトウェアインストール型

ソフトウェアインストール型とは、既存端末にソフトウェアをインストールすることでシンクライアント化できる端末のことです。USB型と同様に既存の端末を利用できるため、手間やコストを抑えて導入できます。既存の端末を活用してシンクライアント化を進めたい場合は、非常におすすめです。また、中央サーバーから専用端末の更新や設定が可能なため、高いセキュリティレベルのもとに環境を構築できるというメリットもあります。



まとめ

本記事では、シンクライアントとは何かをはじめ、メリットやデメリット、実行方式や端末の種類について解説しました。シンクライアントは、中央サーバーでアプリケーションの実行処理やデータ保存などを行い、クライアント端末側では必要最低限の処理のみを行うシステム構築方式です。運用コストやセキュリティ面、アクセス性などにメリットがある一方、導入にコストがかかる点やサーバーに負荷がかかる点、ネットワーク環境がないと使えない点に注意しましょう。


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