近年、企業のIT環境は、オンプレミスからクラウドへの移行が急速に進んでいます。しかし、クラウドが必ずしもいいというわけではなく、企業のビジネス要件や IT 戦略によって変わってきます。自社に最適な選択をするためには、両者の違いを正しく理解することが大切です。本記事では、オンプレミスとクラウドの違いや移行を成功させるポイントを解説します。
目次
オンプレミスとクラウドは、企業のIT環境を構築する際に選択肢となる方法です。
両者の特徴や違いを理解し、それぞれのメリットとデメリットを比較検討することで、自社のニーズに最適なIT環境を構築できます。
オンプレミスとは、企業がITシステムを運用する際に必要となるソフトウェアやハードウェアを自社で保有し、管理・運用する方法です。
オンプレミス環境では、サーバーやネットワーク機器などの物理的なインフラを自社で調達し、データセンターや社内サーバールームに設置します。オンプレミスの大きなメリットは、データやアプリケーションのセキュリティとプライバシーを自社で完全にコントロールできることです。
機密性の高い情報を扱う企業にとって、データの保存場所や管理方法を自社で決定できることは大きなメリットといえるでしょう。また、システムのカスタマイズ性が高く、自社のニーズに合わせて柔軟にシステムを設計・構築できるため、業務に最適化されたソリューションを実現できます。
クラウドとは、インターネット上に存在するサーバーやストレージ、アプリケーションなどのITリソースを、ネットワーク経由で利用する方法です。
クラウドサービス提供事業者が管理するインフラストラクチャを利用することで、企業はハードウェアやソフトウェアの購入・設置・運用・保守といった作業から解放されます。また、クラウドサービスは、ビジネスの成長に合わせてリソースを柔軟に拡張したり、逆に縮小したりすることが可能です。これにより、急激なトラフィックの増加にも対応でき、ビジネスの機動性や俊敏性を高められます。
クラウドシフトについては、下記の記事で詳しく解説しています。
オンプレミスとクラウドの違いを下記5項目で比較します。
オンプレミスの場合、自社でサーバーやストレージ、ネットワーク機器などのインフラを調達し、システムを構築する必要があります。これには、ハードウェアの購入費用だけでなく、設置場所の確保、電源・空調設備の整備、セキュリティ対策などの初期投資が必要です。
そのため、オンプレミス環境の構築には、多額の初期コストがかかります。一方、クラウドサービスを利用する場合、サーバーやストレージ、ネットワーク機器などのインフラは、クラウドサービス事業者が用意します。そのため、リソースを必要な分だけ利用でき、初期投資を大幅に抑えることが可能です。
オンプレミスとクラウドのランニングコストの違いをまとめると、下記の通りです。
項目 |
オンプレミス |
クラウドサービス |
サーバー機器の保守費用 |
継続的に発生 |
不要 |
設置スペースの電力・冷却コスト |
継続的に発生 |
不要 |
ハードウェアの保守・運用 |
自社で実施 |
クラウドサービス事業者が実施 |
ソフトウェアライセンス |
初期に一括購入が多い |
利用したリソース分だけを従量課金 |
オンプレミスとクラウドでは、ランニングコストの構造に大きな違いがあります。自社のビジネス特性やシステム要件を踏まえ、最適な選択を行いましょう。
オンプレミスとクラウドの拡張性の違いは、下記の通りです。
項目 |
オンプレミス環境 |
クラウドサービス |
リソース拡張方法 |
物理的なサーバーやストレージの 調達が必要 |
仮想的なリソースをオンデマンドに追加可能 |
拡張作業 |
新しいハードウェアの購入 設置、設定など |
必要なリソースを必要な分だけ 追加 |
拡張にかかる時間 |
設置と設定に時間がかかる |
迅速に対応可能 |
将来の拡張性 |
初期段階で大きめのリソースを 用意する必要あり |
ビジネスの成長に合わせて柔軟にスケールアップ・ダウン可能 |
拡張性の面では、クラウドサービスがオンプレミス環境に比べて優れているといえるでしょう。
オンプレミス環境では、データ管理から物理的なセキュリティ対策まで、全て自社で実施する必要があります。
具体的には、下記のような対策が求められます。
これらの対策を自社で行うためには、専門的な知識を持つ人材の確保やセキュリティ対策ツールの導入など、多くのコストと労力が必要です。
一方、クラウドサービスを利用する場合、セキュリティの大部分をクラウドサービス事業者に委ねられます。クラウド事業者は、高度なセキュリティ技術と豊富な経験を持つ専門家を擁しており、最新のセキュリティ対策を講じています。
クラウドサービスを利用することで、企業は自社でセキュリティ対策を行う負担を大幅に軽減できるでしょう。ただし、企業側でアクセス制御やユーザー管理など、一定のセキュリティ対策は必要です。
オンプレミス環境では、サーバーやネットワーク機器などのインフラ管理を自社で行う必要があります。これには、ハードウェアの保守・監視、ソフトウェアのアップデート、セキュリティパッチの適用、障害対応など、多岐にわたる作業が含まれます。
これらの作業を適切に行うためには、専門的な知識やスキルを持つIT人材が必要なため、運用負荷が高くなりがちです。一方、クラウドサービスを利用する場合、インフラ管理の多くの部分をクラウドサービス事業者に委ねられます。
また、ソフトウェアのアップデートや障害時の対応も、クラウド事業者が自動的に行ってくれるため、自社での運用負荷を大幅に軽減できるでしょう。
オンプレミスとクラウドのどちらを選択するかは、企業のビジネス要件や IT 戦略によって異なります。しかし、近年ではクラウドサービスの進化により、オンプレミスからクラウドへの移行を進める企業が増えています。
ここでは、オンプレミスが向いている場合とクラウドが向いている場合のケースを解説します。
オンプレミスは、自社特有の業務プロセスや要件に合わせて、柔軟にシステムをカスタマイズできるため、汎用性の低い自社特有のシステムを運用する場合に適しています。
例えば、長年にわたって社内で独自開発を重ねてきた基幹システムなどは、クラウドサービスでは対応が難しいケースがあります。こうした既存システムと密接な連携が必要な場合、オンプレミス環境を選択することで、スムーズなシステム間連携を実現できるでしょう。
また、機密性の高い情報を扱う企業では、データの保存場所や管理方法を自社で完全にコントロールできるオンプレミス環境が選ばれる傾向にあります。自社のネットワーク内でシステムを運用することで、外部からの不正アクセスや情報漏洩のリスクを最小限に抑えられます。
クラウドサービスは、低コストで迅速に導入でき、ビジネスの変化に合わせて柔軟に拡張できるため、コストパフォーマンスと拡張性を重視する企業に適しています。
企業はハードウェアやソフトウェアへの投資を抑え、必要な分だけリソースを利用できるため、大幅なコスト削減が可能です。また、クラウドサービス事業者が環境構築を行うため、システム導入にかかる期間を短縮できます。
さらに、トラフィックの増加や新機能の追加など、ビジネス要件の変化に応じて簡単にシステムをスケールアップ・ダウンできるため、ビジネスの機動性や俊敏性を高められるでしょう。
オンプレミスからクラウドへの移行を成功させるには、下記5つのポイントを押さえておきましょう。
クラウドへと移行するためには、移行の目的と戦略の立案が大切です。
移行の目的は企業によって異なりますが、主に下記のようなものが挙げられます。
移行の目的が明確になったら、移行スケジュールや費用対効果の試算、リスクマネジメントなどの戦略を立案します。オンプレミスからクラウドへの移行は、単なるシステム移行ではなく、ビジネス変革の一環です。移行の目的を明確にし、綿密な戦略を立案することで、ビジネスの成長や競争力強化につなげられるでしょう。
クラウドへの移行においては、データの保護やアクセス管理に関するリスクを適切に評価し、対策を講じることが重要です。
具体的な対策としては、下記が挙げられます。
セキュリティ対策 |
内容 |
データの暗号化 |
|
強固なアクセス制御 |
|
コンプライアンス要件の明確化 |
|
クラウドに移行後も定期的なリスク評価と改善を行い、セキュリティレベルの維持・向上に努めることが重要です。
オンプレミスからクラウドへの移行は、全てのシステムを一度に移行するのではなく、段階的に進めることが重要です。段階的な移行により、業務への影響を最小限に抑えつつ、移行に伴うリスクを管理しやすくなります。
具体的な進め方としては、まず、少数のアプリケーションやワークロードを選定し、クラウドへ移行します。その際、業務への影響が少なく、移行による効果が大きいものから着手するのがいいでしょう。移行が完了した段階で、その結果を評価し、次の移行対象を決定していくことで、安全かつ効率的に移行を進められます。
オンプレミスかクラウドかの二者択一ではなく、両者のメリットを組み合わせたハイブリッドクラウドという選択肢もあります。ハイブリッドクラウドとは、オンプレミスとクラウドを組み合わせたシステム構成のことです。
オンプレミスとクラウドにはそれぞれメリットとデメリットがあるため、どちらか一方だけで運用すると、デメリットの影響が大きくなる可能性があります。例えば、オンプレミス環境では、セキュリティ面で優れていますが、拡張性や柔軟性に課題があります。
一方、クラウドサービスは、拡張性や柔軟性に優れていますが、データの管理や保存場所に不安を感じる企業もあるでしょう。ハイブリッドクラウドを活用することで、機密性の高いデータはオンプレミス環境で管理し、トラフィックの変動が大きいシステムはクラウドサービスを利用するなど、それぞれの特性を活かした運用が可能です。
ただし、ハイブリッドクラウドは、システム構成が複雑になる傾向があります。そのため、ハイブリッドクラウドを検討する際は、システムの構成や運用方法を慎重に検討しなければなりません。
クラウドへの移行には、システム開発会社への依頼がおすすめです。
システム開発会社には、豊富な知識と経験を持つエンジニアが多数在籍しています。そのため、自社のシステムに最適な移行プランを提案してくれるでしょう。
例えば、自社のシステムがどのクラウドサービスに移行するのが最適なのか、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドにするのがいいのかなど、自社の業務要件やセキュリティ要件に合わせた最適なソリューションを提案してくれます。
また、移行に伴うリスクの評価と対策、移行手順の策定などもサポートしてくれるため、自社の IT 人材だけでは難しい課題にも対応可能です。
引用元:システム開発のIC
株式会社ICは、ITソリューション事業で40年以上の実績を誇る企業です。
クラウドサービスに精通したエンジニアが多数在籍しているため、オンプレミスからクラウドへの移行をトータルでサポート可能です。
お客様のニーズに合わせた最適なクラウド環境構築と移行をサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
本記事では、オンプレミスとクラウドの違いや移行を成功させるポイントを解説しました。
オンプレミスは自社でシステムを構築・運用するため、セキュリティや柔軟なカスタマイズ性に優れていますが、初期コストやランニングコストがかかります。一方、クラウドは初期コストを抑えられ、拡張性に優れていますが、セキュリティ面で不安を感じる企業もあります。
オンプレミスからクラウドへの移行を検討する際は、移行の目的と戦略を立て、段階的に進めることが重要です。また、オンプレミスとクラウドのメリットを組み合わせたハイブリッドクラウドも選択肢の一つです。自社だけでクラウドへの移行が不安な場合は、システム開発会社への依頼がおすすめです。
オンプレミスからクラウドへの移行なら、システム開発のICにご相談ください。