自社のシステム開発について、作業を外注する「受託開発」を検討している企業も多いのではないでしょうか。しかし、受託開発とは具体的にどのような契約なのか、類似の契約形態との違いは何かなどの細かい点はあまりよくわからないという人も多いかもしれません。
そこで、この記事では受託開発とは何か、メリット・デメリット含め丁寧に解説します。また、依頼先企業選定のポイントも紹介します。
目次
受託開発とは、開発者が依頼者からのオーダーを受注し、システムやソフトウェアを開発することです。
たとえば、依頼者である企業から「勤怠管理システムを開発してほしい」との依頼を受け、その企業の従業員規模や勤務形態などに合ったシステムを開発します。
受託開発の大きな特徴は、「請負契約」である点です。つまり、「依頼者の希望する内容のシステムやソフトウェアを開発し、納品するまで」が契約内容であることを理解することが大切です。
システム開発について詳しく知りたい方は以下のページで詳しく解説しております。
https://ic-solution.jp/blog/system-development
受託の意味についてさらに詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。
https://ic-solution.jp/blog/entrustment
受託開発の契約形式は「請負契約」です。ここでは、請負契約の特徴について解説します。
請負契約では、請負人(システム開発者)は依頼された業務を完遂する義務を負います。業務を途中で放棄することはできないので注意しましょう。もし、業務を途中で放棄すると契約違反となり、依頼主から損害賠償請求をされる可能性もあります。
また、請負契約では、依頼者から請負人に対して直接業務の指示を出すことや、契約内容にない業務をさせることはできません。依頼者は、請負人からシステムやソフトウェアが納品されたら検収し、一括で報酬を支払うものとします。
受託開発の関連用語に「Sler」があります。SIerとは「システムインテグレーター(System Integrator)」のことで、システム開発に関するさまざまな仕事を請け負う企業を指します。
受託開発もSlerも、依頼者から受注されてシステムを開発して納品するという意味では共通していますが、違いは「システム開発の方法」か「システム開発をする企業」かです。つまり、受託開発とは方法のことで、Slerは開発企業を指します。
また、Slerはシステム開発業務だけでなく、運用やコンサルティングなどシステム関連の多様な業務を請け負うという特徴があります。
受託開発の関連用語に「SES」があります。SESとは「System Engineering Service(システムエンジニアリングサービス)」の略で、システム開発における受注契約の一形態です。
SES契約が受託開発と大きく異なる点は、完成品を納品する義務がないことです。SES契約では、外部のエンジニアが依頼企業のオフィスに常駐し、システム開発を行います。あくまで客先でシステム開発業務をすることが義務であり、完成品の納品義務までは負いません。
また、受託開発が完成物に対して報酬を支払うのに対し、SES契約ではエンジニアの労働時間に応じて報酬が支払われるという違いもあります。
SESは、システムの完成品がほしいというよりも、エンジニアの人数を確保して自社で開発を進めたい企業が用いることの多い契約形態です。
受託開発には、多くのメリットがあります。主なメリットは以下のとおりです。
受託開発でのシステム開発を検討する場合は、上記のメリットをふまえた上で導入の可否を検討しましょう。以下では、それぞれのメリットについて詳しく解説します。
システム開発を受託開発で行えば、自社で開発するのと比べて人材の採用・育成にかかる手間や費用を省ける点がメリットです。
システム開発で企業の求める品質をクリアした完成物を開発するためには、ITに精通している必要があります。自社でそのような人材を教育するには一定のコストが必要です。しかし、企業によってはIT人材育成にあまりコストや時間をかけられないこともあります。
その点、受託開発ではすでに専門のITスキルを持ったエンジニアがシステム開発を請け負ってくれるため、新しくIT人材を採用したり教育したりする必要がなくなり、手間やコストの大幅削減につながるのです。
受託開発の契約形態は、請負契約です。請負契約では、請負人(システム開発者)が途中で開発を止めてしまったり、完成品を納品できなかったりした場合「契約不適合責任」を負うことになります。そして、依頼者は請負人に対し損害賠償を請求できます。
具体的には、依頼者が完成品について「契約に即していない事実」を知ってから1年以内に通知すれば、請負人に対してシステムの修正対応や報酬の減額を請求可能です。
言い換えれば、完成品を受け取ったあとに不具合を発見した場合、1年以内であれば開発者に対し何らかの対応を求められる点がメリットと言えます。
受託開発を導入すると、多角的な視点から開発を進められる点も大きなメリットです。
自社開発の場合、外部からの視点が入らないため視野が狭くなり、高品質なシステム開発ができなくなる危険性があります。
たとえば、利便性について一方的な視点からしか開発が行えないとなると、さまざまなユーザーにとって使いやすいシステムにならなくなってしまうでしょう。
この点、受託開発では経験豊富な専門スタッフが多角的な視点からアドバイスするので、より利便性の高いシステム開発が可能です。
また、依頼企業が持つ課題についてもさまざまな方向から解決策を生み出してくれます。
受託開発なら、システム開発に必要な設備投資が不要になることも大きなメリットです。
システム開発には、ハイスペックPCや周辺機器、インターネット環境などの設備を整える必要があります。もし、そうした設備が整っていない場合、その分のコストをかけなければなりません。
この点、受託開発であれば、開発側企業がハイスペックのIT環境で開発をしてくれるため、自社で設備を用意する必要がなくなります。よって、設備投資をせずに済むため、大幅なコスト削減につながります。
受託開発を導入してシステム開発を開発側企業に任せれば、その分自社スタッフが本業に専念する時間が確保できるため、収益向上につながります。
システム開発を自社で行う場合、自社のスタッフを開発業務に回さざるを得ません。しかし、そうすると本業に対して十分なリソースを割くことができなくなるおそれがあります。
この点、受託開発であれば、システム開発自体を開発側企業のスタッフが行ってくれるため、自社スタッフは本業に集中でき、業務を効率よく進められるでしょう。
受託開発でシステム開発を行えば、作業にかかる工数負担を抑えられ、自社の業務効率化につながるメリットがあります。
自社でシステム開発をするとなると、システムの設計、リソースの確保、人材育成など、工数が多く負担が大きくなりがちです。
この点、受託開発を導入することで、自社ですべて設計する必要がなくなり、リソースの確保や人材育成の手間も省けるため、工数を大幅に減らせます。
したがって、自社にかかる工数負担が抑えられることで、本業に時間を割けることができ業務効率化につながります。
受託開発では、開発側企業が見積りを行います。したがって、報酬額が明確で予算計画を立てやすいという点がメリットです。
受託開発を発注すると、開発側企業が発注内容を確認した上、見積りを立て、契約を締結してから開発に着手する流れになります。よって、見積りの段階で予算計画が立てやすくなっています。
また、受託開発は請負契約なので、契約で決めた報酬以外に費用を支払う必要はなく、支払時期も納品・検収後とはっきり決まっていることも予算計画が立てやすい理由の一つです。
受託開発では、発注先次第でシステム開発にかかる費用を抑えられる可能性があります。システム開発費は、発注内容によって細かく差が出てくるものです。よって、発注先との交渉や調整次第で費用を抑えることが可能です。
そもそも受託開発は自社開発よりも人材育成費や設備投資を少なくできることがメリットですが、外注費がかかることは避けられません。しかし、あらかじめ発注先と綿密にすり合わせすることで、開発費を自社の予算の範囲内に収めることができます。
受託開発の導入を検討する際は、メリットだけでなくデメリットを知っておくことも大切です。受託開発に全面的に頼り切ってしまうと、自社でシステム開発に精通したエンジニアが育ちにくくなるデメリットがあります。自社でエンジニアが育たないと、システム開発をすべて受託開発に任せる形となり、その都度外注費がかかるためコスト面でマイナスとなる可能性は否定できません。
また、開発を発注先企業に依存してしまうと、あとから仕様変更がしにくかったり、セキュリティ面で不安が生じたりする点もデメリットです。
受託開発を検討する場合、上記のようなデメリットを考慮の上、導入の可否を決定しましょう。
受託開発の工程は、以下のとおりです。
受託開発業者を選ぶ際、発注側(自社)は「RFP」(提案依頼書)を作成します。これは、自社が解決したい課題や開発の目的、開発に必要な要件を記載した文書です。
RFPを開発業者に提示し、システム開発を依頼します。RFPの内容を最も忠実に実現してくれそうな業者を選びましょう。
依頼を受けた開発業者は、提案書と見積書を作成します。複数の開発業者から相見積りをとってから発注先を決めると効果的です。
発注先が決まり、開発業者と受託開発契約を結んだら、開発側のエンジニアがシステムの設計、開発、実装を進めます。
また、自社が求める品質のシステム開発を実現するためには、開発中の打ち合わせも重要です。定期的に打ち合わせを実施し、進捗状況などを共有しましょう。
受託開発で行えるシステム開発にはさまざまな種類があります。
そこで、受託開発の業務例として以下の3つを紹介します。
受託開発ではどのようなシステムを開発できるのか、具体例を知っておくと、導入検討の際に役立つでしょう。
受託開発では、スマートフォン向けアプリケーションやパソコン用ソフトウェアの開発を依頼することが可能です。
発注は、企業・個人のどちらでも開発業者に依頼できます。アプリケーションやソフトウェア開発の場合、いずれも一般消費者用のシステムを開発することが多いです。内容はゲーム、教育・学習用アプリ、各種サービス用コンテンツ、マッチングアプリなど多岐にわたります。
開発企業は、依頼者がどのようなアプリやソフトを開発したいのかを綿密にヒアリングし、開発に臨みます。
受託開発では、企業の人事・販売管理などの業務用システムの開発を依頼することも可能です。依頼者は企業であるケースがほとんどです。
たとえば、人事では給与計算、勤怠管理や労務管理システム、またはこれらの業務を一括で処理できるシステムなどが挙げられます。他にも、小売業ではモバイル端末で販売数、在庫数の管理ができるシステムなども開発可能です。依頼企業の業種や事業内容に合わせてより良いシステムを設計・開発していきます。
Webサイトの開発も受託開発で行うことが可能です。依頼者は企業の場合もあれば個人の場合もあります。
Webサイトの開発では、たとえば企業のポータルサイトや、公式オンラインショップのランディングページなどを開発します。
Webサイトの開発は、ITの知識や技術に加え、デザイン面の知識やセンスも必要です。したがって、自社で作成するのではなく、デザインにも精通する開発業者に依頼して作成するケースが多くみられます。
受託開発で依頼主が求める課題を解決し、ハイレベルなシステムを開発するには複数のスキルが求められます。
主に必要なのは、以下のスキルです。
以下では、上記3つのスキルについて詳しく解説します。受託開発で求められるスキルについては、開発側はもちろんのこと依頼者側も理解しておくと、開発業者選びに有効です。
受託開発では、さまざまな依頼者とやり取りする機会が多いため、コミュニケーションスキルが欠かせません。
たとえば、依頼者の要望を詳しくヒアリングし、解決すべき課題は何か、求めている機能は何かなどを明確化する必要があります。
また、システム開発中も依頼者と密にコミュニケーションをとり、進捗状況などを共有することも大切です。
もし、依頼者と開発業者の間で上手くコミュニケーションがとれていないと、依頼者が本当に求めているシステムを開発できなくなってしまいます。
したがって、受託開発では依頼者と上手にコミュニケーションをとり、信頼関係を築き上げることが求められます。
受託開発では、依頼者の求める内容を的確に実現するシステムを開発しなければなりません。したがって、高度なITスキルが必要不可欠です。
また、受託開発ではさまざまな種類のシステム開発が依頼されます。アプリケーションやソフトウェア開発を依頼された場合、その内容はゲームからECサービスまでさまざまです。また、企業の管理システムも労務から在庫管理まで多岐にわたります。
こうしたシステム開発を請け負い、成功させるためには、多彩なIT知識と技術が必要です。また、最新のITスキルを身に付けられるよう、常に情報や技術のアップデートを欠かさないことも大切です。
受託開発は請負契約のため、納期どおりにシステム開発を行わなければなりません。したがって、スケジュールを厳密に管理するスキルが必要不可欠です。
受託開発は、依頼者が希望するスケジュールに合わせて開発を進めます。必ず納期に間に合うよう、無理のない範囲で確実に実行できるスケジュールを組む能力が求められます。
また、開発業者は複数の受託開発を同時に受ける場合もあります。一つの業務が滞ったことにより別の業務のスケジュールも遅れるなどということのないよう、しっかりスケジュールを管理しなければなりません。
依頼主の希望どおりのシステム開発を実現してくれる開発業者かどうかを見極めるためには、いくつかのポイントを押さえた上で判断する必要があります。
受託開発の依頼先選びのポイントは、以下のとおりです。
以下では、これら4つのポイントについて詳しく説明します。見積りの額が安い企業に飛びつくのではなく、自社の依頼を実現できる企業かどうかを見極めることが大切です。
依頼先を選ぶ際は、まず、受託開発に求められる重要スキルを満たしているかチェックしましょう。
上記説明したように、受託開発では「コミュニケーションスキル」「高度なITスキル」「スケジュールを管理するスキル」が求められます。まずは、依頼先企業の担当者と打ち合わせをする中で、これらのスキルを備えているかをチェックします。
受託開発に求められるスキルが一つでも欠けていると、自社の依頼どおりのシステムが完成しなかったり、納期に遅れたりなどの不利益を被る危険性があります。
したがって、重要なスキルを備えているかを必ず確認するようにしましょう。
受託開発では、単にシステムを開発するのではなく、依頼者の課題を解決し希望する内容のシステムを開発することが求められます。したがって、依頼者の課題をしっかり解決してくれる企業かどうかを見極めることが大切です。
依頼者の課題を解決できる企業かどうか見極めるためには、RFP(提案依頼書)をしっかり作成し、依頼先企業がRFPの内容を実現してくれるかどうかヒアリングすることが重要です。
また、依頼先企業のこれまでの実績を確認し、自社のRFPと近い開発に成功しているかどうか確認しましょう。
開発業者を選ぶ際は、システム開発を一貫して受託している企業かどうかも大切な見極めポイントです。なぜなら、一貫してすべての工程を請け負っている企業であれば、どの工程についても知識と技術を有しているため安心して依頼できるからです。
また、すべての工程を請け負っている企業は、途中で問題が発生しても迅速に対応・解決できるスキルを有しています。
一方で、一部の工程しか経験のない企業だと、未経験の工程についてスキル不足の可能性があるかもしれません。
したがって、安心して開発を依頼するためには、一貫して受託している企業を選びましょう。
依頼先に受託開発の実績が多くあるかも、大事な指標です。また、単に数だけに注目するのではなく、どのような内容の開発を多く成功させているかもチェックしましょう。
開発企業には、それぞれ得意分野と不得意分野があります。いくら開発実績の多い企業でも、依頼内容の分野に関する実績がない場合は、依頼先としてふさわしくありません。
したがって、自社の依頼内容と同種の開発について実績を積んでいるかどうかを確認するようにしましょう。
また、そのためには自社がどういったシステムを開発したいのか最初に明確にしておく必要があります。
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受託開発は、人材育成にかかる手間や開発にかかるコストを削減できる点が大きなメリットです。
また、契約形態は請負であるため、完f成品の検収後に一括して報酬を支払えばよく、予算計画が立てやすい利点もあります。
一方で、開発を請け負う開発業者には、IT業務や依頼主とのコミュニケーション、スケジュール管理についてハイレベルなスキルが求められます。依頼先企業を選ぶ際は、こうしたスキルが高いかどうか、実績が豊富かどうかで依頼先企業を選ぶことが大切です。
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