近年、注目されているIT技術の一つに、IoTがあります。IoTとは、あらゆるモノがインターネットに接続され、相互に制御する技術のことです。
IoTは様々な業界で活用が進んでおり、日本経済の発展に寄与することが期待されています。
本記事では、IoTの基本的な内容や仕組み、できること、メリット、デメリットを解説します。
目次
IoTとは、Internet of Things(モノのインターネット)の略語で、あらゆる「モノ」がインターネットに接続し、情報をやり取りすることで相互に制御する技術のことです。
従来、インターネットに接続されていたのは、パソコンやサーバー、スマートフォンといった情報機器が中心でした。
しかし、IoTの登場により、自動車や家電、産業用機器など、私たちの生活や企業活動に関わるあらゆるモノがインターネットに接続されるようになりました。
これにより、これまで人の手で行われていた作業を機械が代替できるようになるため、私たちの生活やビジネスに大きな変革をもたらす技術として注目されています。
IoTの普及率は年々高まっており、経済産業省の情報通信白書によれば、2021年におけるIoTデバイスの数は世界で277億9000万台に達しました。
今後も、医療分野や産業用途、自動車などの分野でIoTの活用が進むことが予測されており、IoTデバイスの数はさらに増加すると見込まれています。
IoTは、主に下記4つの要素で構成されています。
要素 |
説明 |
センサー |
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デバイス |
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ネットワーク |
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アプリケーション |
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IoTシステムでは、これらの要素が連携して機能します。
まず、デバイスに組み込まれたセンサーがデータを取得し、ネットワークを通じてクラウドに送信します。
クラウドではデータの処理や分析が行われ、その結果がアプリケーションを通じてユーザーに提供されます。
このようにIoTシステムは、現実世界とデジタル世界をつなぎ、データに基づいたサービスや価値を提供することで、私たちの生活や社会を大きく変える技術となっています。
IoTによってできることは、主に下記の通りです。
IoTを活用すれば、離れた場所にあるモノを遠隔操作できます。この機能は、生活を便利にするための用途で活用されるケースが多いです。
例えば、外出先からスマートフォンなどのデバイスを通じて、自宅にあるエアコンや照明といった家電を操作することが挙げられます。
帰宅前に自宅の温度を快適に調整したり、照明をつけたりしておくことで、帰宅後すぐにリラックスできる環境を整えられるでしょう。
今後も、IoT技術の発展に伴い、遠隔操作の対象となるモノはさらに増えていくことが予想されます。
IoTを活用すれば、離れた場所にあるモノや人の状態をリアルタイムで把握できます。この機能は、ビジネスに必要な重要な情報を得るために活用されるケースが多いです。
例えば、機器の稼働状況や消耗品の残量、社員の作業状況などを正確に把握できるようになります。
これにより、機器のメンテナンス時期を適切に判断したり、在庫管理を効率化したりなどが可能になります。
また、IoT化された製品から利用頻度や利用時間などのユーザー情報を直接収集することで、顧客のニーズや行動パターンを分析し、マーケティングに活用することも可能です。
IoTを活用することで、モノ同士が互いにデータを送受信し、自律的に連携して動作できます。
この機能によって、複数の電子機器やシステムを自動化・効率化できるため、業務の生産性向上や省力化が期待でき、人為的ミスの削減にもつながるでしょう。
具体的な事例としては、スマートビルディングが挙げられます。人流センサーと連動して、建物内の空調や照明を自動制御したり、エレベーターの運行を最適化したりと、ビル管理の効率化・省エネ化が図れます。
今後もセンサー技術やネットワーク技術、AI技術などの発展に伴い、IoTにおけるモノ同士の通信はさらに高度化していくと考えられています。
企業がIoTを導入するメリットは、下記の通りです。
IoTを導入することで、リアルタイムでデータ収集し、自動的にシステムを最適化できるため、生産性の向上が期待できます。
例えば、製造業にIoTセンサーを導入することで、製造ラインの稼働状況や設備の故障予兆をリアルタイムで把握できます。
従来は人の目視で異常を発見していたため、異常発生から対応までのタイムラグが発生していました。
しかし、IoTを活用することで即座に異常を検知し、自動で対応できるため、ラインの停止時間を最小限に抑え、生産性を向上できるでしょう。
従来は製品を販売するだけであったビジネスモデルが、IoTの導入により、製品の利用状況をリアルタイムで把握し、それに基づいた付加価値サービスを提供するビジネスモデルへと進化します。
例えば、IoTセンサーを搭載した製品から稼働データを収集・分析することで、故障の予兆を検知し、リモートメンテナンスを提供するサービスが実現できます。
これにより、顧客は製品の故障を未然に防げ、メーカーは製品の保守サービスを通じて継続的な収益を得られるでしょう。
IoTを導入することで、顧客一人ひとりのニーズや嗜好を深く理解し、よりパーソナライズされたサービスを提供できるでしょう。
スマート家電であれば、ユーザーの利用頻度や利用時間帯などのデータを分析することで、ユーザーのライフスタイルに合わせた最適な機能や設定を自動的に提案できます。
また、顧客の行動データを分析することで、顧客が次に必要とする製品やサービスを予測し、適切なタイミングで提案することも可能です。
このようにIoTのデータ分析を活用すれば、顧客のニーズを満たすサービスを迅速に提供でき、顧客満足度の向上につながります。
IoTを導入すれば、機器の稼働状況や在庫の残量、顧客の行動履歴など、ビジネスに関連する様々なデータを自動的に収集できます。
こうして得られた膨大なデータを活用することで、需要予測や業務の効率化、新サービスの開発など、経営判断をデータドリブンで行えるようになるでしょう。
例えば、在庫管理であれば、リアルタイムの在庫データと需要予測に基づいて適正な在庫量を自動算出できます。
また、サプライチェーン全体の在庫データを統合的に分析することで、拠点間の在庫配置を最適化し、欠品リスクを低減しつつ在庫コストも削減できます。
企業がIoTを導入するデメリット・注意点は、下記の通りです。
IoTデバイスには、企業の機密情報や顧客の個人情報など、重要なデータが蓄積されていることがあります。
こうしたデータを狙ったサイバー攻撃が行われた場合、企業の信用失墜や多額の損害賠償問題に発展するリスクがあります。
また、工場の製造ラインや発電所などの重要インフラ設備がIoTで制御されている場合、サイバー攻撃によって設備が停止したり、誤作動したりするリスクもあるでしょう。
IoTシステムを導入する際は、セキュリティリスクを十分に認識した上で、脆弱性を定期的にチェック・改修するなど、多層的なセキュリティ対策を講じることが必要です。
IoTは、インターネットを介してデータ通信が行われるため、ネットワークの安定性が非常に重要です。
しかし、災害や事故などによってインターネット接続が遮断されると、システム全体が機能停止に陥る可能性があります。
特に製造業では、IoTを活用して製造ラインの稼働状況や設備の故障予兆をリアルタイムで監視・制御しているケースが多いです。
通信障害が発生すると、生産ラインが一時的にストップし、生産性の低下や納期遅延などの深刻な事態を招くリスクがあるでしょう。
そのため、通信障害のリスクを十分に認識した上で、インターネット回線の冗長化など、ネットワークの可用性を高める必要があります。
企業がIoTを導入する際の注意点として、社員のITリテラシー不足が挙げられます。
IoTは最新のテクノロジーを活用するため、それを使いこなすには一定のITスキルが必要です。
しかし、社員が下記のような状況では、十分な効果を発揮できないかもしれません。
このような社員が多いと、導入したIoTシステムが十分に活用できず、生産性向上などの効果が限定的になってしまいます。
そのため、専門性を持った人材の育成や社員全体のITリテラシーの底上げが必要です。
ここでは、業界別にIoTの活用事例をご紹介します。
今回ご紹介する業界は、下記の通りです。
物流・運送業界では、ネットショッピングの利用拡大に伴い、大量の商品を迅速かつ効率的に配送する必要性が高まっています。
そのため、倉庫管理やピッキング、配送などの業務にIoTを活用するケースが増えています。
例えば、大手ECサイトを運営しているAmazonでは、自社開発した倉庫ロボットを導入することで、注文に応じて商品棚を自動で移動させる仕組みを実現しました。
この仕組みでは、商品棚がロボットによって自動で運ばれるため、スタッフが商品棚まで歩いて取りに行く必要がなくなりました。
その結果、スタッフの負担が大幅に軽減され、大量の注文にも効率的に対応できるようになりました。
農業分野では、配水管理制御システムなどを活用したスマート農業が普及しつつあります。
配水管理制御システムは、パソコンやタブレット端末などの操作により、農業用水の供給を自動で制御できるものです。
このシステムでは、圃場に設置されたセンサーが土壌の水分量などのデータを収集し、そのデータに基づいて農業用水の供給をコントロールできます。
配水管理制御システムを導入することで、農家の水管理作業の効率化や計画的な灌漑による収量の向上、パイプラインの長寿命化などが期待できます。
今後、AI技術などと組み合わせることで、さらに高度な水管理が実現すると考えられています。
参考:ICTを活用した農業用水のスマート水管理システム
小売業では、スマートシェルフなどのシステムを活用して在庫管理や店舗運営の効率化、顧客体験の向上を図る取り組みが進められています。
スマートシェルフとは、店舗の棚に設置されたIoTセンサーが在庫状況をリアルタイムで監視し、商品が減ると自動的に補充を行うものです。
スマートシェルフの導入により、人為的なミスによる在庫切れや売り場の陳列不足などを防げます。
また、スマートシェルフのデータを分析することで、需要予測の精度を高めることも可能です。
販売データと在庫データを掛け合わせることで、最適な発注量を自動算出できるため、過剰在庫を削減しつつ、欠品リスクを低減できるでしょう。
参考:TOPPANデジタル、ICタグを活用した「スマートシェルフ管理システム」を開発
企業のIoTを推進するポイントは、下記の通りです。
IoTを導入する際は、明確なビジネス目標を設定することが重要です。
IoTは様々な業務の効率化や生産性向上に役立ちますが、漠然と導入しても十分な効果は得られません。
まずは自社の課題や改善したい点を洗い出した上で、生産性の向上や過剰在庫の削減など、明確な目標を設定しましょう。
こうした目標を設定することで、プロジェクトの方向性が定まり、必要なシステムやデバイスも具体的に検討できます。
IoTを導入する際は、最初から全社的なプロジェクトを立ち上げるのではなく、小規模なパイロットプロジェクトからはじめるのがおすすめです。
小さなプロジェクトからスタートすることで、技術的な問題や運用上の課題を早期に発見・解決できます。
例えば、「システムの連携がうまくいかない」「セキュリティ上の脆弱性が見つかった」といった問題が発生した場合も、影響範囲が限定的なため、迅速に対処できます。
また、小規模ではじめることで、IoT化による具体的な成果を早期に実感しやすいため、経営陣や関係者の支持を得やすくなり、本格的な導入に向けた準備を進めやすくなるでしょう。
IoTを導入しても、社員が使いこなせなければ、十分な効果は期待できません。
そのため、IoTの運用方法やデータ分析の基礎知識、セキュリティリスクなどについて、社員への教育を実施することが重要です。
また、IoT化は、従来の業務フローを大きく変革する場合が多いため、社員の抵抗感が生まれやすいという側面があります。
そのため、IoTの導入によって、業務の効率化や生産性向上、ひいては会社の成長につながることを丁寧に説明し、IoTに対する理解や賛同を得る働きかけも必要です。
IoT化を成功させるためには、企業内のリソースだけでなく、外部の専門家との連携も重要です。
特に、IoTシステムの開発は高度な専門性が求められるため、自社だけですべてを遂行するのは容易ではありません。
そこで、IoTシステムの導入やシステム構築において、技術的な専門知識を持つシステム開発会社に依頼することで、成功率が高まります。
システム開発会社は、様々な業界のIoT化を支援した実績があるため、業界特有のニーズを理解した上で、最適なIoTデバイスやシステムを選定・開発できます。
また、社員への教育やIoTを推進していける人材の育成までサポートしてくれるため、安心してIoTを推進できます。
引用元:システム開発のIC
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コンサルティング|システム開発のIC
本記事では、IoTの基本的な仕組みやできること、メリット、デメリットを解説しました。
IoTとは、あらゆる「モノ」がインターネットに接続し、情報をやり取りすることで相互に制御する技術のことです。
企業にとっては、生産性の向上や新ビジネスの創出、顧客体験の向上、データに基づく意思決定などのメリットがあります。
一方、セキュリティリスクの懸念や通信障害による影響などの課題も存在します。企業がIoTを推進するためには、明確な目標設定や段階的な導入、システム開発会社への依頼などが効果的です。
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